AIが人間と同じように「独り言」を言いながら考え、学習能力を飛躍的に高める新しいトレーニング手法が開発された。
沖縄科学技術大学院大学の研究チームは、独り言(インナースピーチ)と、情報を一時的に保持して活用する作業記憶(ワーキングメモリ)を組み合わせることで、AIの学習効率を劇的に向上させることに成功した。
この技術を使えば、AIはこれまで経験したことのない未知の課題に対しても、人間のように柔軟に対応できるようになるという。
この研究成果は査読済論文として『Neural Computation[https://www.nature.com/articles/s41562-025-02390-4]』誌(2026年1月27日付)に掲載された。
独り言と作業記憶を組み合わせてAIに応用力を持たせる
人間は心の中で自分自身と対話することで、考えをまとめたり難しい決断を下したりしている。
こうした独り言「内なる声:インナースピーチ」と、脳の作業机とも呼ばれる「ワーキングメモリ(作業記憶)」の二つを組み合わせることは、高度な知能を実現するために欠かせない要素だ。
研究チームは、このプロセスをAIに応用し、異なる作業の間で知識を使い回す汎化という能力を大幅に向上させた。
汎化とは、1つの学習を別の新しい状況に役立てる応用力のことである。
脳の仕組みを再現した新しいAIの設計
研究を主導したジェフリー・クワイセア博士は、学習における自己対話と記憶のつながりに注目し、情報を一時的に保管するスロットという容器を複数備えたAIを設計した。
これは、人間が暗算や指示の記憶に使う脳の仕組みを再現したものだ。
このシステムに、一定の回数だけ自分自身に語りかける目標を与えた結果、パターンの順序を逆にするような複雑な課題において、従来のAIを上回る優れた性能を発揮した。
少ない学習データで複雑な課題を攻略
この手法の画期的な点は、学習に必要なデータが少なくて済むことにある。
通常、最新のAIを訓練するには膨大な情報が必要だが、独り言を言いながら作業記憶を動かす仕組みによって、軽量なシステムでも効率よく学ぶことが可能になった。
現実の世界は複雑で常に状況が変化している。こうした環境でAIがどう判断を下すかを研究することは、人間の子供が成長の過程でどのように言葉を覚え、問題を解決する力を身につけていくのかを理解することにもつながる。
人間の成長を解明し、より高性能のAIへ
研究チームは今後、より複雑でノイズの多い環境での実験を計画している。
インナースピーチとワーキングメモリがどう結びついて知能を生むのかを解明することは、人間の生物学や行動についての根本的な理解を深めてくれる。
この知見を応用すれば、将来的に、家庭や農業の現場で状況を自ら判断し、柔軟に動くことができる実用的なロボットの開発に貢献するだろう。
今回の発見は、AIの進化だけでなく、私たちの知性の正体を知るための重要な鍵となる。
References: Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1114001] / OIST[https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2026/1/28/ai-learns-better-when-it-talks-itself]











