発掘現場で150年前の酒瓶を発見、はたしてそのお味は?

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 アメリカ・ユタ州で行われていた考古学の発掘調査の最中、1本の古い酒瓶が土の中から転がり出てきた。

 その瓶はおよそ150年以上前のものと推定されたが、ガラスにヒビなどは入っておらず、コルク栓で密封されたまま、中身も満杯の状態で残っていた。

 この酒瓶は地元の蒸留所へと持ち込まれ、研究者と蒸留職人たちによって、その中身が慎重に調べられることになった。

発掘中に見つかった密閉された150年前の酒瓶

 ユタ州アルタと聞くと、スキーリゾートを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが19世紀後半のアルタは鉱山町として栄えていた。

 2025年8月、アルタでは人工降雪機の建設工事に伴い、考古学者イアン・ライト氏が率いるチームによる発掘調査が行われていた。

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 19世紀の拍車やパイプ、瓶などさまざまな遺物が見つかる中、ある日の掘削中に、突然土の中から1本のボトルが転がり出てきたという。

重機で掘削していたとき、1本の酒瓶が転がり出てきました。酒瓶自体はそこら中にありましたが、この1本は斜面を転がり落ちてきたんです。

拾い上げてみるとまだ中身は満杯で、コルク栓も残っていました。私たちは「なんてことだ、これは本物の宝物だ」と気づいたのです

 ライト氏はその時の様子をこう語る。ユタ州の考古遺跡で、中身が満杯の酒瓶が発見された例はこれまで一度もなかったのだそうだ。

ミズーリ州や、ミシシッピ川で川の流れが変わって沈没船が見つかったような場所では発見例がありますが、ユタ州では一度もありません。

そもそもコルクの栓がそのままついている瓶自体、ほとんど見つかることはありません。

仮に見つかっても、コルクは内部で乾燥して縮んでしまっていたり、破片しか残っていなかったりします。

ですから、これは非常に珍しいケースなのです

 下の画像向かって左は、発掘中によく見つかる蓋の破損した瓶。向かって右が、今回見つかったコルクの栓がそのままの中身が満杯の酒瓶である。

 150年前のものだそうで、日本でいうと明治時代の頃だ。

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蒸留所の協力で中身の調査が行われる

 そこで発掘チームは、このまま瓶を展示するのではなく、その中身が何であるかを調べ、その時代について人々がより理解を深められるようにしたいと考えた。

それで私たちは、「専門家に調べてもらって、何が含まれているのか正確に調べてもらえないだろうか」と考えたんです

 当初、チームはニューヨークのメトロポリタン美術館に連絡を取った。だが同館は責任問題が発生するリスクを理由に、関与することを辞退したという。

 そこでライト氏らは、地元の蒸留所「ハイ・ウェスト[https://highwest.com/](High West Distillery)」に調査協力を依頼することにした。

 同蒸留所は、2006年にユタ州パークシティで創業した蒸留所で、禁酒法以降、ユタ州で初めて合法的に操業を始めた蒸留所である。

 同社は「歴史的なアメリカ西部の蒸留文化の復興」を掲げ、ウイスキーなどの蒸留酒の製造とブレンドを行っている。

 同社の蒸留部門責任者でマスター・ディスティラーのアイザック・ウィンター氏は、今回の発見はハイ・ウェスト社の理念と深く一致するものだと考えた。

 そこで製品開発部門の責任者タラ・リンドリー氏と共に、この調査を引き受けることにしたのだ。

中の液体からは「フルーティーな良い香り」が!

 彼らはまず、まだボトルから何らかの匂いが漂ってくることを確認。最初に感じた香りとしては、「わずかに酢のような匂い」を挙げていた。

 中身は既に発酵して、酢になってしまっているのだろうか。

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 それを確かめるには、中身を実際に取り出すしかない。だが、それには極めて慎重な作業が必要だった。

 そこでコルクを破壊せずに液体だけを抜き取るために、ウィンター氏らは「コラヴァン[https://www.coravin.jp/]」と呼ばれる器具を使うことにした。

 コラヴァンとは、コルク栓を抜くことなく中身の液体を注ぐことができる、画期的な器具である。

 細い中空の針をコルクに通して内部の液体を吸い出し、同時にアルゴンガスを注入することで、コルクを元の状態に保ちながら中身の劣化を防ぐのだそうだ。

 いよいよコラヴァンがセットされ、中身がグラスに注がれた瞬間、周囲にいた人々からは驚きの声が上がった。

 150年も地中にあったというのに、液体を取り出した瞬間、「フルーティーで、花のようで、とても良い香りがした」のだそうだ。

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リンゴ酒のような低アルコールの醸造酒だった可能性

 そこにいた全員が次々に匂いを確認していき、最後にウィンター氏が匂いをかいだ瞬間、彼はこう言ったという。

これは飲んでみるべきだ。みんな、飲んでみるべきだよ!

 150年前のお酒を味わう機会など、そうそうあるものではない。まずウィンター氏が一口飲むと、部屋にいた他の人々も続いてテイスティングを行うことに。

 みんなで味を確かめた結果、この段階では、中身はおそらくビールのような飲み物だろうとの意見が出た。酵母の風味が感じられたためである。

 その後、瓶の中身をすべて取り出して調べるためにコルクの栓を完全に抜くことになった。

 しかし古い瓶には圧力がかかっている可能性があり、瓶を傷つけないよう非常に慎重な作業が求められた。

 そして中身が取り出され、外部の研究機関で分析されることになった。その結果、中身はビールではなく、リンゴをベースにしている可能性が示唆された。

 150年前のアルタでは、リンゴ由来の発酵酒、つまりシードルに近い低アルコール飲料が飲まれていた可能性が出てきたのだ。

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いつか再現される可能性も

 ウィンター氏によると、このお酒には「酸化した果実、レーズン、蜂蜜、革のようなニュアンス」があるそうだ。

 また、瓶の底には乳白色を帯びた多くの沈殿物があることが確認された。研究者たちは、この沈殿物が培養可能であるかもしれないと考えている。

 もし成功すれば、このお酒を再現した飲み物が味わえるようになる可能性がある。そうなったら19世紀、鉱山時代の歴史や文化と直接繋がる体験になるだろう。

 この謎の液体についてもっと詳しく知るために、ウィンター氏らはサンプルを第三者の研究所に送り、さらに数回の分析を行う予定だそうだ。

 この酒瓶の発掘にあたったライト氏は、現在までの調査結果を受けて、次のように述べている。

もしハイウェストがこの歴史を再現し、生き生きと蘇らせる方法を見つけられれば、ユタ州の人々にとっても、そしてここを訪れる人々にとっても、かけがえのない宝物になるでしょう

 もし原料がリンゴとなると、再現できる可能性は高そうだ。アルコール度数もそれほど高くなさそうだし、いつかこのお酒の「復刻版」がアルタ名物として、気軽に飲めるようになるかもしれないね。

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