行方不明から60年。月面探査機「ルナ9号」の居場所を最新AIが探し出したかもしれない
探査機ルナ9号月面着陸後のイメージ generated by Nanobanana

行方不明から60年。月面探査機「ルナ9号」の居場所を最新AI...の画像はこちら >>

 1966年、世界で初めて月面への軟着陸に成功したソビエト連邦の探査機「ルナ9号」は、3日後にバッテリーが尽き、月面で消息を絶った。

 その正確な場所は60年もの間、謎に包まれてきたが、イギリスのノッティンガム大学の研究チームがNASAの月周回衛星「LRO」の画像を最新AIで解析した結果、ついに有力な形跡を特定できた可能性があるという。

 半世紀以上の時を経て、歴史に埋もれた先駆者の姿が明らかになるかもしれな い。

 この査読済みの研究成果は『npj Space Exploration[https://www.nature.com/articles/s44453-025-00020-x]』誌(2025年1月21日付)に掲載された。

人類が初めて見た月面の景色。ルナ9号が証明したこと

 1966年2月3日、ソ連(現ロシア)のルナ9号が月面に着陸した。当時、月面は深い塵(レゴリス)に覆われており、着陸したものはすべて沈んでしまうと考えられていた。

 ルナ9号の最大の使命は、この月面の正体を暴くことだった。

 月面に確実に降り立つため、ルナ9号は極限まで無駄を削ぎ落とした設計となった。

[画像を見る]

 当時の太陽電池は重く非効率だったため搭載を見送り、軽量なバッテリー(蓄電池)のみを積み込んだ。

 それは限られた命の中で、歴史を変えるデータを送り届けるという決死のミッションであった。

 ルナ9号は地表からの高度が5mに達した瞬間に、飛行ステージ(母船)からランダー(着陸機体)を放り投げた。

 衝撃吸収用のエアバッグに包まれて弾みながら着地したランダーは、直径約58cm、重さ約99kgの小さな球体だ。

 着地から4分後、ランダーは4枚のパネルを花びらのように開き、史上初となる月面からのパノラマ写真を送信した。

 そこに写っていたのは岩の転がる固い地面であり、人類が月面を歩けることを世界で初めて証明した瞬間となった。

[画像を見る]

短い命を終え、60年間行方不明に

 ルナ9号の稼働時間は、バッテリーが尽きるまでの約75時間という短いものだった。

 1966年2月6日、すべての任務を終えたルナ9号は通信を断ち、月面の静寂の中に消えた。

 当時、ソ連の機関紙「プラウダ(Pravda)」が着陸座標を公表したが、実際の場所を突き止めることはできなかった。

 月には風も雨もないため、直径わずか60cm足らずのランダーや飛行ステージの残骸は当時のまま残っているはずだが、広大な月面からその小さな姿を探し出すのは極めて困難であった。

[動画を見る]

イギリスの研究チームがAIで再捜索

 ルナ9号はいったい今、どこにいるのだろう?

 イギリス・ノッティンガム大学のフィリップ・メッツガー博士らの研究チームは、NASAの衛星「LRO(ルナ・リコンサイナンス・オービター)」が15年間に撮影した、解像度0.25mという極めて詳細な画像データを活用し、その居場所を探ることにした。

 研究チームは、人工物の特徴を抽出することに特化した最新AI「YOLO-ETA」を導入し、膨大な画像群を解析させた。

 AIは過去の月着陸機の形状や影のパターンを学習しており、月面の複雑な地形の中から人間が作ったものの形跡を探し出した。

 その結果、ついにルナ9号に関連すると見られる有力な候補地を導き出したのである。

[動画を見る]

ルナ9号を確実に特定するための再調査を予定

 AIが示した場所は、北緯7.03度、東経マイナス64.33度付近である。

  この地点には、ルナ9号の飛行ステージ(母船)や切り離されたエアバッグ、そしてランダー(着陸機体)本体と思われる物体が、ミッションの手順と矛盾しない配置で点在していると推測されている。

  また、現地の地形はルナ9号が60年前に送信してきた地平線の形状とも一致しているという。

[画像を見る]

 だが、今回の発見はあくまで「非常に有力な候補地を特定した段階」であり、発見が確定したわけではない。

 今後は衛星による重点的な再撮影を行って、肉眼で識別可能なレベルでの最終確認が進められる予定だ。

 もし実体であることが証明されれば、月面有人探査も予定されている中、宇宙飛行士たちが、偉大なる功績を残したルナ9号と再会できる日がくるかもしれない。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s44453-025-00020-x] / NASA's Lunar Orbiter May Have Spotted Long-Lost Luna 9 Spacecraft, 60 Years After It Vanished[https://www.iflscience.com/nasas-lunar-orbiter-may-have-spotted-long-lost-luna-9-spacecraft-60-years-after-it-vanished-82507] / Science.nasa.gov[https://science.nasa.gov/resource/first-photo-from-the-surface-of-the-moon/]

編集部おすすめ