アメリカ、オレゴン州の洞窟で、約1万2400年前に作られた、知られている中で「史上最古の縫製された衣服」の破片が発見された。
ヘラジカの皮を植物繊維で丁寧に縫い合わせたこの遺物は、最終氷期の過酷な環境を生き抜いた先住民が、高度な技術と独自の文化を持っていたことを裏付けている。
この査読済みの研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aec2916]』誌(2026年2月4日付)に掲載された。
70年越しに特定された約1万2400年前の遺物
1950年代、アマチュア考古学者のジョン・カウルズ氏は、オレゴン州のクーガー・マウンテン洞窟とペイズリー洞窟から膨大な数の遺物を掘り出した。
動物の皮や植物から作られた道具は、通常は数千年も経てば腐敗して土に還るが、乾燥した洞窟がこれらの有機物を現代に残してくれた。
長らく個人の所有物となっていた遺物は、現在オレゴン州のファベル博物館が保管している。
ネバダ大学ラスベガス校やオレゴン大学の研究チームが最新の年代測定を行った結果、55点のコレクションの中に人類の歴史を塗り替える発見が含まれていることが分かった。
植物繊維で縫い合わされたヘラジカの皮
研究チームが発見したのは、植物繊維をよった紐で縫い合わされた、2枚の小さなヘラジカの皮だった。
放射性炭素年代測定により、この皮は約1万2400年前のものと特定された。この時代は、日本でいえば縄文時代初期にあたる。
当時の日本でも動物の皮などが衣服に使われていた可能性は高いが、酸性の強い日本の土壌では実物が残ることはまずない。
一方、極度に乾燥したオレゴン州の洞窟は、1万年以上も前の「裁縫の跡」を保存していた。
これまで1万1700年以上前の衣服の実物はほとんど確認されておらず、今回の遺物は現存する中で、世界最古の縫製された衣服の実例となる。
骨の針が証明する自己表現としての衣服
洞窟からは衣服の破片に加え、14本の精巧な骨の針も見つかった。
これらは「後期更新世(12万6000年前から1万1700年前)」に作られたものとしては極めて質が高く、非常に細い針穴が開けられている。当時の人々が高い技術で皮を仕立てていた証拠だ。
これほど細い針は、単に皮を繋ぎ合わせるだけの用途ではなかったと研究チームは考えている。
衣服が防寒のためだけではなく、あえて細い針で繊細な縫い目を施すことで、衣服に装飾性を加えたり、自分の個性を周囲に示していた可能性もあるという。。
最終氷期の人々は、すでに現代の私たちと同じように、身に着けるもので自分らしさを表現していたようだ。
過酷な環境を生き抜いた当時の人々の創意工夫
コレクションにはヘラジカ以外にも、バイソンの骨で作られた尖頭器(槍などの先端部分)や、ウサギを捕まえるための罠の跡が含まれていた。
オレゴン州の高地砂漠に暮らしていた先住民は、大型動物の皮を衣服の主材料にしつつ、罠で捕らえた小動物の皮も衣類に活用し、その肉を食料にすることで厳しい環境を生き抜くための生態学的知識を備えていた。
研究チームは、世界中の博物館に未調査のまま眠っているコレクションの中にも、当時の知恵を解き明かす手がかりが隠されていると考えている。
1万年以上前の先住民が見せた適応力と技術は、現代の私たちが直面する気候変動への対応においても、重要な教訓を残している。
この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aec2916]』誌(2026年2月4日付、Vol 12, Issue 6)に掲載された。
References: Science[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aec2916] / Popularmechanics[https://www.popularmechanics.com/science/archaeology/a70290051/oldest-clothing/]











