海外、特にアメリカのスターバックスでは、注文を受けた際に、カップの側面に客の名前を手書きすることが多い。
時には「サンキュー」などの短いメッセージや、スマイルマークなどが書かれることもある。
だが時にそれが思わぬ事態を招くこともある。
カリフォルニア州ロサンゼルス郡ノーウォークにあるスターバックス店舗で、ブタの絵を描いた紙コップが思わぬ波紋を広げることとなった。
カップに描かれたブタのイラストに保安官補が激怒
2026年1月9日、ロサンゼルス郡保安官事務所の保安官代理は、勤務の合間にコーヒーを購入しようと、ノーフォークにあるスターバックスに立ち寄った。
その際、受け取ったカップの側面に手描きの絵が描いてあるのに気づいた。その絵はかわいらしいブタの絵だった。
だがそれを見た保安官代理は激怒した。アメリカでは、「pig」つまりブタという言葉は、警察官など法執行機関の職員を侮辱するスラングとして使われるからだ。
このイラストは保安官代理にとって、店側が自身の職業的立場を軽んじているように感じられるものだった。
保安官代理は、自身のInstagramの非公開アカウントに写真を掲載するとともに、次のような投稿をした。
私は16時間という長い勤務時間の途中で、スターバックに立ち寄ったんです。そして仕事を続けられるように、コーヒーを一杯飲もうとしました。
地域社会に貢献した長い一日の後だったんです。私は落胆し、失礼な行為だと感じました。カフェインが欲しかっただけなのに、不安な気持ちで店を後にしました
保安官事務所からスタバへの正式な抗議に発展
保安官事務所によると、この保安官代理はスターバックスの店長にこの件を報告。店長はすぐに調査すると伝えたという。
また、ロサンゼルス郡のロバート・ルナ保安官は、事件を知った後、公式の声明を発表した。
その中で、ルナ保安官は当事者である保安官補の健康状態を確認し、彼を全面的に支援すると表明。さらに、スターバックスの企業セキュリティ部門と連絡をとったことを明かしている。
そして今回の出来事を「個人の感情の問題にとどまらないものである」とした上で、「正式に懸念を表明し、責任を問う」と述べている。
ブタのイメージは、法執行機関を貶めるためによく使われているものです。私たちの保安官代理は地域社会の一員であり、基本的な人間としての尊厳と敬意をもって扱われるべきです。
法執行機関に対する敵意や分断を助長する行為は、地域社会の信頼と公共の安全を損ないます
つまり保安官事務所は、このブタのイラストは法執行機関への侮辱であり、地域との関係や安全そのものに影響を及ぼしかねないという立場を明確にしたのだ。
ブタの絵はただのネットミームだった
一方、スターバックス側も公式にコメントを出し、絵が描かれた経緯について次のように説明した。
この絵はその日の早い時間帯に、カウンターの内側で働くスタッフを元気づける目的でカップに描かれたものでした。保安官代理が来店して注文する何時間も前のことです
スターバックスによると、この豚のイラストはネットミームの「ジョン・ポーク」を描いたもので、店の従業員が同僚を励ますために描いたものだったという。
ジョン・ポールとは、ネット上に存在するバーチャルな豚の頭を持つインフルエンサーのことである。
人間の身体に豚の頭を合成したキャラクターで、2018年ごろから欧米のSNSに登場するようになったらしい。
特に2023年ごろからは、スマートフォンの着信画面に、「ジョン・ポークから着信中」と表示されている画像が流行り出した。
豚にもジョン・ポークという名前にも脈絡などはないのだが、その不気味さや意味のなさそのものを楽しむ不条理系のミームとして定着したのである。
つまり、保安官代理を侮辱する意図などはなかったことを明らかにしたうえで、スターバックスはさらにこう続けている。
私たちは、このお客様とLASDの幹部の方々に何度も連絡を取り、謝罪を行いました。すべてのお客様は、常に当店で歓迎されるべきです
