焙煎されたアラビカ種のコーヒー豆の中に、既存の糖尿病治療薬を上回るほど糖の吸収を抑える成分が含まれていることが判明した。
中国科学院昆明植物研究所の研究チームは、最新の分析技術を駆使して、これまで見逃されていた微量な化合物を特定することに成功した。
カフアルデヒド(caffaldehydes)と名付けられたこの成分は、消化の際に炭水化物を糖に分解する酵素の働きを妨げる力が非常に高い。
実験室レベルでの検証ではあるが、一般的な治療薬よりも優れた活性がデータとして示された。
糖の分解を助ける酵素「α-グルコシダーゼ」
私たちが食事でパンやご飯などの炭水化物を摂ると、体の中では「α-グルコシダーゼ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%91-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BC]」という酵素がハサミのような役割をして、炭水化物をブドウ糖に細かく分解する。
この糖が血液に取り込まれることで血糖値が上がるが、分解のスピードが速すぎると血糖値が急上昇し、体に大きな負担がかかってしまう。
このα-グルコシダーゼという酵素の働きを適度にブロックできれば、糖の分解が遅れて吸収が穏やかになり、2型糖尿病などの予防や管理に役立つ。
アラビカ種のコーヒー豆には以前から健康に良い成分が含まれていることが知られていたが、どの成分がどのように酵素に作用しているのか、その詳細は完全には解明されていなかった。
コーヒー豆から新たに発見された化合物
中国科学院昆明植物研究所の秋明華教授を中心とする研究チームは、焙煎したアラビカコーヒーの豆に含まれる複雑な成分を詳しく調査した。
コーヒー豆には数千種類もの化学物質が含まれており、その中から特定の働きをする物質を、ごく微量な中から純粋に取り出すのは非常に困難な作業だ。
研究チームは、物質の構造を精密に分析できる核磁気共鳴(NMR)や、成分の重さを測る液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)といった高度な装置を駆使し、従来の調査では見落とされていた微量な化合物「ジテルペンエステル」の一種を分離することに成功した。
ジテルペンエステルは植物に広く含まれる天然成分のグループで、種類によって毒性を持つものから健康をサポートするものまで多様な性質があるが、今回特定されたのは、カフアルデヒド(caffaldehydes)A、B、Cと名付けられた3つの新しい有用な物質だ。
既存の薬を上回る酵素の働きを抑える力を確認
抽出されたカフアルデヒドの能力を確かめるため、研究チームは実験室で、糖を分解する酵素の働きをどれくらい抑えられるかのテストを行った。
その結果、これら3つの化合物はすべて、炭水化物を糖に変える酵素の動きを止めて、糖の吸収を穏やかにする力に優れていることが示された。
その力を数値化して比較したところ、現在、糖尿病の治療現場で実際に使われているアカルボース(acarbose)という薬よりも、低い濃度で同等以上の抑制効果を発揮することが確認された。
さらに研究チームは、最新の「分子ネットワーク解析」という手法を導入した。これは、似た構造を持つ物質同士を線で結び、成分の家系図のようなものを作り出す技術だ。
この解析により、最初に発見したカフアルデヒドA~Cと密接に関連する、さらに3つの未知の物質(化合物4~6)が特定された。
これら3つの物質は、カフアルデヒドA~Cよりもさらに微量で、従来の分析方法では検出することすら不可能だったものだ。
構造を詳しく調べると、カフアルデヒドと共通の性質を持ちながら、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)やオクタデセン酸といった異なる脂肪酸を含んでいることがわかった。
これらを含めた計6つの新物質は、いずれも既存のデータベースに登録されていない「完全な新発見」だ。
今回の成果は、コーヒー豆の健康効果が、私たちが考えていたよりもはるかに多層的で未知の成分によって支えられていることを物語っている。
今後の展望と摂取に関する注意点
今回の発見は、コーヒー豆の成分をベースにした新しい機能性食品や、血糖値を管理するためのサプリメント開発に大きな一歩を刻んだ。
また、研究チームが確立した分析手法は、コーヒー豆以外の食品の中に眠っている未知の健康成分を素早く探し出すためにも応用できる。
ただし、この結果はあくまで試験管などを用いた実験室レベルのデータである点に注意が必要だ。
原料であるコーヒー豆に優れた成分が含まれているからといって、コーヒーを飲むだけで薬と同じような治療効果が得られるかどうかはわからず、これからの臨床研究で検証していく必要がある。
また、コーヒーにはカフェインなども含まれるため、自身の体調に合わせた適切な量を守ることが大切だ。
研究チームは今後、これらの化合物の安全性や、実際の生物の体内での有効性を詳しく調べていく方針だ。
この研究成果は『Beverage Plant Research[https://www.maxapress.com/article/doi/10.48130/bpr-0024-0035]』誌(2025年2月18日付)に掲載された。
References: Sciencedaily[https://www.sciencedaily.com/releases/2026/01/260110211224.htm] / Maxapress[https://www.maxapress.com/article/doi/10.48130/bpr-0024-0035]











