「最期にキツネに触れたい」死を目前にした男性の人生最大の願いが叶う時
Image credit:Sharon Dalby / Yorkshire Post

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 人生の幕が下りようとする直前、最期に1つ願いを叶えることができるとしたら何を願うだろうか?

 イギリスに住む85歳のコリン・エミットさんの願いは、昔から大好きだった本物のキツネに触れることだった。

 血管性認知症を患い、静かに最期の時を待つコリンさんの願いを叶えるため、家族や介護施設、そして保護団体が協力し、奇跡の対面が実現する。

 ベッドサイドにやってきた一匹の保護ギツネの温もりに触れた瞬間、コリンさんの目にはかつての輝きが戻ってきた。

家族から「フォックス」と呼ばれるほどキツネが大好きな男性

 イギリス、ウェスト・ヨークシャー州ブラッドフォードに住むコリン・エミットさんは、かつて羊毛の選別作業員やトラック運転手として働き、4人の子供を育て上げ、11人の孫を持つ。

 そんな彼の人生には、いつもキツネの存在があった。

 コリンさんのキツネ好きは筋金入りで、家には長年かけて集めた膨大な数のキツネの置物が並び、庭にやってくるアカギツネを眺めるのが何よりの楽しみだったという。

 そのあまりのキツネ愛から、家族からは「フォックス(Fox:キツネ)」というあだ名で呼ばれていたほどだ。

 血管性認知症を患っていたコリンさんは、2025年3月頃、専門的なケアを受けるために介護施設「ビングリー・パーク」へ入所した。

 血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により脳組織がダメージを受けて発症し、意欲低下、感情不安定、歩行障害などの身体症状を伴う「まだら認知症」が特徴だ。

 入所から数か月が経った2025年12月、家族は85歳のコリンさんが「終末期ケア」の段階に入ったことを告げられた。

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ずっと抱き続けてきた男性の願い

  残された時間がわずかであると宣告されたとき、家族が真っ先に思い浮かべたのは、コリンさんが長年抱き続けてきた「本物のキツネに触れたい」という願いだった。

 認知症によって記憶が薄れゆく中にあっても、長年持ち続けていたキツネへの愛情だけは決して変わることはないと家族は考えた。

 家族が施設スタッフに相談したところ、すぐに作戦が開始された。

 スタッフは、キツネの保護活動を行う「フォックス・エンジェルズ財団(Fox Angels Foundation[https://www.foxangelsfoundation.org/])」に事情を話し、特別な訪問を依頼したのだ。 

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キツネを撫でた瞬間、目に輝きが戻る

 2026年1月19日、ついにその日がやってきた。

 コリンさんのもとに現れたのは、7歳のオスのアカギツネ、ベンだ。

 ベンはかつて救助された保護ギツネで、現在は財団のレス・ヘムストックさんのもとで暮らしている。

 ベンがベッドサイドでケージから出されると、コリンさんの目は輝きを取り戻した。

 普段はほとんどの時間を居眠りして過ごしているが、この時ばかりはずっと目を覚まし、優しい手つきでベンの顔をなで続けた。

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 レスさんによれば、コリンさんとベンはお互いの目をじっと見つめ合っていたという。

 娘のシャロン・ダルビーさんは、「父にとって信じられないほど大きな影響があった」と、その瞬間を振り返る。

父はわずか30分前に何を食べたかさえ忘れてしまうほどですが、驚いたことに、2週間が経過した今でも、キツネが訪ねてきたことや、そのキツネの名前が『ベン』であったことをしっかり覚えており、その時のことを話し続けています

これほど長く記憶が持続しているのは信じられないほど素晴らしいことです(ダルビーさん)

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イギリスはエキノコックス清浄国

 介護施設にキツネを入れて大丈夫なのか?エキノコックスの心配はないのか?と疑問に思う人もいるだろう。

 イギリスにおいてアカギツネは、人間の生活圏にもよく姿を現すほど身近な野生動物だが、政府はエキノコックスの国内への侵入と蔓延を防ぐため、極めて厳格な監視体制を敷いている。

 まず「水際対策」として、海外からイギリスに入る全ての犬に対し、寄生虫の駆除薬を摂取することを法律で義務付けている。

 これは、人間と共に移動する犬が寄生虫を持ち込む最大のリスクであるためだ。

 さらに国内では、定期的に野生のキツネの個体を検査し、エキノコックスが入り込んでいないか常にチェックを続けている。

 こうした徹底した管理により、イギリスは国内の野生動物からエキノコックスが検出されない「清浄国」の状態を維持している。

 今回訪問したベンも、専門団体の管理下で定期的な駆虫と健康診断を完璧に受けている個体だ。

 介護施設側も、これら全ての安全基準をクリアしていることを確認した上で、この異例の対面を許可したのである。

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野生動物への敬意と適切な距離感

 この様子が公開されると、キツネをペットとして飼いたいと願う声も上がったが、ベンの飼い主であるレスさんは重要な助言を忘れない。

 キツネは決してペット向きの動物ではない。悪気はなくても家具を壊し、非常に強い独特の臭いもある。彼らは本来、野生で生きるべき動物なのだ。

 今回の交流は、コリンさんが長年抱き続けてきた願いを叶えるために、多くの善意と適切な管理が重なって生まれた特別な時間だった。

 動物が、ときに人間の記憶の壁を越え、魂を癒やす力を持っていることをこの物語は伝えている。

References: Yorkshirepost.co.uk[https://www.yorkshirepost.co.uk/news/people/dying-yorkshire-grandfather-gets-his-last-wish-to-pet-a-fox-at-his-bedside-5505742]

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