トルコ西部の古代都市スミルナで、災いから身を守る強力な魔除け、「ソロモンの結び目」が施されたモザイク部屋が発掘された。
この遺構は、西暦4世紀から6世紀頃のローマ帝国後期、今から1600年以上も前に作られたものだ。
当時の人々が抱いていた信仰心や、他人の悪意ある視線が不運をもたらすと信じられた邪視(じゃし)、いわゆる「邪眼」への恐怖を今に伝える貴重な資料である。
また、この部屋は建設から1400年以上の時を経た19世紀にも、現地の病院や住宅の一部として大切に再利用されていたことが判明した。
現在、調査チームはこの建物の詳細な用途について解明を進めている。
アレクサンダー大王ゆかりの古代都市
スミルナは、歴史にその名を刻むアレクサンダー大王(アレクサンドロス3世)の意志によって再建された歴史ある計画都市だ。
大王は紀元前4世紀、東方遠征の途中でこの地を訪れ、新しい都市を建設するよう命じたという。その後、スミルナはローマ帝国の支配下に入り、帝国でも屈指の豊かさを誇るアジア属州の主要都市として黄金時代を迎えた。
今回モザイクが見つかったのは、そのローマ帝国時代に最も栄えた都市の中心部だ。公共広場を意味するアゴラの北通り沿いで、発掘された部屋の大きさは約3m×4mほどである。
そこには、西暦4世紀から6世紀にかけての古代ローマ時代後期に流行した、12角形のパネルを組み合わせた鮮やかな装飾が敷き詰められていた。
植物のデザインなどが美しく構成されているが、調査チームを最も驚かせたのは、中央に配置されていた象徴的な図像「ソロモンの結び目」だった。
邪眼を払うソロモンの結び目の力
ソロモンの結び目の模様は、2枚の楕円形のループが垂直に交わり、互いに上下を通って複雑に絡み合っているのが特徴である。
名前にソロモンとついているが、これは紀元前10世紀頃の古代イスラエルの王、ソロモンにちなんだものだ。ソロモン王は、類まれなる知恵を持ち、さらには悪霊を従える魔術的な力を持つ伝説的な人物として知られている。
この模様は一目見ただけでは構造が解けないほど複雑で、その終わりのない連なりが王の無限の知恵を象徴していると考えられた。
そのため、いつしか王の名を冠して呼ばれるようになり、世界各地で悪意ある視線から身を守るための強力な魔除けとして愛されてきた。
当時の人々が最も恐れたのは、他人の嫉妬や羨望の眼差しが呪いとなって災いをもたらす邪視(邪眼)という現象だ。英語ではEvil Eye(イーブルアイ)と呼ぶ。
この複雑な文様には、その邪眼を釘付けにして迷わせ、呪いのエネルギーを中に入らせないという防壁の役割があったのである。
調査を率いたトルコ、イズミル・カティプ・チェレビ大学のアキン・エルソイ教授は、こうした保護のシンボルは空間とその利用者を守るために、建物の入り口や床によく配置されていたと説明している。
1400年もの時を超えて再び利用された痕跡
この部屋に関する調査で、研究チームを驚かせる事実がもう一つ判明した。
この建物は、建設から1400年以上経った19世紀になっても再利用されていた。
スミルナが近代的なイズミルの街へと姿を変えていく中で、かつてのモザイクの床は、近くにあった非イスラム教徒向けの病院や住宅の土台として使われていたのだ。
当時の人々は、地面の下から現れたこの美しい床を見つけ、その上に漆喰を塗るなどして自分たちの建物の一部として取り入れていた。
彼らがこの文様の歴史的な意味を正しく理解していたかはわからないが、かつての人々と同じように、その不思議な幾何学模様に魅力を感じ、大切に使い続けようとしたことが伺える。
エルソイ教授は、2026年には発掘範囲をさらに拡大し、周囲の部屋や建築の全貌を明らかにしたいと考えている。
1600年前の芸術と信仰、そして19世紀の人々の暮らしが重なり合うこの場所から、さらなる歴史のロマンが飛び出す日が待ち遠しい。
References: Thearchaeologist[https://www.thearchaeologist.org/blog/ancient-mosaic-room-featuring-solomons-knot-unearthed-in-smyrna-to-ward-off-the-evil-eye] / Turkiyetoday[https://www.turkiyetoday.com/culture/protective-solomons-knot-mosaic-unearthed-in-turkiyes-ancient-city-of-smyrna-3212422?s=1] / Facebook[https://www.facebook.com/groups/319999012769419/posts/1362415671861076/]











