更新世のオーストラリアにかつて存在したカンガルー類は、最大250kgもの巨大さゆえに、跳躍は不可能だという説が一般的だった。
しかしオーストラリアとイギリスの共同研究により、これほど大きくても必要な時に飛び跳ねることができた実態が浮かび上がった。
足の骨やアキレス腱の強度を分析した結果、着地の衝撃を次のジャンプの推進力へと変換する、身体構造を備えていたことがわかったのだ。
この研究成果は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-025-29939-7]』誌(2026年1月22日付)に掲載された。
現代の種と同様の「アキレス腱」による跳躍メカニズム
今から260万~1万1700年前の更新世、オーストラリアの大地を闊歩していた、最大で体重250kgに達する巨大カンガルーたちは、現代の種と同様に跳ねることができたようだ。
現代のカンガルーやワラビーは、両方の後ろ脚を同時に使う「ホッピング」で効率よく移動する。
イギリス・マンチェスター大学のミーガン・ジョーンズ博士らは、この跳躍の鍵を握る「アキレス腱」に着目した。
アキレス腱は、着地のエネルギーを一時的に保存し、再び地面を蹴る際に一気に解放する「天然のゴム」の役割を果たす。この仕組みが、巨体であっても維持されていたのである。
「体重160kg限界説」をデータで再検証
もしカンガルーが他の身体部位を変化させずに体だけが大きくなれば、いつかアキレス腱が重さに耐えきれずに断裂してしまう。
これまでの研究では、体重が160kgを超えると足首が跳躍の衝撃に耐えられないと推測されてきた。
そこでマンチェスター大学、ブリストル大学、メルボルン大学による共同研究チームは、現生種94個体と40個体の化石標本を含む、63種のカンガルーとワラビーの後ろ脚を詳細に分析し、この定説を検証した。
調査対象には、更新世に生息していた巨大種のプロテムノドン(Protemnodon)なども含まれている。
第4中足骨が裏付ける「巨体を浮かす骨格」
研究チームは、跳躍の負荷が最も集中する「第4中足骨」のデータを精査した。
分析の結果、調査したすべての種が、自身の巨体を支えるのに十分な強度の第4中足骨を持っていた。
さらに、かかとの骨(踵骨)には、激しい跳躍に必要な太いアキレス腱を収容するのに十分なスペースがあることも突き止められた。
着地の衝撃をただ受け止めるのではなく、太く頑丈なアキレス腱を介して次の跳躍への推進力へと効率よく変換できる身体構造を、巨大な絶滅種たちも備えていたのである。
外敵から逃れるための「瞬発的な回避能力」
一部の研究者は、アキレス腱が太くなると跳躍の効率が下がると考えていたが、チームはこうした見方に異を唱えている。
現代のカンガルーネズミなどの小型種も、体重に対して比較的太いアキレス腱を持ちながら跳躍を利用している。
巨大種たちも、長距離を跳ね続けることはエネルギー効率の面で難しかったとしても、絶滅した有袋類のライオンであるティラコレオ(Thylacoleo)などの外敵から逃れるために、短く素早い跳躍を繰り出していたと推測される。
跳躍の頻度を下げたり、ゆっくり弾んだりすることで、巨体への負担を巧みにコントロールしていたのだ。
身体構造の解析から探る「絶滅の背景」
今回の発見は、巨大カンガルーが跳躍可能であったことを示しているが、常に跳ねていたと断定するものではない。
速度に応じて複数の歩き方を使い分けていた可能性があり、ステヌルス亜科(Sthenurinae)という種は、つま先立ちで歩いていたという説も依然として有力だ。
クイーンズランド大学の古生物学者、ギルバート・プライス博士は、巨大種が現代の種ほど効率的ではないにせよ、力学的に跳躍を可能にするよう体の比率を変化させていた点を注目に値するという。
かつての巨大動物たちがどのように活動していたのかを正しく理解することは、なぜ彼らが絶滅という運命を辿ったのかという謎を解明するための手がかりとなるだろう。
References: Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1113155] / Nature[https://www.nature.com/articles/s41598-025-29939-7]











