ミケランジェロが描いた「右足」の小さなデッサンがなんと42億円で落札
image credit:ミケランジェロ・ブオナローティ(カプレーゼ 1475-1564 ローマ) リビアのシビュラの足部の習作<a href="https://www.christies.com/en/lot/lot-6571681" target="_blank" rel="noreferrer noopener">/</a>MICHELANGELO BUONARROTI (CAPRESE 1475-1564 ROME) Study for a foot of the Libyan Sibyl (recto) via Christies

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 祖母の家に掛かってた”右足”だけの絵。ある一族が長年受け継いできた、小さなデッサンの落札額はなんと42億円にも上った。

 それがかの有名なミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の下絵(デッサン)だなんて、誰が想像できただろう?

 オンライン査定を機に事態が一変。専門家が騒然となり、メディアもこぞって取り上げるドラマチックな展開に。

 突如オークションに現れた、500年前の貴重なデッサンの中身にせまっていこう。

代々伝わる小さな絵がミケランジェロの真作だった

 きっかけはなんてことないアップロード。ある人物が、一族に代々伝わる”小さな絵”の写真をオンライン査定に送ったことから始まった。

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 その絵のタッチは、今まで現存するのは2点のみとされてきた、ミケランジェロ作の「リビアの巫女」(ミケランジェロ・ブオナローティ 1512年 フレスコ画)の準備デッサンを彷彿させた。

 とはいえ今どき精巧なレプリカ(複製画)もある。油断は禁物だ。

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 だが専門家ジャーダ・ダーメン氏はその特徴を見逃さなかった。線の勢いや赤いチョークの粒子、人体のとらえかたといい、「これは…ミケランジェロ本人が描いたものでは?」と直感。

 さらに数ヶ月にわたる慎重な調査を経て、その直感どおりの真作と判明する。

システィーナ礼拝堂の“あのポーズ”を支える足

 このデッサンは、巨大な巫女が立ち上がる瞬間の“右足”を表している。

 描いたのはまさにそこだけ。にもかかわらず、かかとを浮かせ、つま先に体重をあずけるときの緊張感がありありと伝わってくる。

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 ミケランジェロは、人間のポーズを徹底的に観察し、筋肉の張り、重心の移動、指先の力の入り方にいたるまで、その一瞬を小さな紙に封じ込めていた。

数少ないデッサンが個人所有から出品される奇跡

 ここまで注目される理由として、まず挙げられるのは、生涯絶えず絵を描き続けたはずのミケランジェロのデッサン(素描・下絵)そのものが少ないことだ。

 イギリスを拠点とするオークションハウスのクリスティーズによると、そもそも現存するミケランジェロのデッサンの数はというと、専門家の間では、概算で600点ほどというのが定説だそう。

 彼が当時制作したであろう、数千枚のデッサンのうちのほんの一部、と見積もられている。

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 それでも多く感じる人もいそうだが、そうしたデッサンが公的な売買の場に現れることなどめったになく、しかも個人所有という今回のケースは極めて珍しい。

 ミケランジェロが描いた”システィーナ礼拝堂にまつわるデッサン”、というくくりでも、現存するのは50点ほど。中でも個人所有は非常にまれで、オークションに出たものはこれが初ともいわれている。

 さらに前述したように、”ミケランジェロの「リビアの巫女」に関する準備デッサン”に限定すれば、他に現存するデッサンはたった2点しかない。

 それぞれ1点ずつ、アメリカのメトロポリタン美術館とイギリスのアシュモレアン博物館に所蔵されている。

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 ミケランジェロといえば、自身が描いたデッサンを焼却処分していたことでも知られるが、その他の事故や経年などでも失われず、個人宅から出品された今回のデッサンはまさに奇跡的。

 そこからうかがえる“新たな筆致”といい、美術史では注目すべき事だらけなのだ。

裏面から浮かび上がったもうひとつの習作

 加えてこの作品の裏面からも、赤外線撮影により、 黒チョークで描かれた脚(膝を含む右脚太もも周辺)の習作が浮かび上がった。

 柔らかなハッチング[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0]、筋肉の立ち上がり、光と影のコントラストは、まさにミケランジェロの筆使いだったという。

 表には赤チョークの足。

裏には黒チョークの脚。一枚の紙に、天才の“思考の軌跡”が二重に刻まれていた。

200年以上スイスの一族が受け継いできた名品

 クリスティーズによると、このデッサンはこれまで市場に出たことがなく、未発表の作品だという。

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 18世紀のころにはデンマーク国王に仕えたスイスの外交官、アルマン・ド・メストラルの美術コレクションに入り、そこから 200年以上、一度も市場に出ることもなく、同じ家系で静かに受け継がれてきた。

 ちなみに、このデッサンの写真を査定に出した匿名希望の人物(彼の子孫)いわく、この作品は、長年にわたり祖母の家の壁に掛けられていたものだった。

 その額の裏側はダクトテープで封がされ、祖母の筆跡で「ミケランジェロ」と記されていたものの、相続で譲り受けたのち、査定に出すまでずっとレプリカと思っていたそう。

 ただ「家にある古い絵」として眠っていた一枚が、巨額の落札記録をたたき出し、美術史に残るほどの脚光を浴びるとは。なんとドラマチックな展開だろう。

競り落とされたミケランジェロ作品のうち最高額を更新

 予想落札価格は150万~200万ドル。しかし、世界中のコレクターが参戦したことで競りは 45分間の長期戦へとなだれ込んだ。

 最終的に価格は予想のおよそ14倍、2720万ドル(約42億円) に達し、ミケランジェロ作品のオークションでの最高落札額記録を更新した。

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500年後の今も価値を生み続ける絵

 家にあった一枚の小さな絵。それがオンライン査定をきっかけに、専門家も息をのむ巨額の名画に。500年前の天才の作品が、今も価値を生み続けることにもあらためて驚かされる。

 ミケランジェロの時代よりはるかに技術が発展し、SNSを経由して多種多様なアートが披露される現代でも、彼が残した下絵の魅力は色褪せない。

 500年前のデッサンが、長き時を超え、私たちがスマホ片手にのぞき込むタイムラインを流れるなんてちょっと不思議な感覚だけど、それが名画の証ってことなんだろうな。

References: Christies[https://www.christies.com/en/lot/lot-6571681] / Instagram[https://www.instagram.com/p/DTbFuFnjtCS/] / Wikipedia[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%93%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%B7%AB%E5%A5%B3_(%E3%83%9F%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AD)?uselang=ja]

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