太陽系を離れ250億km先のボイジャー1号の信号を検知したアマチュア天文家
Image credit:NASA/JPL-Caltech

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 地球から最も遠い場所を旅する、人類の使者ボイジャー1号。現在は太陽系の惑星が位置する領域をはるかに越え、星々と星の間にある広大な「星間空間」を突き進んでいる。

 2026年2月現在、最新の観測データによる地球からの距離は約256億km。光の速さですら片道約23時間48分もかかる、果てしない暗闇の中だ。

 そんな孤独な旅人が発する、消え入りそうなほど微弱な信号を、オランダのアマチュア天文家チームが検出することに成功した。

地球から遠く離れた不屈の冒険者、ボイジャー1号 

 ボイジャー1号は1977年に打ち上げられ、木星や土星の驚くべき姿を私たちに見せてくれた後、今もなお秒速約17kmという猛スピードで深宇宙を旅している。

 現在の距離は約171.7天文単位(AU)。これは地球から太陽までの距離の171倍以上という、想像を絶する遠さである。

 通信時間も限界に達しつつある。

 2026年2月時点で、ボイジャーからの信号が地球に到達するまでの片道時間は約23時間48分を要しており、2026年11月には人類が作った物体として初めて「1光日(信号が届くまでに丸1日かかる距離)」に達する見込みだ。

 そうなれば、地球からの呼びかけに返事が戻ってくるまで、丸2日間も待たなければならない。

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ボイジャー1号のかすかな合図を検出したアマチュア天文家たち

 ボイジャー1号は打ち上げから48年以上が経過し、現在は満身創痍の状態で旅を続けている。

 電力を節約するために多くの観測機器が停止され、時には深刻な通信トラブルに見舞われながらも、何度も運用の危機を乗り越えてきた

 NASAの説明によると[https://science.nasa.gov/mission/voyager/did-you-know/]、ボイジャーが地球に届ける信号の強さは、わずか1000兆分の1ワットという極めて微弱なものだ。

 これは現代のデジタル電子腕時計が動くのに必要な電力の、実に200億分の1という、かすかな合図にすぎない。

 通常、この信号を受信するには、NASAが世界3カ所に配置しているディープスペースネットワーク(DSN)という巨大なアンテナ群が必要になる。

 しかし今回、オランダ北東部にあるドウィンゲロー無線天文台を拠点とする、アマチュア無線衛星通信(AMSAT)のメンバーたちは、自分たちの技術と創意工夫でこの壁を突破した

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地球とのズレを計算し信号を特定

 アマチュア天文家でもあるAMSATのグループは、ドウィンゲローの電波望遠鏡に独自の改良を加えた。

 本来、この望遠鏡はボイジャー1号が使用する8.4GHz(ギガヘルツ)という高い周波数を観測する設計ではなかったが、新しいアンテナを取り付け、信号の反射率を上げるなどの工夫を凝らした。

 さらに彼らの前に立ちはだかったのが、移動する物体から出る波の周波数が変化する「ドップラー効果」だ。

 ボイジャーも地球も猛スピードで動いているため、届く信号の周波数は常に変化し続ける。

 チームはボイジャーの正確な軌道予測データからこのズレを精密に補正し、背景にある激しい宇宙ノイズの中から、ボイジャー1号が発信した「搬送波(信号の核となる電波)」を特定することに成功したのだ。

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2030年代に訪れる「永遠の沈黙」

 残念ながら、ボイジャー1号の旅が永遠に続くわけではない。

 機体を動かすエネルギーは年々減り続けており、2030年代の初めにはすべての電力が尽き、完全に電源が落ちると予想されている。

 電源が切れた後も、ボイジャー1号は静かに慣性に従って、星々の間を漂い続けるだろう。

 今回の検知成功は、別れの時が近づく「大ベテランの冒険家」が、今この瞬間も確かに生きていることを、私たちに再確認させてくれた。

 この研究成果は、アマチュア無線衛星通信(AMSAT)のシンポジウムにて発表された。

References: Amateur Astronomers Detect Signal Coming From Voyager 1 Spacecraft, 25 Billion Kilometers Away[https://www.iflscience.com/amateur-astronomers-detect-signal-coming-from-voyager-1-spacecraft-25-billion-kilometers-away-82455]

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