地球の磁場反転期間、7万年も続く事例が海底の堆積物で明らかに
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 地球を取り巻く磁場は、宇宙からの有害な放射線を防ぐ重要なシールドだ。だがその極性は不変ではなく、数十万年に1度くらいのペースでN極とS極が入れ替わっている。

 この「地磁気逆転」という現象がひとたび始まると、完了するまでには通常1万年ほどの時間がかかると考えられてきた。

 ところが、海底の堆積物を分析した結果、その定説を覆す事実が判明した。古代には入れ替わりのプロセスに、7万年もの時間を要したケースが確認された。

 磁場が不安定な状態が長引けば、それだけ地表に降り注ぐ放射線が増え、環境や生態系に深刻な影響を与えた可能性がある。

 この査読済みの研究論文は『Nature Communications Earth & Environment[https://www.nature.com/articles/s43247-026-03205-8]』誌(2026年1年20日付)に掲載された。

地球は巨大な磁石。なぜ極の反転が起きるのか

 そもそも地球の磁場はどのようにして生まれているのか。

 その源は、地下約2900kmより深くにある「外核」だ。ドロドロに溶けた鉄やニッケルが絶えず対流し、巨大な発電機のように電流を生み出すことで磁場が発生している。

 現在は地理的な北極が磁気のS極、南極が磁気のN極となっているが、これは永遠に固定されたものではない。

 外核の対流が乱れることで極性が逆転する。徐々に磁場が弱まり、ふらふらと極が移動しながら、最終的に反対の位置へと落ち着く。

これは「地磁気逆転」と呼ばれる。

 地磁気逆転は、数十万年に1度くらいのペースで起きており、過去1億7000万年の間に約540回起きていると言われている。

 これまでの研究では、1回の反転プロセスにかかる期間は長くても1万年ほどだと見積もられており、これが長年の定説となっていた。

 地質学的な時間スケールで見れば、それはほんの一瞬の出来事といえる。

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海底の堆積物から7万年に及ぶ地磁気逆転を特定

 日本の高知大学の山本裕二教授、九州大学の高橋太准教授、そしてアメリカ、ユタ大学のピーター・リッパート准教授らの研究チームは、この定説を覆す決定的な証拠を発見した。 

 きっかけは、山本教授とリッパート准教授が参加した2012年の「統合国際深海掘削計画(IODP)第342次航海」だ。

 この2か月に及ぶ調査は、本来、始新世(5600万年前から3400万年前)の気候変動を解明するために、北大西洋のニューファンドランド島沖で行われたものだった。

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 チームはこの航海で、海底下300mから「堆積物コア」を採取した。これは海底の泥が粒子単位で積み重なり、地球の歴史を保存したタイムカプセルである。

 堆積物コアとは、海底の泥が長い時間をかけて層になったもので、地球の歴史を保存したタイムカプセルである。

 堆積物の中には、かつて生きていた磁性細菌などの微生物が含まれており、その体内に「磁鉄鉱」という微小な磁石を持っている。

 磁性細菌が死んで海底に沈む際、その方位磁針のような体は当時の磁場の向きに合わせて整列するため、泥の層を詳しく調べれば、過去の地球の磁場がどちらを向いていたかが分かるのだ。

 研究チームがこの記録を詳細に解析したところ、始新世の地層から、2つの地磁気逆転の痕跡が見つかった。

 1つは約1万8000年で完了していたが、もう1つは約7万年という、極めて長い時間をかけて反転プロセスが続いていたことが判明したのだ。

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磁気逆転の長期化で宇宙放射線が増加

 地磁気逆転の最中は、地球を守る磁場のバリアが著しく弱くなる。その期間が7万年も続いたとなれば、地球環境への影響は計り知れない。

 リッパート准教授によれば、磁場が弱まることで、高緯度地域だけでなく地球全体が長期間にわたり宇宙放射線にさらされたはずだという。

 これにより大気の状態が変化したり、生物の遺伝子変異の発生率が上がったりした可能性がある。

 また、渡り鳥のように磁場を頼りに移動する生物のナビゲーション能力も狂わせたかもしれない。

 これまでスーパーコンピュータによるシミュレーションでは、地磁気逆転が長期間に及ぶケースがあり得ると予想されていたが、現実の地層から物理的証拠が発見されたのは今回が初めてだ。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s43247-026-03205-8] / Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1115687]

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