生成AIが一気に普及した昨今、ネット上には一見「本物か?」と信じてしまいそうな偽物の画像や映像が溢れている。
こういったフェイク・コンテンツの中には、視聴者を感動させたり感心させたりする内容のものも多く、つい拡散したくなってしまうことも少なくない。
2026年1月下旬、SNSに厳寒の海岸沿いで暮らす野生馬たちの身体に、寒さをしのぐための断熱材を撒いている画像が投稿された。
この画像はあっという間に1万を超える「いいね!」を獲得し、ネットで拡散されていったのだが、後にAI生成によるフェイクであったことが判明した。
馬の身体に防寒のための断熱材を巻く画像が拡散
2026年1月29日、「Alex Lex[https://www.facebook.com/alex.lex.461272]」というFacebookアカウントに、身体に断熱材を巻き付けられた馬たちの画像が投稿された。説明欄には、次のように書かれていた。
本日、非営利団体「Outer Banks People」は、野生馬たちが低温や降雪に備えられるよう支援を行いました。
極寒の中で馬たちを暖かく保つため、リサイクルされた断熱材で注意深く包みました。
現在、私たちはこの活動を継続するため、断熱材とダクトテープの寄付を募っています。皆様からのご寄付は、冬の間、地元の野生生物を暖かく安全に保つために役立てられます
一見すると、野生馬の保護団体が、寒さから彼らを守るための活動をしているように思えるかもしれない。
投稿された画像は非常にリアルで、「寒風吹きすさぶビーチで、馬たちに断熱材を巻き付けているボランティアたち」にしか見えない。
だが落ち着いて考えてみよう。いくら寒いからと言って、野生の馬に断熱材をそのまま巻き付けようなんて発想がどこから出て来たのだろうか。
断熱材にはいろいろな種類があるが、ここに写っているものはグラスウールかグラスファイバー製に見える。
だとすれば触れるとチクチクして、とてもじゃないが馬たちが快適に過ごせるとは思えない。
それに断熱材を巻いた上から、さらにダクトテープがぐるぐる巻きつけられていて、尻尾まで固定されてしまっている。
この写真を見た人たちからは、「どうやって排泄しろって言うんだ?」というもっともなツッコミが寄せられていた。
批判を受けてさらなる画像が投稿される
さらにインターネット上では「ないわー」というツッコミの嵐が。
- 野生馬が大人しく断熱材巻かれるとか思ってるの? ちゃんと世話されてる家畜の馬ですら、慣れてないとブランケットでパニック起こすぞ
- ほんとそれ。うちの馬はブランケット嫌がるし。昔1頭だけ巻いてたことがあるけど、あれは高齢だったからだな
- ビーチに野生馬がいるのは別に珍しくない。でもああいう馬は丈夫だから、人間がいちいち世話しなくても普通に生きていける
- そうそう。仮に本物だとしても、あの手のポニーは毛がふさふさでめちゃくちゃ丈夫だぞ。マイナス20度くらいでも平気
- グラスファイバーって細かいガラス繊維だよね。動物にとっては普通に危険だし環境にも悪い。そもそも野生馬がこんなこと大人しくやらせるわけない。AIってだけじゃなくて発想自体がアホすぎる
- 本物だったとしても野生馬じゃないだろ。野生馬は人間に触らせないからな。
捕食される側の動物なんだから警戒心が強い- いや、どんな馬でもこんなことされたらキレるわ。グラスウールとかめちゃくちゃ不快だぞ。普通に蹴られるか噛まれて終わる
- 間違いなくAI。この投稿してるアカウント、他にもAI画像だらけだし。段ボール小屋で気象キャスターが馬と一緒に避難してる画像[https://www.facebook.com/photo?fbid=2836203376712109&set=a.119006798431794]とかあって笑ったわ。本物だと思ってるコメントも多くて余計に笑えた
- これはAI。コロラの馬は完全に野生で、人間が近づけるのは医療介入とかのときだけだ
- AIかどうかはともかく、明らかにフェイクだろ。野生馬は「野生」なんだから、人間にこんなことさせるわけない
- 問題は、これを信じて自分の馬に同じことする奴が出てきそうなことなんだよな…
投稿が注目され、批判のコメントなどが殺到するようになると、Alex氏はさらなる画像を投稿することで応えた。
