Youtubeで最初に投稿された動画がイギリスの博物館で展示中

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 YouTubeに最初に投稿された動画「Me at the zoo」が、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)のコレクションに加えられた。

 V&Aが収蔵したのは動画ファイル単体ではなく、YouTubeの初期視聴ページを再現した復元物と、その背景資料一式である。

 インターネットで動画を見るという、今や日常の一部になったサービスの「最初の1本」が、歴史の一部として博物館に収蔵・展示されることになったのだ。

「ゾウの鼻ってかっこいい!」それが歴史の始まりだった

 2005年4月23日20時31分52秒(PDT:アメリカの太平洋夏時間)、わずか19秒の動画がインターネット上に公開された。

 タイトルは「Me at the zoo(動物園にいる僕)」。投稿者はYouTube共同創業者の1人として知られるジョード・カリム氏である。

 映像はカリフォルニア州サンディエゴにある、サンディエゴ動物園のゾウ舎の前でで撮影されたものだとう。

 カメラの前に立つカリム氏の背後にはゾウたちがいて、19秒という短い映像の中で、彼はゾウの鼻の長さについて語っている。

ええと、ゾウたちの前にいるんだ。彼らのすごいところは、本当に、本当に、本当に鼻が長いことなんだ。クールだよね。で…言うことはこのくらいかな

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 この短い動画が、YouTube史上最初の投稿とされる映像である。カリム氏は「jawed」というアカウントを作り、友人のヤコフ・ラピツキー氏に撮影してもらった映像を、YouTube最初の動画として投稿したのだ。

 派手な演出も編集もないが、この動画は現在まで削除されることなく公開され続けていて、2026年2月20日現在で再生数3.8億回となっている。

「最初のYouTube動画」として博物館入り

 この投稿から20年以上が経過した2026年、この動画がロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)[https://www.vam.ac.uk/]のコレクションに加えられた。

 収蔵されたのはオリジナルの動画ファイルだけではない。

2006年12月8日時点の動画再生ページ、いわゆる「watch page」を復元したものも、あわせて展示されることになったそうだ。

 今回復元された動画再生ページは、インターネット上の過去のページを保存している「インターネット・アーカイブ[https://archive.org/]」の記録をもとにしたものだ。

 インターネット・アーカイブはウェブサイトやデジタル資料を保存する非営利団体であり、過去のサイトを保存・閲覧するサービス「Wayback Machine[https://web.archive.org/]」を運営している。

 このWayback Machineが2006年12月8日に保存していた動画再生ページが、今回の復元作業のベースとなったのだそうだ。

 YouTube社内に保存されていた資料ではなく、第三者が取得・保存していたアーカイブを採用した理由について、V&Aは「当時実際に公開されていた状態を示す証拠性を重視した」と説明している。

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 今回復元の対象となったのは、単なる静止画像ではない。初期のYouTubeはAdobe Flash Playerを前提とした設計であり、現在のブラウザ環境ではそのまま再生することができなかった。

 そこで、Flashの動作を再現するエミュレーター「Ruffle」を用い、当時の再生体験を再構築することにしたのだ。

 この復元作業には、V&Aのキュレーターや保存担当者だけでなく、YouTubeのユーザーエクスペリエンス部門と、ロンドンにあるインタラクションデザインスタジオ「oio[https://oio.studio/]」が関わったとされる。

 展示されている動画再生ページには、動画本体のほか、当時のロゴやバナー広告、コメント欄や評価表示、関連動画一覧なども含まれている。

 つまりこの展示では、2006年当時の見た目そのままの画面が見られるのだ。きっとこの画面を見て、「なんか見覚えがある」「懐かしい」と思った人も多いんじゃないだろうか。

 今回の展示は、YouTubeが現在の形に至る以前、動画共有サイトがどのような設計思想で構築されていたかを示す資料として、貴重なものだと言えるだろう。

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YouTube開発のきっかけとは

 YouTubeの開発者であるカリム氏とチャド・ハーリー氏、スティーブ・チェン氏は、もともとはPayPalで働いていた同僚だった。

 彼らは当時、インターネット上では動画を簡単に共有する手段が乏しく、特定の出来事の映像を探しても見つけにくい状況に不便さを感じていた。

 特にカリム氏が言及しているのが、2004年に起きたスーパーボウルのジャネット・ジャクソンの「胸ポロ」[https://www.youtube.com/shorts/9ilpEpx9UXs]事件と、インド洋大津波である。

 この2つの事件の動画を見たいと思ったカリム氏がネットを探しても、簡単には見つからなかったという。

 こうした問題意識から、誰もが手軽に動画をアップロードし、視聴できる仕組みを作ることを目指してYouTubeの開発を始めたのだそうだ。

 この最初の投稿の後、同年12月15日にYouTubeは正式にサービスを開始。だがその翌年、Google社がカリム氏ら創設者チームからYouTubeを買収することに。

 そして現在、YouTubeの月間アクティブユーザー数は約2.7億人に達しており、今も毎分数百時間規模の動画が新たにアップロードされ続けているという。

 20年という歴史を積み上げ、巨大になったYouTubeのまさに最初の一歩が、この「Me at the zoo」という短い動画だったのだ。

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 この展示は2026年2月18日から、V&Aサウス・ケンジントン館[https://www.vam.ac.uk/south-kensington]の常設ギャラリー「Design 1900–Now(Room 76)」で公開されている。

 また、復元作業の技術的背景や保存の過程については、ロンドン東部ストラトフォードにあるV&A East Storehouse[https://www.vam.ac.uk/east]でも紹介されているそうだ。

 インターネットの歴史の1ページに燦然と刻まれることとなったこの動画。今のところ展示の終了時期については告知されていないが、期間限定とのことなので、興味のある人は早めに見に行くことをおすすめする。

 なお、動画に登場していたカリム氏も、現在は46歳になり、投資家として活躍しているとのこと。

 表舞台に出て来ることはほとんどなくなったが、この動画の概要欄にたまに現れては、説明の文章を更新したりしているそうだ。

References: Acquiring an early YouTube watch page and its first-ever video[https://www.vam.ac.uk/articles/acquiring-an-early-youtube-watch-page-and-its-first-ever-video]

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