AIが生成した画像は、もはや本物と見分けがつかないほど精巧になっているが、一部の人たちは簡単に見抜くことができるという。
アメリカのヴァンダービルト大学の研究によると、AI画像を正確に特定できる人は、AIに関する知識や技術があるからではなく、持って生まれた個人の資質である「物体認識能力」によるものだという。
この能力が高い人は、デジタルの合成画像に対して高い識別力を発揮するのだ。
AIの顔と人間の顔を見分ける「AIフェイス・テスト」を実施
今日、AIがゼロから作り出す「生成AI画像」は、日常のあらゆる場面で見かけるようになった。
その中には、実在する人物の顔を合成したり、本物と見分けがつかないほど精巧な人物を生成したりする、さらに識別が困難な「ディープフェイク」も含まれている。
ヴァンダービルト大学のイザベル・ゴーティエ教授らの研究チームは、こうした高度な合成画像と実在の人間の顔をどれだけ正確に区別できるかを測定するため、「AIフェイス・テスト(AI Face Test)」というツールを開発した。
IT技術、知能の高さは関係していない
偽物を見抜くことができる人には、どのような特性があるのだろうか。
一般的には、IT技術に詳しかったり、AIの仕組みを学んだ経験があったり、あるいは知能そのものが高ければ、偽物を見抜きやすいと考えられがちだ。
しかし、今回の実験結果はそれらを否定するものだった。
一般的な知能の高さや、IT技術の習熟度、さらにはAIに関する専門的なトレーニングを受けているかどうかといった要素は、顔画像が偽物かどうかを正しく判断する助けにはならなかったのだ。
精巧なディープフェイクが作り出す視覚的な矛盾を察知するのに必要なのは、別の個人的な資質だった。
物体認識能力「o(オー)因子」が識別を可能にする
生成AI画像やディープフェイクを正確に特定できた人々には、共通する特徴があった。それは、視覚的に似た物体同士のわずかな違いを区別する「物体認識能力」が優れていることだ。
この能力は専門的に「o(オー)因子」と呼ばれている。
私たちは、見慣れたものから初めて見るものまで、あらゆる物体を目で見て記憶し、その特徴を瞬時に判断しているが、この視覚的な処理のベースとなる基礎能力が「o因子」だ。
重要なのは、この「o因子」が、読み書きや計算などで測る一般的な知能(g因子)とは全く別の能力であるという点だ。
つまり、知能が高いことやAIに詳しいことと、この視覚的な「o因子」の能力があるかどうかは別の話なのだ。
この「o因子」という能力は、特定の対象だけでなく、あらゆる分野の視覚的な作業で発揮される。
例えば、野鳥観察で鳥の種類を特定したり、楽譜の複雑な音符を読み取ったりする力と同じものだ。
さらに医療の現場でも、放射線科医がレントゲン写真から小さな肺結節(肺にできる小さなかげ)を見つけたり、病理学者が顕微鏡でがん細胞を分類したり、さらには網膜の写真だけで性別を判断したりする際にも、この「o因子」が使われている。
この能力が高い人は、AIが作り出した画像に対しても、そこに潜むわずかな「視覚的なノイズ」を察知できる。
それは巧妙なデジタルの嘘から身を守るための「知覚の鎧」を身にまとっているようなものなのだ。
人間側の知覚の多様性がデジタルの嘘を防ぐ
メディアではしばしば「生成AIやディープフェイクはリアルすぎて誰にも見分けられない」と語られるが、今回の研究はそれが誤解であることを示している。
実際には、偽物を見抜けない人もいれば、高い精度で見抜く人もいるという「能力の差」が存在する。
物体認識能力である「o因子」は、時間を置いて再テストをしても結果が変わらない安定した能力であり、特定の訓練よりも生まれ持った資質としての側面が強い。
AIが社会に浸透する中で、一部の人々が備えるこうした視覚的な能力は、巧妙なデジタルの嘘から社会を守るための重要な役割を果たす可能性がある。
この査読済みの研究成果は『Journal of Experimental Psychology[https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0001881]』誌(2026年)に掲載された。
References: Neurosciencenews[https://neurosciencenews.com/ai-detection-object-recognition-30125/]











