2026年8月12日、地球の重力が7秒間失われる。そんな衝撃的な噂がここ数週間、ネット上で拡散し、熱狂的な騒ぎとなっている。
SNSでは、この大惨事によって数千万人が犠牲になると警告され、さらに不気味なことに「NASAはこの事態を知っていながら、意図的に沈黙を守っている」という主張まで飛び交っている。
だが安心してほしい。これは完全なデマである。NASAもファクトチェック機関も、この噂を科学的根拠に基づき完全否定した。
NASAの極秘文書「プロジェクト・アンカー」を語る怪動画
この荒唐無稽な主張の発端となったのは、インスタグラムのユーザー「@mr_danya_of」が2025年12月31日に投稿したリール動画だった。
動画には、車の中に座って一言も発しない男性が映っており、そこへ「2026年8月12日、世界は7秒間重力を失う」という不穏なテキストが重ねられていた。
そして、キャプションやその後拡散された投稿には、NASAの極秘文書「プロジェクト・アンカー」が流出したとして、以下のようなあまりにも具体的な「予言」が記されていた。
「2026年8月12日、世界は7秒間重力を失う。NASAは知っている。彼らは準備しているが、理由は教えてくれない」
何が起こるか:
- 1~2秒後:固定されていないすべてのもの(人、車、動物)が浮き上がる。
- 3~4秒後:物体は15~20mまで上昇し続ける。
- 5~6秒後:人々が天井にぶつかり、パニックと混乱が生じる。
- 7秒後:重力が戻り、すべてのものがその高さから落下する。
予想される結果:落下による死者4000万人。
さらにこの投稿では、異常現象の原因について「ブラックホールからの2つの重力波が交差すること」にあり、NASAが2019年に94.7%の確率でこれを予測していた、ともっともらしく説明されていた。
これが拡散されたデマの全貌である。
だが、この発信元である「@mr_danya_of」は以前から、Googleや死体安置所、火葬場、ホスピス、さらには精神科医や犯罪学者として働いていたと自称し、それぞれの立場になりきって(おそらくAIで作った架空の)体験談を投稿していた。
その多くはAI生成テキストの特徴と一致することから、AIツールを使って作成された架空の物語である可能性が高いとみられている。
この人物は、重力消失の投稿の後、アラスカのポートロックという町から600人が失踪したという別の架空の物語を投稿した。
だがその後、アカウントは消滅し、2026年1月6日か7日には見ることができなくなっている。
それでもこの動画の説明文は、4chan[https://archive.is/IpcYT]、Bluesky[https://bsky.app/profile/deardean22.bsky.social/post/3mbq4zmtvnc22]、Facebook[https://www.facebook.com/zarsim2009cannabian/posts/pfbid0tR8aUpoYXCoeKMsBD6w24SFSC7Ru3zi59bUY3kvaXx32NZCaHbaqbm6DUh5jFLQEl]、Reddit[https://www.reddit.com/r/conspiracy/comments/1q2wkx1/august_12_2026/]、Instagram[https://www.instagram.com/p/DTEJHNjk6rj/]、Threads[https://www.threads.com/@ava_groves78/post/DS9JZy0guAy]、TikTok[https://www.tiktok.com/@fiery_by_nature/video/7591558488883498271]、X[https://x.com/Decode_Z_World/status/2007152992701821296]など、多くのSNSユーザーによって瞬く間に拡散され、その一部はまだ見ることができる。
NASAの回答「重力は失われない」
もちろん、これらはすべて完全にデタラメである。
ファクトチェックを行う専門サイトの『スノープス[https://www.snopes.com/fact-check/nasa-project-anchor-earth-gravity/]』が調査を行ったところ、「プロジェクト・アンカー」やネットに流出したとされる文書の実在を裏付ける証拠は一切発見されなかった。
スノープスがこの噂についてNASAに問い合わせたところ、広報担当者はまさに私たち全員が思っていることを口にした。
重力とはそういう仕組みではありません。
地球が重力を失う唯一の方法は、地球システム全体(核、マントル、地殻、海、地上の水、大気の合計質量)が質量を失うことだけです
アインシュタインの一般相対性理論では、重力をニュートンが考えたような「力」としてではなく、「時空(時間と空間)の歪み」として説明する。
惑星のような巨大な質量を持つ物体は、その周囲の時空という布地を歪める。
質量の小さい物体は、この歪みによって作られたカーブした経路に沿って動くことになり、それを重力として感じるのだ。
ピンと張ったゴムのシート(時空)の上にボウリングのボール(地球)を置いたと想像してほしい。
ボールはゴムを引き伸ばして沈み込み、くぼみを作る。そこにピンポン玉を置けば、ボウリングのボールに向かって転がり落ちていく。
これが重力の正体であり、科学界で最も厳密に検証された理論の一つだ。
ブラックホールからの2つの重力波が交差することで地球が質量を失い、その結果として重力を失うなどという証拠はどこにもない。
そもそも、この「予言された」重力波の交差という話自体が完全に架空のものなのだ。
その日起こるのは大惨事ではなく日食
2026年8月12日に重力波が交差するという証拠は見つからない。しかし、NASAのウェブサイトには、その日に確実にある現象が起こると記載されている。「日食」だ。
NASAの広報担当者はこう語る。
皆既日食が地球の重力に異常な影響を与えることはありません。太陽と月が地球に及ぼす引力は、地球全体の重力には影響しませんが、潮の満ち引き(潮汐力)には影響を与えます。
これは十分に理解されており、数十年先まで予測可能なものです
2026年8月12日、グリーンランド、アイスランド、スペイン、ロシア、ポルトガルの一部では皆既日食が見られる。
ただし残念ながら、日本ではこの時間帯は夜(23時半頃)にあたるため、この日食を見ることはできない。
日本では、2035年9月2日に次の皆既日食が観測できるので、まだ当分先だ。
そんなわけで、2026年8月12日は安心して過ごすことができそうだ。
References: Snopes[https://www.snopes.com/fact-check/nasa-project-anchor-earth-gravity/]











