古代ギリシャの筆記具に刻まれた「立派なイチモツ」は魔除けとして使用されていた
 Credit: Soprintendenza per i Beni Culturali e Ambientali di Caltanissetta

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 イタリア・シチリア島の南岸にある古代都市ジェーラで、建設工事に伴う発掘調査が行われ、実に珍妙な約2500年前の筆記具「スタイラス」が発見された。

 スタイラスは、粘土板に文字やデザインを刻むための骨製の道具だが、その持ち手には、豊穣とワインの神「ディオニュソス」の顔、その下に、立派な「イチモツ」が精巧に彫り込まれていた。

 なぜこれほどリアルな男性器があえて彫り込まれていたのだろうか。

 実は古代の職人たちの「願掛け」とも言える、切実かつ信仰心あふれる理由があった。

職人の作業現場から出土した「イチモツ付き」のスタイラス

 古代都市、ジェーラのオルト・フォンタネッレ地区で、新たな文化施設「パラッツォ・デッラ・クルトゥーラ」の建設に先立ち、ジェーラ市の委託を受けた考古学者ジャンルーカ・カラー氏が、カルタニッセッタ文化財監督局の指導のもと調査を行った。

 すると、そこからヘレニズム時代(ギリシャ文化が広まった紀元前323年以降の時代)の広大な住宅街の跡を発見した。

 その一角にある、かつて壺や小像(フィギュア)を製作していた職人の作業場跡から、一本の骨製のスタイラスが出土した。

 スタイラス(尖筆)とは、先の尖った棒状の筆記具のことだ。インクなどは使わず、先端を粘土などの表面に押し当てることで文字や線を記す仕組みになっている。

 今回見つかったものは長さ約13.2cmで、保存状態は極めて良好であり、紀元前5世紀のものと特定された。

 特筆すべきはそのデザインである。

 専門家が「ユニクム(唯一無二)」と評するこのスタイラスは、骨という脆い素材を使いながら驚くほど緻密に加工されている。

 持ち手上部には、円錐形の帽子を被り、髭を蓄えた男性の頭部が彫られている。これはギリシャ神話の神「ディオニュソス」だと考えられている。

 豊穣とワインの神として知られるディオニュソスだが、彼は「理性を超えた陶酔」や「創造的な狂気」を司る存在でもある。

 芸術家や職人にとって、常識にとらわれないインスピレーションを与えてくれる守護神のような存在だったのだ。

 そして、その神の顔の少し下、ちょうど持ち手の中央あたりに、男性器がしっかりと彫り込まれていた。リアリティを追求した形状をしており、そり立った状態となっている。

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魔除けの石柱「ヘルマ」のミニチュアである可能性

 なぜ仕事道具ともいえるスタイラスに、神の顔とイチモツを刻んだのだろうか。

 四角い柱状の持ち手、頭部の神、そして勃起した男性器という組み合わせは、古代ギリシャの道端や境界によく置かれていた石像「ヘルマ[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9E]」の形状そのものである。

 ヘルマとは、四角い石柱の上にヘルメスやディオニュソスなどの神の頭部を乗せ、柱の中央に男性器をあしらった像のことである。

 古代ギリシャにおいて、勃起した男性器(ファルス)は生命力の象徴であり、悪霊や災いを追い払う強力な「魔除け(アポトロパイオン)」としての機能を持っていた。

 つまりこれは、おちゃらけた発想で作られたものではなく、家や町を守るための神聖な魔除けだったのだ。

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現代で言う「十字架のボールペン」のようなもの

 今回見つかったスタイラスは、いわばこの「魔除けの石像」をそのまま手元サイズに縮小し、文房具として機能させたものと言える。

 発掘を指揮したカラー氏は、これを現代の感覚で分かりやすく例えている。

 彼はこれを「日常的に使い潰す道具というよりは、机の上に飾る高級な万年筆のようなもの」だと説明した。

 職人はこのスタイラスを、自身のステータスシンボルとして、あるいは特別な作品を作る際の大事な道具として扱っていたのだろう。

 また、別の視点として「仕事と信仰の融合」という解釈も興味深い。

 現代の敬虔な信者が、十字架をかたどったボールペンを使ったり、デスクに神棚やお守りを置いたりする感覚に近いかもしれない。

 職人は、この「ヘルマ型スタイラス」を握ることで、作業場の安全や、芸術的なインスピレーション、そして生産力が向上することを神に祈っていた可能性がある。

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瓦礫がタイムカプセルに。奇跡的な保存状態

 骨という有機物は本来、土の中で分解されやすく、これほど綺麗な状態で残ることは稀である。今回の発見は、古代に起きた「建物の崩壊」が偶然にも幸いした。

 職人街の作業場は何らかの理由で倒壊し、その瓦礫がそのまま土地を埋める充填材として再利用された。こ

 この瓦礫の層がタイムカプセルの役割を果たし、繊細ないちもつを現代まで守り抜いたのだ。

 シチリア州文化遺産局のダニエラ・ヴッロ局長は、この発見を「真にユニークなもの」と称賛している。

 現在は研究室で慎重なクリーニングと強化保存処理が行われており、作業が完了次第、ジェーラの博物館で一般公開される予定だ。

 2500年前の職人が、神のご加護と「立派なシンボル」を握りしめて仕事をしていたと想像すると、古代の歴史が少しだけ身近に感じられるかもしれない。

References: Sicilia.it[https://www.regione.sicilia.it/la-regione-informa/beni-culturali-gela-rinvenuto-rarissimo-stilo-ceramista-v-secolo-ac] / Labrujulaverde[https://www.labrujulaverde.com/en/2026/01/an-exceptional-ceramic-stylus-from-the-5th-century-bc-discovered-intact-in-the-ancient-greek-city-of-gela-in-sicily/] / Heritagedaily[https://www.heritagedaily.com/2026/01/rare-5th-century-bc-bone-stylus-discovered-in-gela-excavation/156740]

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