インドの都市ムンバイで、元野良犬が地元警察官たちの仲間となった。パイレーツと名付けられた犬は、首に専用のIDカードをぶら下げ、パトロール車両に飛び乗って街を見守る。
人間と動物が共生するインドならではの、種を超えた深い信頼関係で結ばれているのだ。
パトロール車に飛び乗る犬の姿が目撃される
ムンバイにある有名な海岸通り「マリーン・ドライブ」は、美しい夕日や潮風を求めて多くの人々が集まる観光スポットだ。
そしてこの地にはもう1つの名物がある。警察官と並んで歩く元野良犬のパイレーツの姿だ。
パイレーツはパトロール車両と並んで走ることもある。車両が止まると慣れた足取りで、開いたドアから車内へと乗り込む。
パイレーツは警察官から信頼されており、警察犬の訓練は受けていないが、常に行動を共にする愛すべき相棒なのだ。
いつしか警察の非公式のパトロール隊員に
パイレーツの存在に気が付いたバイカーは、その様子を撮影すると、近くにいたパトロール中の警察官に事情を尋ねた。
マラーティー語を話すその警察官によると、パイレーツは毎日この場所で警察の仕事に付き添っており、今では非公式ながら警察部隊の立派な一員として認められているという。
パイレーツの首には、プラスチック製のIDカードがぶらさがっている。
これは公的な警察官の身分証ではないが、この地域で活動する動物保護団体や警察署が、その犬にワクチンを接種し、適切に管理していることを示す識別票だ。
このIDは、パイレーツは野良犬ではなく、地域社会の一員として公認されているという証なのである。
インドの街で愛される地域犬という存在
パイレーツがこれほどまでに警察や市民に受け入れられている背景には、インド独自の文化と法律がある。
インドでは2001年に制定された「アニマル・バース・コントロール(ABC)規則」によって、健康な野良犬の殺処分が原則として禁止されている。
そのため、街中に暮らす犬たちは地域犬として、近隣住民や付近の組織によって世話をされるのが一般的だ。
警察署の近くに住み着いた犬が、警察官からエサをもらい、いつしか共にパトロールに出るようになるという光景は、インドでは珍しいことではない。
優しさが忠誠心へと変わる。種を超えた美しい共生の形
パイレーツが警察官たちに付き添うのは、厳しい訓練を受けたからではない。
日々接してくれる警察官たちの優しさに応えようと、自分なりに恩返しをしているのだ。
動画を見た人々からは「警察官の思いやりを感じる」「これこそが人間と動物の理想的な共生だ」といった賞賛の声が次々と寄せられている。
特別な肩書きはなくとも、パイレーツはマリーン・ドライブの平和を守る立派なヒーローだ。
人間が動物に敬意と優しさを持って接するとき、そこには種族の壁を超えた、言葉のいらない深い絆が生まれるのである。











