世界最古の脊椎動物には4つの目があった。2つの目は脳に入り込む進化を遂げていた
mage credit: Xiangtong Lei & Sihang Zhang

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 我々の先祖は「三つ目がとおる」どころか四つ目だった。 

5億1800万年前のカンブリア紀、これまでに発見された中で最も古い脊椎動物は、2つではなく「4つの眼」を持っていたことが、イギリス・レスター大学などの国際研究チームの研究で明らかとなった。

 研究チームによると、4つあった眼のうち、頭頂部にあった第3・第4の眼は進化の過程で脳内に入り込み、睡眠を司る「スイッチ(松果体)」へと変化したという。

 かつて「見る」ための器官だった眼は、形を変えて我々の脳の奥に入り込み、「体内時計」として睡眠のリズムを刻み続けている。

 この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09966-0]』誌(2026年1月21日付)に掲載された。

カンブリア紀の「アゴのない魚」に見つかった第3・第4の眼

 イギリスのレスター大学、中国の雲南大学などによる国際研究チームは、5億1800万年以上前に生息していた世界最古の脊椎動物が、2つではなく4つの眼を持っていたことを発見した。

 今回分析されたのは、中国南部の「澄江(チェンジャン)化石床」で発見された初期脊椎動物、魚類である「ミロクンミンギア類(myllokunmingid)」の化石だ。

 研究論文[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09966-0]にはmyllokunmingidと記されているが、これは基本となる属名「Myllokunmingia(ミロクンミンギア)」に、英語で「~の仲間」を意味する接尾辞「-id」をつけたものだ。特定の1種だけでなく、ハイコウイクチス(Haikouichthys)などを含むグループ全体を指している。

 ヒトを含む現在のほとんどの脊椎動物には「アゴ」があり「顎口類(がこうるい)」に分類されるが、ミロクンミンギア類にはアゴがなく、脊椎動物の初期グループである「無顎類(むがくるい)」に分類される。  

 現生する生物でいえば、あの「ウミヤツメ」の遠い親戚にあたる存在だ。

 アゴを持たない彼らは、脊椎動物がどのように進化してきたのかをひも解くための非常に重要なヒントを与えてくれる。

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4つの眼はすべて高性能な「カメラ眼」

 カンブリア紀は、捕食圧の高まりに対応して、動物たちが急速に新しい体の構造や感覚を進化させていた時期である。

 発見された化石の保存状態があまりに素晴らしいため、古生物学者たちは眼の数を数えることができるだけでなく、それらがどのように機能していたかまで特定することに成功した。

 古生物学者たちは、ミロクンミンギア類が「ビックリしたオタマジャクシ」のような見た目をしていたと考えている。

 頭の側面に2つの大きな眼(側眼)があり、さらに正面中央に2つの小さな眼(正中眼)があったからだ。

 慎重な顕微鏡観察と化学分析の結果、これら合計4つの眼すべてが、現代的な「カメラ眼」と同様の構造をしていたことが判明した。

 カメラ眼とは、その名の通りカメラのような構造を持つ眼のことだ。

 昆虫などが持つ「複眼」とは違い、レンズで光を集め、奥にある網膜(フィルムの役割)にピントを合わせて「像」を結ぶことができる。

 つまり、単に光を感じるだけでなく、くっきりと形を見ることができたということだ。

 ミロクンミンギア類が4つの眼を持っていたという事実もさることながら、その「古さ」も重要だ。

 この発見以前、レンズを持つ眼の保存された最古の証拠は、カナダのバージェス頁岩(けつがん)から発見されたもので、これよりも1000万年以上新しい時代のものだったからだ。

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2つの目は脳に入り込み睡眠を調整

  現在、私たち脊椎動物は主に2つの眼を使って生活している。では、祖先であるミロクンミンギア類が持っていた「残りの2つの眼」は、進化の過程で一体どこへ行ってしまったのだろうか?