例えばグラスファイバー製の断熱材ではなく、スプレー状の発泡断熱材を吹き付けているシーンである。
野生馬を暖かく保つために最初に使用した断熱材について、多数のメールや電話、メッセージをいただいています。
改めて検討した結果、グラスファイバーの断熱材は適切な方法ではなかったと認めます。これは水分を吸収しやすく、すぐに劣化してしまうためです。
今夜からは、湿気や寒さにどの程度耐えられるかを確認するため、代替となるフォームベースの断熱材を、管理された表面や設備でテストする予定です。
これは、グラスファイバーで起きたような問題を繰り返さないよう、本格的に使用を検討する前に評価するためのものです
そしてこの発泡断熱材にも批判が殺到すると、今度はなんと、馬の毛を刈って丸裸にしてしまうという暴挙(?)に出た。
発泡断熱材も、野生馬に害を及ぼす可能性があるのではないかという懸念の電話を複数受けました。
調査の結果、これらの懸念は正当であり、野生馬にとって安全ではないことを確認しました。
これを受けて直ちにボランティアを派遣し、馬の毛に付着していた発泡断熱材や影響を受けた部分の毛を慎重に取り除きました。
野生馬の安全と健康は私たちの最優先事項であり、引き続き状況を注意深く見守っていきます
いやいやいやいや、そもそも寒さ対策のはずだったのに、毛を刈ってしまっていったいどうするつもりなんだ?
フェイク画像を投稿し続けているアカウントの「作品」
なお、一連の投稿については既に警察に通報が行われている模様だ。キティホーク警察署が、Alex氏に次のようなコメントをつけている。
本当に多くの人がこの件を私たちに通報してきています。正直言って、非常に面白いと思います
これらの画像・映像を投稿している「Alex Lex」なる人物は、デジタルクリエイターを生業としているらしい。
今回の馬の画像のほかにも、あり得そうだったり絶対にあり得なさそうだったりする、シュールな「作品」たちを投稿し続けているアカウントだ。
こんな映像からかなりお下品なものまで、ボートフォリオは多岐にわたっているが、面白いと思うかどうかは微妙なところ。
野生馬は実際に存在するが人間が近づくのは違法
この画像の舞台とされるコロラは、アメリカ・ノースカロライナ州のアウターバンクスにある海岸沿いの地域である。
アウターバンクスは本土と大西洋の間に連なる細長い砂州の列で、強風や嵐にさらされる過酷な自然環境として知られている。
現在、この地域には約100頭前後の野生馬が暮らしており、Corolla Wild Horse Fund[https://www.corollawildhorses.com/]という非営利団体が保護と管理を行っている。
これらの馬は完全に野生化しており、地元カリタック郡の条例では、野生馬から50フィート(約15m)以内に近づいたり、餌をやったりすることは違法である。
今回の野生馬関連の画像に関して、Corolla Wild Horse FundのCEO、リス・ウィンター氏は、次のように苦言を呈している。
これは完全な偽物です。画像はAIによって生成されたものです。このような投稿が繰り返し拡散されているのは非常に残念なことです。
馬たちの安全や健康について、広範囲にわたって不必要な不安を引き起こしてしまうからです
ネットで何かを見聞きしたら、まず疑ってかかるのがデフォルトとなってきた昨今、大半の人はこれらの画像をフェイクとして冷静に受け止めたようだ。
それでも信じてしまう人は一定数いるわけで、「真似する人が出るのでは?」という懸念も当然だろう。
いわゆるライフハック系の動画の中にも、実践すると取り返しのつかないダメージをもたらす「技」を紹介しているものも少なくない。
災害時にフェイクの情報が出回る危険性は言うまでもないが、「面白い」「すごい」からと、こういった画像や映像を安易に拡散しないよう注意しないといけないな。
References: No, North Carolina’s wild horses were not wrapped in insulation[https://www.popsci.com/technology/wild-horses-insulation-north-carolina-ai-image/]











