中東で戦火にさらされているアメリカ軍基地で、小さなメスの子猫が兵士たちに保護された。
子猫の名前は「ピーマー」。
彼女を引き取ったのは、ベトナム戦争に従軍した退役軍人である。愛する妻と愛猫を相次いで失くした元軍人は、ピーマーを迎えて忘れていた笑顔を取り戻した。
兵士に命を助けられたピーマーが、今度は年老いた元兵士の人生に愛を届けることになったのだ。
戦地で取り残された子猫を兵士が保護
灼熱の中東の地、アメリカ陸軍基地の近くにある建物の下で、6匹の子猫が生まれた。子猫たちはすくすくと育っていたが、ある日、悲劇が彼らを襲った。
猫一家は野生動物の襲撃に遭い、母猫は子猫のうち4匹を咥えてその場から逃げたが、2匹の子猫が取り残された。それがピーマーと、兄弟のロケットだったのだ。
現場にいたアメリカ陸軍の兵士たちは、子猫たちを見捨てられず、交代で哺乳瓶でミルクを与え、24時間体制で世話を続けた。
当初、2匹は頭を持ち上げる力もなかったという。特にロケットは誤嚥性肺炎を起こしており、呼吸するだけで精一杯の状態だった。
そこで兵士たちは、海外で任務に就く軍人や退役軍人と動物の支援を行う非営利団体、「Paws of War」[https://www.pawsofwar.org/]に連絡を取り、治療と輸送の支援を求めた。
Paws of Warは、主に退役軍人に介助犬を紹介している団体だが、同時に窮地に陥った犬や猫を救助して助ける活動も行っている。
特にアメリカの軍人が、任地などで絆を育んだ動物たちと帰国後に再会し、飼い主として引き取ることができるよう、支援していることでも知られている。
連絡を受けたPaws of Warのチームは、すぐに医療スタッフと必要な機材、栄養強化ミルクを携え、危険な地形を16時間かけて移動した。
そして衰弱した2匹の命をつなぐための努力が続けられたが、手を尽くしたものの、兄弟のロケットは助からなかった。
ピーマーは生き延びたが、兄弟の不在を深く寂しがったという。それでも彼女は生きることをあきらめず、体力を取り戻していった。
アメリカで見つけた退役軍人との第二の猫生
やがてピーマーは、アメリカへ向かうことになった。彼女を救った兵士たちの願いはただひとつ。安全な場所で、愛されて生きてほしいということだった。
Paws of Warがその願いを引き継ぎ、ピーマーは長い移動を経て、無事にアメリカへ到着。保護施設で新しい家族との出会いを待つことになった。
そこで彼女と対面することになったのが、元アメリカ空軍所属でベトナム戦争に従事した退役軍人、アンソニー・ブラッキさんである。
スタッフは対面を控えたピーマーにやさしく声をかける。
ねえピーマー、君に興味を持っている人がいるよ。退役軍人なんだ。君はいいおうちがほしいんだって聞いたよ。自分を売り込むんだ。
家に連れて行ってもらえるように、できることは何でもやってみな。頭の上に飛び乗らなきゃいけないとしてもね
実はアンソニーさんは、長年連れ添った妻を数か月前に亡くし、さらに18年を共にした愛猫も失ったばかりだった。
(愛猫の)名前はラビオリでした。生後6週間のときに迎えたんです。糖尿病で亡くなってしまって、18歳くらいでした。とても遊び好きな猫でしたよ
初対面の場で、ピーマーは本当にアンソニーさんの頭や肩に乗ったり、無邪気に遊び回ったりして、元気いっぱいに飛び回っていた。
アンソニーさんの顔に、思わず笑みがこぼれる。新しい子猫を迎えることについて尋ねられると、彼はこう続けた。
妻が数か月前に亡くなったんです。猫がいれば、きっと助けになると思っています。話し相手という意味でもね
そしてその日、ピーマーは正式にアンソニーさんのもとへ引き取られることが決まった。
戦地で生まれ、生死の淵をさまよい、兄弟を失い、それでも生き延びた小さな猫は、ようやく落ち着ける場所を見つけたのである。
彼女を救った兵士たちの唯一の願いは、ピーマーがこれからも安全で、愛に包まれた永遠の家で育っていくことだった。その願いはかなえられたのだ。
ピーマーは今、安全な家の中で、遊び、眠り、甘えながら日々を過ごしている。なお、ピーマーを救った兵士たちは、今も海外で任務を続けているという。











