南アフリカの海で、怪我を負ったケープペンギンが自らカヤックに飛び乗り、海洋生物学者の女性に助けを求めた。
救助されるまでの約30分間、ペンギンは感謝を伝えるかのように女性に何度も抱きつき寄り添い続けた。
ペンギンが自らハグしてくれることに驚きながらも、女性は感動を隠せなかったという。絶滅の危機にあるペンギンが人間に命を託した瞬間だった。
ボートのまわりを泳ぎ鳴き続けるペンギン
南アフリカのケープタウン近海で、海洋生物学者でカヤックガイドをしているカーシア・ゴベンダーさんは、一羽のケープペンギンの異様な動きを察知した。
通常、野生のペンギンは人間から一定の距離を保つものだが、そのペンギンはボートの周囲を円を描くように泳ぎ回り、しきりに鳴き声を上げていた。
ゴベンダーさんはその不自然な行動から、ペンギンが窮地に立たされていることを察知した。
野生動物がこれほどまでに自分から人間に近づき、存在をアピールするのは非常に珍しい。
何が起きているのかを確認するため、ゴベンダーさんはゆっくりとボートをペンギンの側へ寄せた。
ペンギンが自らボートに乗り込んでくる
するとそのペンギンは、自らゴベンダーさんのカヤックの縁に足をかけ、そのままボートの中へと飛び乗ってきた。
野生の鳥が自ら人間の乗り物に乗り込むのは、めったにあることではない。
ボートの上でペンギンの体を観察したゴベンダーさんは、すぐに事態を把握した。
ペンギンの胸部には、他の動物に噛みつかれたような生々しい傷跡が残っていたのだ。
負傷によって弱っていたペンギンは、海中で捕食者に襲われる危険を感じ、安全な場所を求めてゴベンダーさんのボートの中という避難所を選んだのだ。
しきりに抱きついて感謝を示すペンギン
岸に向かうまでの約30分間、ペンギンはゴベンダーさんに対して全く警戒をしていなかった。
それどころか穏やかな鳴き声を上げながら、ゴベンダーさんの体をくちばしで整える羽づくろいの動作を繰り返し、さらには自分の翼を彼女の体に巻き付けるようにして、しっかりと抱きついた。
ゴベンダーさんはこの経験を、言葉にできないほど特別で一生の宝物だと語っている。
ペンギンは自分が安全な場所にいることを理解し、救い出されたことに安堵しているかのようだったという。
人間を無条件に信頼し、身を委ねてくれたのだ。
陸に上がった後、ペンギンは海鳥の保護・リハビリを専門とする南アフリカ沿岸鳥類保全財団(SANCCOB:サンコブ)へ託された。
絶滅の危機にあるケープペンギン
ケープペンギンはアフリカ大陸に唯一生息するペンギンで、ナミビアから南アフリカにかけての沿岸部に分布している。
体長は60cmから70cm、体重は2.4kgから3.6kgほどだ。
目の上にあるピンク色の皮膚は体温調節のための腺であり、暑くなるとここへ血流を増やして熱を逃がす仕組みを持つ。
ロバに似た鳴き声を出すことからジャッカスペンギンの別名もあるが、現在は個体数が激減している。
かつては数百万羽を数えたが、20世紀以降の採卵や餌となる魚の乱獲により、現在繁殖できるペアは8000組未満にまで落ち込んでいる。
今回救出された一羽は、施設での治療を経て再び海へ戻る予定だ。











