地震計で宇宙ゴミの落下を追跡。大気圏突入時の衝撃波から落下地点を特定する新手法
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 地球の周りには、使い終わった人工衛星やロケットの破片など、監視されているものだけで4万個以上、小さなものまで含めると1億個を超える「宇宙ゴミ」が漂っている。

 これらが地上に落ちてくると、私たちの暮らしだけでなく、野生動物の住処や貴重な自然環境にも甚大な被害を及ぼす恐れがある。

 これまでは落下地点を正確に予測することは困難だったが、国際共同チームの新たな研究で、地震計のネットワークを活用することで、ほぼリアルタイムに追跡できる画期的な方法が考案された。

 この技術は、有害物質を含む可能性のある残骸を迅速に回収し、地球全体の生態系を守ることに役立つはずだ。

この研究成果は『Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz4676]』誌(2026年1月22日付)に掲載された。

宇宙ゴミの落下地点を地震計で特定

 宇宙ゴミ(スペースデブリ)とは、地球の軌道上に放置された人工物の破片のことだ。

 2026年現在の最新データによれば、地上から追跡可能な10cm以上の破片だけで約4万個、さらに小さな破片を含めると1億3000万個以上が地球を包囲するように飛び交っている。

 アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のベンジャミン・フェルナンド博士を中心とする国際共同研究チームは、すでに世界中に設置されている「地震計」のネットワークを利用して、落下する宇宙ゴミを精密に追跡する方法を考案した。

 もちろん、宇宙ゴミが落ちてくる前に場所を完全に予測できれば理想的だ。

 現在のレーダー技術でも、宇宙空間にいる間はある程度の予測が可能である。しかし、いざ宇宙ゴミが大気圏に突入すると、空気の密度や機体の形状、激しい回転などによって受ける空気抵抗が複雑に変化する。

 その結果、事前の計算とは進路が大きく変わり、着地点の予測が数千km単位で狂ってしまうことも珍しくない。

 今回の新手法は、これまでの事前予測では捉えきれなかった大気圏内での動きを実況中継のように追跡し、宇宙ゴミが最終的にどこへ到達したのかを直ちに特定するものだ。

 真っ黒に焦げ、時には毒性を持つこともある宇宙ゴミの残骸を迅速に発見し、環境への影響が出る前に回収するために極めて有効な手段となる。  

 筆頭著者であるフェルナンド博士によれば、昨年だけでも毎日複数の人工衛星が宇宙ゴミとなって大気圏に再突入しているが、それらが具体的にどこへ到達したのかを正確に裏付ける手段はこれまで不足していたという。

 宇宙ゴミの落下は今後さらに増加すると予測されており、監視体制の強化が急務となっている。

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地震計が捉えた神舟15号の宇宙ゴミの進路

 フェルナンド博士とこの研究に携わった、インペリアル・カレッジ・ロンドンのコンスタンティノス・ハラランブス博士らの研究チームは、地震計のデータを使って、2024年4月2日に大気圏に再突入した中国の宇宙船「神舟15号」の宇宙ゴミが辿った経路を再現した。

 この宇宙ゴミ(軌道モジュール)は幅が約1m、重さは1.5トン以上もあり、地上のあらゆる生命にとって脅威となる大きさだった。

 宇宙ゴミが大気圏に突入するときは音速よりも速く移動するため、ソニックブームと呼ばれる凄まじい衝撃波を引き起こす。

 宇宙ゴミが地球に向かって猛スピードで突き進むと、その衝撃波による振動が地面を揺らし、付近にある地震計に信号を送る。

 作動した地震計の場所を地図に並べることで、研究チームは宇宙ゴミの正確な軌道をたどり、どの方向に進んでどこに着地したかを推定することに成功したのだ。

 研究チームがカリフォルニア州南部にある127台の地震計データを詳しく解析したところ、この宇宙ゴミが驚異的なスピードで移動していた事実が明らかになった。

 宇宙ゴミは音速の25倍から30倍にあたるマッハ25から30という超高速で、サンタバーバラやラスベガスの上空を北東へ駆け抜けていたのである。

 これは、世界最速のジェット機と比較しても約10倍という圧倒的な速さである。

 さらに地震計の振動データを分析することで、宇宙ゴミの高度や、空中でどのように分裂したかまで特定することができた。

 また、この実測による飛行ルートを検証したところ、アメリカ宇宙軍が事前に予測していた進路から、北に約40kmもずれていたことが判明した

 これは、従来のレーダー予測だけでは、これほど大きな誤差が生じる可能性があることをこのデータは示している。

 炎を上げて落下する宇宙ゴミは、有害な微粒子を発生させ、それが風に乗って広範囲に拡散することがある。

 地震計によって正確な軌道を瞬時に把握することは、こうした汚染物質の行方を追い、被害を最小限に食い止めるために不可欠な情報となる。

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有害物質の拡散を防ぐためのスピード

 迅速な落下地点の特定は、特に有害物質や放射性物質を含む宇宙ゴミの場合にその重要性が増す。

 フェルナンド博士は、1996年にロシアの火星探査機、マルス96から出た宇宙ゴミが落下した際の事例を挙げている。

 当時、宇宙ゴミは燃え尽きたと思われていたが、実際には放射性物質を用いた電源装置が無傷で海に落下していた。

 のちにチリの氷河から人工プルトニウムが検出され、落下中に装置が破損して一帯の生態系を汚染していたことが明らかになったが、当時の技術では正確な落下地点を特定できなかった。

 これまでのレーダー観測は、大気圏に入る前のデータに基づいた予測であり、大気抵抗の影響を受ける突入後の着地点は数千kmもずれることがあった。

 しかし地震計を用いた新手法は、大気圏突入後の実際の動きを直接測定するため、極めて高い精度で進路を割り出せる。

 フェルナンド博士は、いち早く落下地点を把握することが、地上のすべての生命と環境を守る鍵になると強調している。

 地震計ネットワークという既存のインフラを宇宙ゴミの監視に転用するこの研究は、私たちの地球を予期せぬ汚染から守るための新たな盾となるだろう。

References: Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1112910] / Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz4676]

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