三畳紀の海では、これまで理由がはっきりしなかった中規模な絶滅イベントが何度も起きていた。
これはビッグファイブの一つ、三畳紀末の大量絶滅とは別のものだ。
最新研究でチベットの地層を分析したところ、海底火山の噴火が海の酸素を奪い、生態系を繰り返し破壊していた証拠が見つかった。
三畳紀に起きた海洋生物の絶滅イベントのうち、地質学的な原因が特定できるものの約半分は、これら海底での激しい火山活動と密接に連動していたのだ。
名もなき絶滅の多くは、知られざる海底火山の暴走によって引き起こされていたのである。
この査読済みの研究論文は『Geology[https://pubs.geoscienceworld.org/gsa/geology/article-abstract/doi/10.1130/G53406.1/724643/Marine-large-igneous-provinces-Key-drivers-of]』誌(2026年1月20日付)に掲載された。
ビッグファイブの影に隠れた名もなき絶滅イベント
大量絶滅と聞くと、多くの人は小惑星の衝突や超巨大火山の噴火といった、ビッグファイブと呼ばれる五大絶滅を思い浮かべるだろう。
しかし、地球の歴史を詳しく紐解けば、それ以外にも小規模な絶滅が何度も発生していた。
特に当時の海洋生態系は、明らかな引き金が見当たらないままに、繰り返し崩壊していたのだ。
中国地質大学を中心とした国際的な研究チームは、チベット高原に保存されていた古代の海盆の断片を分析した。
ここは、かつて存在した中テチス海と新テチス海が消滅した際の記録が残る、世界でも極めて稀な場所だ。
そこで発見された地質学的な証拠が、これまで見過ごされてきた海底火山と海洋生命の絶滅の深い関わりを証明することとなった。
チベットの地層が語る海底噴火の形跡
三畳紀の地球にはパンゲアという超大陸があり、その周囲をテチス海が取り囲んでいた。プレートの移動によって当時の海底の多くは地球内部に飲み込まれてしまったが、一部は山脈の中に地層として取り込まれた。
研究チームは、これらの岩石に含まれるジルコンやチタナイトといった鉱物の年代を精密に測定した。
その結果、三畳紀には海底に巨大な火山の台地が形成されるほどの大規模な噴火が、少なくとも3つの時期に集中して起きていたことが判明した。
時期は、約2億5000万年前から2億4800万年前、2億3300万年前から2億3100万年前、そして2億1000万年前から2億800万年前にかけてだ。
それぞれの時期は、巨大火成岩岩石区(LIP:Large Igneous Province)の形成期だった。
巨大火成岩岩石区とは、地球の深い場所から上昇した膨大な量のマグマが、短期間のうちに海底へ噴き出すことで作られる広大な火山エリアのことだ。
これらの火山活動のタイミングを化石の記録と照らし合わせたところ、ビッグファイブには含まれない、少なくとも4つの海洋生物の絶滅イベントと一致したのである。
海底火山の噴火が酸素を奪い海を死の世界へ
海底火山の噴火が生き物を絶滅させたメカニズムは、溶岩による直接的な被害ではなかった。
マグマが海底で噴出することで放出された温室効果ガスが、海の化学組成を激変させたことが真の原因だ。
これにより海水温が上昇し、陸からの栄養分が大量に流入することで藻類が異常増殖した。
それらが分解される過程で海中の酸素が奪い去られる酸素不足が引き起こされたと考えられる。
こうした低酸素かつ硫黄の多い環境は、多くの海洋生物にとって逃げ場のない場所となった。
特に移動能力が低い生き物や環境変化に弱い種は、この過酷な変化を乗り切ることができなかった。
研究によれば、三畳紀に起きた海洋生物の絶滅のうち、地質学的な原因が特定できるものの約半分は、この海底にある巨大火成岩岩石区の活動が引き金になっていたという。
証拠が消えゆく海底からのメッセージ
海底の火山台地はプレートの沈み込みによって破壊されやすいため、これまでその影響は過小評価されがちだった。
しかし今回、山脈に押し上げられたわずかな地層の断片から、失われた歴史の真実を掘り起こすことができた。
研究者たちは、三畳紀以外の時代にも、証拠を残さずに消えてしまった海底火山活動による絶滅が数多く存在していた可能性を指摘している。
地球上の生命は、稀に起きる巨大災害だけでなく、数百万年にわたって繰り返される海底からの環境攪乱(かくらん)によっても形作られてきたのである。
この発見は、原因が特定されていないほかの時代の絶滅についても、海底火山が深く関わっている可能性を強く示唆している。
References: Geoscienceworld.org[https://pubs.geoscienceworld.org/gsa/geology/article-abstract/doi/10.1130/G53406.1/724643/Marine-large-igneous-provinces-Key-drivers-of]











