木星深部に、予想をはるかに超えた酸素が存在する可能性
探査機「ジュノー」による木星表面 Image credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS, Image processing by Kevin M. Gill, © CC BY

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 太陽系最大の惑星「木星」の正体は巨大なガスの塊だが、分厚い雲の下に何があるのかは長年の謎だった。

 シカゴ大学とNASAジェット推進研究所の研究チームによる最新の分析により、木星の深い場所にはこれまでの予想を上回る「酸素」が含まれている可能性が示された。

 この酸素は主に水の形で存在しており、その含有量は太陽と比べて約1.5倍にものぼるという。

 なぜ地面のないガス惑星に、これほど多くの水があるのか。この知見は、木星が太陽系のどこで生まれ、どのように成長してきたのかという歴史をひも解く重要な手がかりとなる。

 この研究成果は『The Planetary Science Journal[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/ae28d5/meta]』誌(2026年1月8日付)に掲載された。

探査機さえ拒絶する木星の分厚い雲の壁

 木星の空は、少なくとも360年以上前から嵐が吹き荒れている。望遠鏡で見える巨大な赤い渦「大赤斑(だいせきはん)」は、地球が2個も収まるほどの超巨大な嵐だ。

 木星の表面は、こうした無数の嵐が複雑に混ざり合う、非常に密度の高い雲に覆われている。

 しかし、その嵐の下がどうなっているのかを正確に突き止めるのは困難を極めてきた。

 2003年、NASAの探査機「ガリレオ」は大気圏に突入して内部を調べようとしたが、あまりに過酷な環境のため、深い場所へ到達する前に地球との通信が途絶えてしまった。

 現在、探査機「ジュノー」が軌道上から観測を続けているが、それでも厚い雲に阻まれ、深部の正確な組成を直接測ることは難しかった。

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化学と流体力学を統合した新しいモデルで木星深部を再現

 そこでシカゴ大学とNASAジェット推進研究所(JPL)の研究チームは、木星の内部を推測するための「最も完全な計算モデル」を構築した。

 木星の内部では、深部の熱い領域と上空の冷たい領域の間を分子が移動しながら、何千種類もの化学反応を起こしている。

 これまでの研究では、化学反応か大気の動き(流体力学)のどちらか一方に焦点を当てることが多かったが、研究チームは、この両方を初めて一つに統合した。

 筆頭著者のシカゴ大学、ヤン・ジヒョン博士は「最新世代の計算モデルが、他の惑星に対する私たちの理解をいかに変貌させるかの証しである」と述べている。

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豊富な酸素と水が存在

 この最新モデルが導き出した推計では、木星に含まれる酸素の量は、太陽の組成比と比較して約1.5倍という高い数値になった。

 実は、木星の酸素量をめぐっては、科学者の間で数十年にわたり議論が続いてきた。

 最近の研究では「太陽の3分の1しかない」という低い数値を提示したものもあったが、今回の詳細なシミュレーションはその説を塗り替える結果を示した。

 太陽から遠い冷たい場所では水が「氷」として存在するため、惑星の材料として取り込まれやすくなる。

 木星にこれほど多くの酸素(水)があるということは、木星が大量の氷が存在する冷たい領域で誕生したという説を裏付ける有力な証拠となる。

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大気の循環は想定よりも緩やか

 さらに、今回のモデルは木星の大気の動きについても新たな知見をもたらした。

 木星の大気は激しくかき混ぜられていると考えられてきたが、実際にはその動きは従来の想定より35倍から40倍も遅い可能性が高いことがわかった。

 これまで「数時間」で混ざり合うと考えられていた大気の層を、分子は「数週間」もかけてゆっくりと移動していたのだ。

 ヤン博士は、「自分たちの太陽系にある惑星であっても、まだ学ぶべきことが多く残されている」と強調している。

 巨大なガス球の深部に眠る酸素の量は、木星が太陽系の誕生時にどのような材料をかき集めてきたのかを物語る。

 私たちが住む太陽系の形成プロセスを解明する上で、今回の研究成果は大きな一歩となるだろう。

References: Uchicago.edu[https://news.uchicago.edu/story/computer-models-let-scientists-peer-mystery-beneath-jupiters-clouds] / Iopscience.iop.org[https://iopscience.iop.org/article/10.3847/PSJ/ae28d5/meta]

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