そしてスターバックスは社内で行った調査の結果、このイラストを描いた従業員を解雇したことを明らかにした。
ネット上では保安官代理のメンタルを心配する声も
この「事件」が報道されると、インターネットにはスタバに同情する声や、保安官代理をいろいろな意味で心配する声が溢れた。
- 保安官代理が不安になったって? 真面目に言ってるのかな
- 3日前(1月6日)の米連邦議会議事堂襲撃事件では、実際に暴力が振るわれて多数の死傷者が出てるんだ。そっちの事件の方がよっぽど不安になると思うんだがね
- 公に声明まで出したのがいまだに信じられない。正直、自分たちで事態を悪化させたと思う
- この件でメンタル休暇を取って、半年くらい有給もらうことになるかも
- そうなるかもな。親が、子供が描いてくれた自分の似顔絵を見たときの気持ちがわかる気がするよ
- 完全にトラウマになってるんだね。落書きのショックから回復するために、6か月フル給料で休暇を取る必要があるとか
- あの店でコーヒーを買わない自由もあるし、誰かが彼をブタと呼ぶ自由もある。
それって結局、彼自身の問題じゃない?- 銃を持って、人の人生を大きく変えたり奪ったりする権限を持つ人間が、コーヒーカップの絵ひとつ見ただけで耐えられないとか、そんな連中を本気で信用しろってか?
- コーヒーカップにブタが描かれた程度で感情的に耐えられないような警官や保安官が、武器を持って状況を沈静化する役割を任されるべきじゃない。逆に人の自由を脅かす存在にもなり得ると思う
- LASDは複数の暴力的なギャングに手を焼いてる状況なのに、保安官が気にするのはコーヒーカップのブタの絵なのか
- ブタって呼ぶのはやめてほしい。それってブタに失礼だ。ブタは無実で賢い動物だよ
- 正直、ジョン・ポークが何か知らないから、ブタの絵が描かれたカップを渡されたらちょっとモヤるかも。「これって(太った)俺のこと?」ってなるし
- バリスタが自由に創作できた頃が懐かしい。イラストやメッセージで怒る人が出てきたせいで、「Yum(おいしい)!」とか「Enjoy(楽しんで)!」みたいな無難な言葉しか書けなくなったんだよ。
- スターバックスで働いてた身として言うけど、注文を受けてからあんなに凝った絵を描く時間なんて絶対にないよ
- そもそも、こんな(カップに何かを書く)仕組みを導入するべきじゃなかったんだ。従業員のストレスが増えるだけだよ
- 従業員が気の毒だよ。挨拶や絵のことで、余計なプレッシャーをかけられてる。自分には接客の仕事なんて無理だ
- 今の人たちは、ちょっとしたことにも過敏すぎるし、怒りを煽るネタにすぐ乗っかる
- こんなに「繊細な」人は銃を持つべきじゃないし、16時間連続で勤務してるような人も、銃を持つべきじゃない
- 俺が警官だったら、笑って絵を描いた人と一緒に写真を撮るけどね。
- 人生なんて十分ひどいもんだから、こういうのは笑って済ませようぜ
日本のスタバでも、イラストやメッセージを書いてくれることがある。可愛いイラストや温かいメッセージがあるとほんわかうれしい気持ちになったりする。
だが海外では、イスラム教徒の客のカップに「ISIS」と書いたり、東洋人のカップに釣り目のイラストを描いたりと、いろいろ問題も起きているようだ。
また、クリエイティブな「作品」を期待されるなど、スタッフのプレッシャーも大きそうだし、そろそろこの文化を見直す時期に来ているのかもしれない。
References: Starbucks employee delivers coffee to L.A. deputy with hand-drawn pig on cup[https://ktla.com/news/local-news/starbucks-employee-delivers-coffee-to-l-a-deputy-with-hand-drawn-pig-on-cup/]











