高さ4mのロボット「ゴジラ」が世界最大の核融合炉の建設に挑む
強力なパワーを持つロボット「ゴジラ」 Image credit:ITER

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 フランスで建設が進む世界最大の核融合炉ITER(イーター)の現場では、高さ4mの巨大ロボット「ゴジラ」が組み立て作業を支えている。

 核融合炉の建設には2万個の精密な部品を積み重ねる必要があり、人間の手で作業を行うのは非常に困難だ。

 特別仕様のゴジラは、2.3トンの重量を持ち上げるパワーを持ち、1億5000万°Cの熱を閉じ込める装置を、1mm単位の精度で組み立てることができる。

 かつて核の恐怖の象徴だったゴジラは、今やクリーンエネルギーの未来を切り開く相棒として、人類史上最も複雑なパズルに挑んでいる。

太陽の力を地上で再現する核融合炉の仕組み

 核融合は、太陽が光り輝き、膨大な熱を出すのと同じ仕組みでエネルギーを生み出す。

 燃料は水素の仲間である重水素と三重水素(トリチウム)だ。

 これらの原子同士が猛烈な速さでぶつかって合体し、別の原子に変わる時に大きなエネルギーが発生する。

 現在普及している原子力発電は原子を割ることで熱を得るが、核融合は原子をくっつけるという真逆の原理を利用する。

 核融合は反応を維持するのが難しいため、装置に不具合があればすぐに停止し、原子力発電のような暴走は起こらない。

 ただし核融合反応を起こすには、燃料を1億5000万°Cという太陽の中心部より10倍も熱いプラズマ状態にする必要がある。

 フランスで建設中の核融合炉ITER(イーター)[https://www.iter.org/project/commissioning]は、強力な磁力を使って超高温のプラズマを宙に浮かせ、「トカマク型」と呼ばれるドーナツ型の容器に閉じ込める装置だ。

 二酸化炭素を出さず、燃料を海水から取り出せるため、クリーンエネルギーとして期待されている。

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2万個の精密部品を24時間体制で組み上げる

 核融合炉の内部は、厚い金属の層が重なる複雑な構造をしている。

 プラズマ容器の壁には、熱から装置を守る遮蔽ブロックや、エネルギーを取り出すブランケットと呼ばれる部品が2万個も取り付けられる。

 すべての部品を1mmの狂いもなく正確な位置に固定しなければ、装置は正しく動作しない。

 通常の手順で一つずつ部品を取り付けると、完成まで100年以上かかってしまう。

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 そこでチームは、24時間体制・週6日のペースで絶え間なく作業を続ける「ローリング・ウェーブ(押し寄せる波)」という戦略を立てた。

 止まることのない波のように、休まず組み立てを積み重ねる過酷なスケジュールだ。

 このスピードと精密さを両立させるために、巨大ロボット「ゴジラ」の力が不可欠となったのだ。

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巨大なパワーと繊細な指先を併せ持つゴジラの性能

 2026年3月から、実際の炉内を再現した実物大の試験モデルでテストを開始するゴジラは、建設を加速させる切り札だ。

 最大の特徴は、溶接やボルト締め、検査といった30種類以上の道具を自動で使い分ける機能にある。

 従来の産業用ロボットは決められた動きを繰り返すだけだったが、ゴジラはカメラによる視覚と、圧力センサーによる触覚を備えている。

 部品をはめ込む際に生じるわずかな抵抗を感知し、瞬時に動きを微調整して最適な位置を探り当てる。

 2.3トンの重量を持ち上げるパワーをこなしつつ、外科手術のような繊細な調整を可能にしているのがゴジラの真骨頂だ。

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ゴジラが切り拓くエネルギーの未来

 その圧倒的なパワーと巨大な体躯から、現場の技術者たちはこのロボットをゴジラと名付けた。

 かつて核の恐怖を象徴していた名前が、現在は人類を救うためのエネルギーを作る現場で、最も頼もしい相棒として親しまれている。

 ゴジラが検証した技術は、将来的に原子炉内部で働くさらに巨大なロボットの設計に活かされる。

 人類史上最も困難といわれる核融合炉の建設は、ロボット技術の進化によって着実に前進している。

 銀河系で最も熱い1億5000万°Cの炎を制御する日は、一歩ずつ近づいているのだ。

References: ITER[https://www.iter.org/project/commissioning]

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