ドイツの巨大農場が、記録的な豊作により、余った4000トンのじゃがいもを無料で市民たちに配布した。ドイツにおいてじゃがいもは、日本の米と同様重要な主食である。
食品ロスを防ぎ、家計を助ける適切な処置のように思われたが、地元の農業団体は「地域の市場を破壊する行為だ」と猛反発している。
豊作なのに捨てなければならないのか?現代の食料廃棄と経済の矛盾が詰まった騒動となった。
豊作で余った4000トンのじゃがいもを無料配布
ドイツ東部のザクセン州にある大きな農場では、2025年に例年を17%も上回る、1400万トン超えという収穫に恵まれた。
しかし、あまりに多く穫れすぎたことで約4000トンものじゃがいもが買い手がつかずに売れ残ってしまった。ジャガイモの数でいうと約2000万個分にものぼる。
そこで農場は、大切に育てたじゃがいもをそのまま埋立地に捨てて廃棄することを避けるため、環境に配慮した検索エンジンであるエコシア(Ecosia)や地元のボランティア組織と協力し、無料配布することにした。
エコシアは検索による広告収益を植樹活動に充てている企業で、配布場所の設置などをサポートした。
現在、推定収穫量のうち約200トンが、フードバンクなどの配布拠点に届けられている最中だ。
市場を守りたい農業団体が無料配布に反発
一見すると、食品を無駄にしない素晴らしいボランティアに見えるが、これに反発したのが、多くの農家を束ねているブランデンブルク農民連盟という農業団体だ。
連盟は今回の無料配布を宣伝活動だと切り捨て、地域の市場を破壊するものだと激しく抗議している。
ドイツの農場は規模が極めて大きく、たった一軒の判断であっても、主食であるじゃがいもが大量に無料で配られれば、住民はわざわざスーパーでお金を出して買わなくなる。
生活のために適正な価格で売ろうとしている他の農家たちの作物まで価値が下がり、売れ残ってしまう恐れがある。
連盟が市場を壊すと主張しているのは、こうした経済的な連鎖を危惧しているからだ。
農家の利益を守るための廃棄という矛盾
こうした騒動は、実は今に始まったことではない。
アメリカの作家ジョン・スタインベック氏は、1939年に発刊した怒りの葡萄[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%92%E3%82%8A%E3%81%AE%E8%91%A1%E8%90%84]の中で、利益を守るために食料をわざと捨てる残酷な社会の仕組みを克明に描いた。
価格を維持するためにブドウの根や木が破壊され、貨車いっぱいのオレンジが地面に投げ捨てられる。
人々が拾いに行けないよう、オレンジには灯油がまかれ、川に流れるじゃがいもを飢えた人々が拾い上げないよう監視員が置かれる。 豚を殺して埋め、コーヒーやトウモロコシを燃料として燃やす。
豊かな大地に熟した果実があるのに、利益が出せないという理由だけで食べ物が強制的に腐らされ、子供たちが栄養不足で死んでいく。
スタインベック氏が描いた、捨てなければならない経済のルールと食べ物を大切にしたい善意の対立は、100年近い時を経た現代のドイツでも形を変えて繰り返されている。
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References: Dexerto[https://www.dexerto.com/entertainment/farm-gives-away-millions-of-surplus-potatoes-after-growing-too-many-3312467/] / Bauernzeitung[https://www.bauernzeitung.de/landwirtschaft/pflanze/gratis-kartoffeln-berlin-schadet-4000-tonnen-aktion-landwirten-701]











