これまでの恐竜には見られなかった特殊な皮膚構造を持つ、新種のイグアノドン類が中国で発見された。
白亜紀前期、約1億2500万年前の地層から見つかった化石は、皮膚細胞の核が確認できるほど保存状態が良く、胴体や尾など、体の広い範囲が中が空洞になったトゲのような組織で覆われていたという。
ベルギーとフランス、中国の国際研究チームによると、これは羽毛とも鱗とも異なる、独自の進化を遂げた未知の器官である可能性が高いという。
このトゲは、現代のヤマアラシのように、身を守るために敵を遠ざける役割を果たしていたのではないかと推測されている。
この査読済みの研究論文は学術誌『Nature Ecology & Evolution[https://www.nature.com/articles/s41559-025-02960-9]』(2026年2月6日付)に掲載された。
皮膚細胞まで残された新種のイグアノドン類の皮膚の化石
中国・遼寧省西部にある「義県層(ぎけんそう)」から発掘され、安徽省地質博物館に保管されていた化石が、最新の調査によって新種のイグアノドン類であることが判明し、「ハオロン・ドンギ(Haolong dongi)」と命名された。
ここは、かつて湖や森林が広がっていた陸地の地層が積み重なった「熱河層群(ねっかそうぐん)」と呼ばれる巨大な地層グループの、一番下の層にあたるところだ。
ハオロン・ドンギが属する「イグアノドン類」は、白亜紀に世界中で繁栄した植物食恐竜の大きなグループである。
二足歩行と四足歩行を使い分け、効率よく植物を食べるためのくちばしや歯を発達させていた。有名なイグアノドンから、後に「カモノハシ竜」とも呼ばれるハドロサウルス科へと進化していく、恐竜の歴史の中でも非常に重要な系統だ。
今回発掘された化石は保存状態が非常に良く、1億2500万年前のものにもかかわらず、皮膚細胞の核までが肉眼や顕微鏡で確認できる状態で残されていた。
安徽省地質博物館に保管されていたこの極めて良好なサンプルを、フランス国立科学研究センター(CNRS)や、ベルギー王立自然科学研究所のパスカル・ゴドフロワ博士らの研究チームは、最新技術で分析した。
その結果、これまでは想像するしかなかった恐竜の皮膚の微細な内部構造を、細胞レベルで特定することに成功した。
白亜紀前期の恐竜の表面がどのような組織で構築されていたのかを客観的に裏付ける、極めて資料価値の高い発見となった。
羽毛とも鱗とも異なる、中が空洞になった特殊なトゲ
ハオロン・ドンギの皮膚の化石を詳しく調べると、胴体や四肢の付け根、そして尾にかけての広い範囲に、中が空洞になった円筒状のトゲが備わっていることがわかった。
恐竜の体表組織は、これまで「鱗」か、あるいは鳥の先祖に見られる「羽毛」のどちらかの系統に分類されると考えられてきた。
しかし、このトゲは鱗が尖ったものでも、羽毛が変化したものでもない、第三の組織であることがわかった。
このトゲは皮膚の深い層から独立して生え出ており、独自の多層構造を持っていた。
イグアノドン類はもちろん、他の恐竜には見られないこの特徴は、ハオロン・ドンギが羽毛の進化とは無関係に、独自のルートで皮膚を武器へと進化させたことを物語っている。
トゲは外敵を追い払う防御器官だった可能性
今回見つかったハオロン・ドンギの化石は体長2.45mほどの幼体だった。
イグアノドン類の仲間は基本的におとなしい植物食恐竜であり、小型の肉食恐竜に常に狙われる立場にあったため、身を守るための特殊な装備が必要だったのかもしれない。
研究チームは、この中空のトゲが、現代のヤマアラシのように外敵を追い払うための「防御器官」だったと推測している。
また、トゲの内部が空洞になっていることから、防御だけでなく、体温を逃がして調節したり、周囲の振動を察知したりする感覚器官としての役割を兼ねていた可能性も指摘されている。
これまで200年にわたり世界中で調査されてきたイグアノドン類の中で、このようなトゲ状の皮膚を持つ種が見つかったのは史上初めてのことだ。
今回の発見は、恐竜の皮膚が私たちの想像以上に多様な進化を遂げたことを示している。
References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41559-025-02960-9] / PHYS[https://phys.org/news/2026-02-dinosaur-spikes-unprecedented-properties-china.html] / SCI[https://www.sci.news/paleontology/haolong-dongi-14545.html]











