わずか数分で放射性物質のありかを特定、ドイツの最新AIドローンとロボット
Image credit:<a href="https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2026/february-2026/quickly-and-precisely-localizing-radioactive-material.html" target="_blank" rel="noreferrer noopener">Fraunhofer FKIE</a>

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 ドイツの研究機関が、AIを搭載したドローンと地上ロボットを連携させ、目に見えない放射性物質を数分で特定・回収する技術を開発した。

 ドイツ軍も支援するこの技術は、人間が立ち入れない過酷な環境において、AIが自律的に放射線の信号を追跡し、発生源を突き止める。

 かつては専門家が数日を費やして行っていた捜索も大幅に短縮され、現場の安全を根本から変える空と陸の強力なタッグが、今まさに実用化に向けて動き出している。

オーストラリアで起きた絶望の捜索劇

 目に見えず、臭いもしない放射性物質が環境中に漏れ出したとき、その場所を特定するのは極めて困難な作業だ。

 2023年、オーストラリアのピルバラ地域にある鉱山から輸送中だった、長さわずか8mmという米粒ほどの放射性セシウム137カプセルがトラックから落下[https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64494653]した。

 セシウム137は核分裂によって作られる人工の放射性物質で、強いガンマ線を放出し、環境への影響が長期間続くため厳重な管理が必要とされる。

 この時、当局は約1400kmにも及ぶ果てしない高速道路沿いを、何日もかけて捜索しなければならなかった。

 専門チームが時速約70kmで走行しながら路辺をスキャンし続けるという、忍耐と時間を要する過酷な作戦だったのだ。

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 こうした絶望的な状況を、最新のテクノロジーで解決しようとしているのがドイツの研究者たちだ。

捜索時間を大幅短縮。AIが信号をたどる仕組み

 ドイツのフラウンホーファー通信・情報処理・人間工学研究所(Fraunhofer FKIE)の研究チームは、AIを活用した無人航空機システム(UAS)と無人地上車両(UGV)による捜索システムを開発した。

 このシステムは、放射線の一種であるガンマ線を検知するセンサーに加え、光学カメラや赤外線カメラ、さらに高度な確率的探索アルゴリズムを搭載している。

 ドローンによる捜索は二段階で行われる。まず、あらかじめ決められた飛行パターンで背景放射線を測定する。

 もしシステムが異常な放射線を検知すると、即座に標的を絞った捜索モードに切り替わる。

 ここからがAIの出番だ。AIは収集したデータから放射性物質がどこにある確率が高いかをリアルタイムで計算し、ドローンの飛行経路を自律的に修正しながら、目に見えない放射線の信号を追っていく。

 このプロセスにより、かつて数日を要した特定作業を、わずか数分で、しかも1m前後の誤差という精度で完了させることができる。 

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画面をクリックして回収。直感的なロボット操作

 ドローンが空から場所を特定した後は、地上ロボットが回収を担う。

 このロボットには、化学・生物・放射性物質・核・爆発物を検知するセンサーと、特殊なロボットアームが装備されている。

 ドローンによる偵察後も人間が近づくには危険すぎる場所において、脅威の確認や回収作業を行うためだ。

 特徴的なのはクリック・アンド・グラスプと呼ばれる操作システムだ。

 オペレーターがライブ映像に映る対象物を選択するだけで、ロボットが自律的にその物体を掴み、分析や確保を行う。

 また、ロボットが人間の腕の動きを再現するジャケット・コントロールという機能も開発されている。

 これにより、訓練を受けていない救助隊員であっても、自分の手を使うような感覚でロボットを操り、車のドアを開けて内部の物体を回収するといった複雑な作業を安全に行えるようになる。

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人間を危険から遠ざける。
AIとロボットの連携技術

 ドイツ連邦軍防護技術・CBRN防護研究所(WIS)の支援を受けたこのプロジェクトは、災害現場やテロ対策、老朽化した施設の除染など、現実世界の脅威に立ち向かうためのものだ。

 AIによる自律性と、人間による直感的な操作性を組み合わせたこのシステムは、これまで人間が危険を冒して行ってきた捜索と回収のあり方を変えようとしている。

 研究チームは現在、さらに飛行速度を上げ、動いている放射性物質も追跡できる次世代プロジェクトにも取り組んでいる。

 AIとロボットが連携するこの仕組みは、実用化されれば私たちの安全をより確かなものにする強力な「盾」となるはずだ。

 この研究報告は、フラウンホーファー研究所の広報誌『Fraunhofer Research News[https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2026/february-2026/quickly-and-precisely-localizing-radioactive-material.html]』(2026年2月2日付)に掲載された。

References: Fraunhofer[https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2026/february-2026/quickly-and-precisely-localizing-radioactive-material.html]

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