 実は、それらは消えてしまったわけではない。脳の奥深くへと潜り込み、「松果体(しょうかたい)」という器官に姿を変えていたのだ。

 松果体は、光に反応してメラトニンを生成し、睡眠を調整する役割を持っている。

 我々哺乳類の場合、松果体は眼(網膜)からの信号を受け取って間接的に光を感じている。

 しかし、一部のトカゲや魚類などでは、松果体そのものが直接光を感知する能力を残しており、頭頂部に「第3の眼」として存在することもある。

 今回の新しい研究で判明したのは、最初期の脊椎動物において、この松果体の元となった器官が単なる光センサーではなく、世界の像を結ぶ(結像する)ことができる十分に発達した一対の眼であったということだ。

 調査を主導した雲南大学の古生物学者、ペイユン・コン教授は次のように述べている。

私たちが見ているのは、松果体器官が像形成を行う眼として始まったということです。進化の後の段階になって初めて、それらは縮小し、視覚的な力を失い、睡眠を調整するという現代の役割を担うようになったのです

 脊椎動物の眼を保存した化石が豊富に見つかる時代になる頃には、外側の2つの眼だけが視覚のための唯一の道具となっていた。

 コン教授らは、ミロクンミンギア類の内側のペアが奇妙な変化を遂げ、松果体になったと主張している。

 人々が松果体を「第3の眼」と呼ぶとき、その言葉にはある種の歴史的真実が含まれている。実際には第3の眼どころか、第4の眼すらも持っていたのだ。

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奇跡的に保存されていた眼の微細構造

 通常、眼のような柔らかい組織は腐敗しやすく、化石として残ることはめったにない。そのため、これまでは頭頂部にある黒い点は「原始的な鼻(嗅覚器官)」だと考えられてきた。

 だが今回、高出力顕微鏡を使った分析により、4つの眼すべてから、光を吸収する色素「メラニン」と、像を結ぶための「レンズ」の痕跡がはっきりと確認できた。

 さらに、近縁種である「ハイコウイクチス」の化石でも同様の構造が確認されたことで、これが個体の変異ではなく、このグループ共通の特徴であることも裏付けられた。

 鼻にレンズは必要ない。この物理的な証拠により、それらが間違いなく「モノを見るための眼」であったことが確定したのである。

なぜ4つの眼が必要だったのか

 カンブリア紀の間、海は危険な場所だった。

生物の形態が爆発的に多様化した時代であり、大型の捕食者が現れ始めていた。一方で、初期の脊椎動物は小さく、体が柔らかく、無防備だった。

 ミロクンミンギア類は装甲を持っていなかったようだ。毒などの防御手段を持っていた可能性は否定できないが、捕食者を早期に発見し、回避行動をとることで生き延びていた可能性が高い。

 「そのような環境では、4つの眼を持つことで視野が広がり、捕食者を避けるために重要だったのかもしれません」と研究チームの一員であるブリストル大学のヤコブ・ヴィンター博士は推測する。

 だが、余分な眼球を持つことには代償があったに違いない。そうでなければ、脊椎動物は今日でもそれを持っていただろう。

 おそらく、眼そのものを作るために消費されるエネルギーと、4つのレンズが捉えた画像を統合して一貫した絵にするためにニューロンを働かせるエネルギーを合わせると、余分な2つの眼は利益よりも負担の方が大きかったのだろう。

 今回の発見は、松果体の起源に関する長年の謎を解き明かし、化石記録におけるカメラ型眼の最古の証拠となるものである。

 ヴィンター博士はこう締めくくった。

これは脊椎動物の初期進化に対する私たちの考え方を変えるものです

私たちの祖先は、危険な世界を生き抜く、視覚的に洗練された動物だったことがわかったのです

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09966-0] / Le.ac.uk[https://le.ac.uk/news/2026/january/ancient-fossils-vertebrates-four-eyes]

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