スペインで発見された新種新属の小型恐竜が、鳥脚類の進化における7000万年の空白を埋める
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 スペインで発見された新属新種の小型草食恐竜が、「鳥脚類」というグループの進化史における、7000万年もの空白期間を埋める存在であることが明らかになった。

 新たに発見された恐竜は、極めて小さいながらも複雑に進化した成体であり、従来の恐竜の系統樹を大きく塗り替える鍵となる。

 これまで小型恐竜は「進化の遅れた原始的な存在」と思われがちだったが、この新種は巨大な恐竜に劣らぬ精巧な構造を持ち、当時の生態系で独自の地位を築いていた。

この査読済みの研究論文は『Papers in Palaeontology[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/spp2.70057]』(2026年2月1日付)に掲載された。

スペインで発掘された新属新種の草食恐竜

 恐竜の進化といえば、博物館に並ぶような巨大な草食恐竜や肉食恐竜が主役になりがちだ。

 しかし、スペイン北部での新たな発見は、進化における重要な変化が、非常に小さな骨の中にこそ保存されていることを示した。

 スペイン、ブルゴス県にあるサラス・デ・ロス・インファンテス恐竜博物館のフィデル・トルシーダ・フェルナンデス=バルドール氏らは、同地で異常に小さな一群の化石を発掘した。

 少なくとも5体分に相当するこれらの骨を詳しく分析した結果、これまでに知られているどの属や種とも一致しない、新属・新種の恐竜であることが判明した。

  この恐竜は、分類学上では鳥盤類(ちょうばんるい)の鳥脚類(ちょうきゃくるい)に含まれる「ラブドドン形類(Rhabdodontomorpha)」という系統群に属している。

 しかし、既存のどの属にも分類できない独自の特徴を持つため、新たに「フォスケイア属(Foskeia)」が設けられ、学名は「フォスケイア・ペレンドヌム(Foskeia pelendonum)」と命名された。

 これまで鳥脚類の進化史には、初期の原始的な仲間から後にヨーロッパで繁栄する仲間へと繋がる過程で、約7000万年分もの化石が欠落している空白期間があった。

 フォスケイアは、まさにその「失われた章」を繋ぐミッシングリンクとして、進化の中間地点を私たちに示してくれたのである。

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独自の進化を遂げた小さな大人の正体

 フォスケイアの最大の特徴は、その極端な小ささと、それに見合わないほど特異に進化した体の構造にある。

 国際共同研究チームはマイクロCTスキャンを用い、岩の中に埋まった骨の内部まで3次元で復元することに成功した。

 その結果、頭骨の先端にある骨が融合していたり、前歯が前方に突き出していたりと、他のどの近縁種とも異なる独自の特徴が確認された。

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 また、あごの筋肉がつく場所が広くなっており、他の鳥脚類とは全く異なる方法で食べ物を噛んでいたことも突き止められた。

 化石が小さいため、当初は大型恐竜の子供ではないかという疑いもあった。

 しかし、ブリュッセル自由大学のクーン・スタイン博士による骨の組織分析が、その可能性を科学的に否定した

 顕微鏡で見た骨の内部構造には、子供特有の未熟な成長跡ではなく、性的に成熟した大人であることを示す証拠がはっきりと刻まれていたのだ。

 つまり、フォスケイアは進化の途上で、あえて小さな体格を維持しながら、その中で高度な進化を遂げた独自の存在であったことが裏付けられた。

 さらに、現在の鳥類や小型の哺乳類に近い活発な代謝能力を持っていた可能性が高いことも分かっている。

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大陸を越えて塗り替えられる恐竜の家系図

 科学の世界では、新たな証拠によって定説が覆るのが常だ。

 フォスケイアがもたらした詳細なデータは、恐竜たちの家系図である系統樹の解析にも大きな変化を与えた。

 解析の結果、スペインで見つかったこの新種は、はるか遠くオーストラリアに生息していたムッタブラサウルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9]と非常に近い親戚関係にあることが導き出された。

 ムッタブラサウルスは、全長約8mにも達する大型の鳥脚類で、鼻の上にドーム状の独特な隆起を持つことで知られているオーストラリアの代表的な恐竜だ。

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 今回発見された極小のフォスケイアとは、大きさも見た目も似ても似つかない。しかし、骨格の詳細な特徴は、この両者が姉妹のように近い関係であることを示していた。

 これは、かつて世界の大陸がつながっていた時代に、鳥脚類の仲間が想像を絶する広範囲な移動と拡散を行っていたことを物語っている。

 さらに今回の発見は、長年議論の的となっていたフィトダイノサウリア(Phytodinosauria)[https://en.wikipedia.org/wiki/Phytodinosauria]」仮説を、改めて支持する有力な材料となった。

 フィトダイノサウリアとは、「植物(Phyto)の恐竜」を意味する言葉だ。これは、ブラキオサウルスのような「首の長い恐竜(竜脚形類)」と、イグアノドンやトリケラトプスのような「鳥盤類」を、すべて一つの巨大な「植物食恐竜グループ」としてまとめてしまう大胆な仮説である。

 現在の教科書的な定説(竜盤類・鳥盤類という分類)では、首の長い恐竜はティラノサウルスなどの肉食恐竜に近いグループとされている。

 しかし、このフォスケイアの研究結果は、「植物食の恐竜たちは、肉食恐竜とは別のルートで、もっと早い段階から独自に進化していたのではないか?」という革命的な可能性を示しているのだ。

 筆頭著者のアルゼンチン・リオネグロ国立大学、ポール=エミール・デュドネ氏は、進化という実験は、巨大な体だけでなく小さな体においても同じように過激に行われてきたことを、これらの化石が証明していると語っている。

 7000万年もの間、地層の中に隠されていた小さな骨は、恐竜研究の未来を大きく変える発見となったのだ。

References: Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1114694] / Onlinelibrary.wiley.com[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/spp2.70057]

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