イースター島の中心、火山クレーターに抱かれた“モアイ誕生の地”ラノ・ララク。その急斜面に刻まれた採石場は、きわめて危険なため立ち入りが厳しく制限されている。
しかし今、私たちはPCやスマホ1つでこの“禁断のエリア”に足を踏み入れられる。大学の研究チームが作り上げた超精密3Dモデルにより、自由にバーチャルツアーができるからだ。
11,686枚ものドローン画像データで、”未完成のモアイが眠る神秘の谷”を徹底再現。いまだ多くの謎を抱えつつ、時が止まったままの遺跡を巡る新体験に触れてみよう。
立ち入り禁止エリアが多い「モアイ誕生の聖地」ラノ・ララク
南太平洋に浮かぶラパ・ヌイ(イースター島の現地名)は、世界で最も孤立した有人島のひとつ。一方で、人口およそ7,500人に対し毎年10万人が訪れる人気の観光地でもある。
注目すべきは、その中心にあるラノ・ララク採石場だ。なんとこの島のモアイ像の95%がここで製作されたものだという。
火山クレーターに位置するここは、いわば「モアイ誕生の聖地」であり、モアイ好きなら外せないメインスポット。
だが、現地は急峻な地形と崩落リスクから、立ち入り禁止の区域が多い。
無料で探索できる!ラノ・ララクの高解像度3Dマップが一般公開
そんな中、観光客が立ち入りできないエリアも完全再現したラノ・ララクの3Dマッピングモデル、Three-Dimensional Mapping of the Moai (Statue) Quarry at Rano Raraku, Rapa Nui (Easter Island, Chile) [https://gis-core.maps.arcgis.com/apps/instant/3dviewer/index.html?appid=233cada52d434e9fa4d1741c92e308da]が一般公開され話題を呼んでいる。
アメリカのビンガムトン大学とニューヨーク州立大学研究チームが最新技術を駆使し、“幻の遺跡”を画像から作り上げたのだ。
1万枚を超えるUAV(ドローン)画像から生成された、史上初の高解像度3Dモデルが誰でも無料で探索できる。
火山斜面の奥深く、未完成のモアイが横たわる“作業場”や、地形の複雑な割れ目まで、すべてを自由に歩き回れる。
ビンガムトン大学の人類学者カール・リポ氏はこう語る。
現地の地上では絶対に見られない場所まで見ることができます。この採石場は“考古学のディズニーランド”だ
その言葉どおり、その3D空間には約1,000体ものモアイが点在。未完成の像が横たわる姿など、現地に行っても目にできない景観まで鮮やかに再現されている。
PC・スマホで未完成モアイも思いのままに見放題
この3Dビューアは、世界最大級の地理情報システム(GIS)企業ESRIが提供するArcGIS Instant Apps の3D Viewer テンプレートを利用し、研究レベルのデータを公開したもの。PCおよびスマホで操作できる。
言語は英語で、一般人になじみのない考古学・地形解析の専門用語が見受けられるが、ブラウザの翻訳機能を利用したり、メニューアイコンを実際動かしコツをつかめば、直感的にたくさんのモアイ像を観察できる。
おかげでリアルでは近づくことすら叶わない採石場を思いのままに散策し、上空からなど変わったアングルからでも楽しめる。
火山斜面の奥に眠る未完成モアイたちを見やすい向きから覗き込み、崖の上から見下ろしたり、立ち入り禁止の谷底まで探検するのもいいだろう。
PCでもスマホでも。3Dマップの操作方法
PC版でざっと操作を説明しよう。初期状態では、右上に以下のレイヤーアイコンが開いたまま。そのリストは上から以下を示している。
- 採石活動エリア(Quarry Foci)
- 溝・掘り込み跡(Trenches)
- 採石で生じた空洞・切り取り跡(Quarried Voids)
- 古代の穴・石の窪み(Pu)
- 舟形の石槽(Taheta)
- その他の特徴(Misc. Features)
- 彫刻オブジェクト(Sculpted Objects) モアイ像や、彫りかけの像、その他の人工的な彫刻物
- 地形メッシュ全体モデル(Mesh_Project.slpk) 採石場全体の3D地形データ(メッシュ)を読み込む
このリスト(複数選択可)で表示がフィルターでき、ズームだけでなく“彫刻されたモアイだけ見る”、“掘り出した跡だけ見る”など、いろんな形で閲覧できる。
リストは右隣、上隅にある「>>」で開閉。閉じるとマップ全体が見やすくなる。
その下は各レイヤーの色分けリスト。開くと、採石活動エリアは白、溝や掘り込み跡は赤など、各レイヤーを示す色がわかる。
左側の縦にならぶアイコンはほぼ見ての通り。
・フルスクリーン表示
・背景マップの切り替え
・マップリセット(ホームボタン。もとの状態に戻る)
・拡大/縮小
・方向リセット
・3Dで平行移動/回転の切り替え
また今回は使わなかったが、画面下部に並ぶ10のアイコンは、より専門的なツール。
右下5つ。右から
- 標高プロファイル、垂直/水平断面ツール、見通しツール、可視領域、日光(日差しや影)ツール
左下の5つは左から
- 座標切り替え、シェアや埋め込み、PDF化、検索、メジャーツール
スマホも同様にメニューアイコンを使い、1本指や2本指ドラッグで回転や平行移動、ピンチ・イン/アウトで拡大/縮小など、基本的な操作で見られる。
スマホでもPCでも困ったらホームボタンでリセットすれば、じきコツもつかめる。
11,686枚の画像から成る貴重な資料で“禁断の遺跡”へ
今回の3Dモデルは、11,686枚ものドローン画像とStructure-from-Motion(SfM)フォトグラメトリと呼ばれる技術で作成された。研究者にとっては貴重な資料である。
その技術は、複数の写真から“3D形状”と“カメラの位置”を同時に推定し、立体モデルを作る、というもので、地形の細部まで忠実に再現されている。
数世紀を経ても謎に包まれているモアイ像
ラノ・ララクはかつて、凝灰岩の斜面にモアイを直接彫り出す巨大工房だった。現地には、その作業が突如中断したかのような光景が広がる。
そのため、数百体の未完成モアイがそのまま残された、“時間の止まった遺跡”ともいわれている。
”巨石の守り神”モアイ像の制作時期は、およそ7世紀から17世紀頃にかけてで、特に10~16世紀に最も盛んに作られたと考えられているが、いまだ具体的な設置目的・用途はもちろん、その運搬方法からして謎だ。
2025年の時点で、島に伝わる「モアイ像は歩いた」という言い伝えをもとに2012年に提唱された「直立運搬」説がふたたび検証され、”歩くように”運ばれるやり方が”唯一現実的な方法”としてあらためて有力視されるなど、数世紀経った現代でも研究者を魅了する要素は色褪せない。
そんなわくわくに満ちたモアイの聖地ラノ・ララクの採石場が、これほど手軽に見られるなんて素敵じゃないか。
作ってくれた研究チームに感謝しつつ、こちらのラノ・ララク3Dマップ[https://gis-core.maps.arcgis.com/apps/instant/3dviewer/index.html?appid=233cada52d434e9fa4d1741c92e308da]から”禁断の遺跡”を巡り、かつての工房に残り続けるモアイたちを眺めてみてはいかがだろうか。
References: Popsci[https://www.popsci.com/science/easter-island-online-3d-map/] / Arcgis[https://www.arcgis.com/apps/instant/3dviewer/index.html?appid=233cada52d434e9fa4d1741c92e308da]











