ブラジルのサンパウロ州知事タルシジオ・ジ・フレイタス氏は、2026年2月10日、犬や猫などのペットを家族の墓に一緒に埋葬することを認める法律に署名した。
これによりサンパウロ州では、希望すれば自分のペットと、同じお墓にいっしょに埋葬されることが可能になったのだ。
きっかけは、亡くなった飼い主の墓のそばに住み着き、10年後にこの世を去った1匹の犬である。
ブラジルの忠犬「ボブ」がきっかけ
この新しい法律は、別名「ボブ・コヴェイロ(墓掘りボブ)法」とも呼ばれている。2021年に交通事故で死んだ、「ボブ」という犬にちなんだものだからだ。
大サンパウロ都市圏にあるタボアン・ダ・セーラの市営墓地には、かつて「ボブ」という名の1匹の犬が住みついていた。
2011年、ボブの飼い主が亡くなって、この墓地に埋葬された。ボブは愛する飼い主が眠る墓の傍らを、決して離れようとしなかった。家族がいくら連れ帰っても、その度に戻ってきたのだそうだ。
そのうちに墓地の職員がボブのために犬小屋を作ってやり、餌を与えて面倒を見るようになった。
ボブは墓地で葬儀があると必ず参列し、悲しむ遺族に静かに寄り添った。その姿は、地域では広く知られる存在になっていたという。
だが、そんなボブを悲劇が襲った。飼い主がなくなって10年が過ぎた2021年10月、ボブは墓地の外でバイクにひき逃げされ、命を落としたのだ。
当時はペットを飼い主と同じ墓に埋葬することを認める制度がなかったが、市当局の特別な判断により、ボブは例外的に飼い主の墓のそばに埋葬された。
下の動画は、ボブの葬儀の様子を写したものだ。
ボブの死後、地元の動物保護団体「パトレ(Patre)」などの呼びかけでクラウドファンディングが行われ、墓地内には彼の銅像が設置された。銅像の銘板には、次のように書かれている。
あなたが教えてくれた愛と忠誠への敬意と感謝を込めて
悲しみに直面したとき、ボブは小さなボールと気配りを、最もそれを必要とする人に差し出すことを私たちに教えてくれました
この出来事はペットと人との絆を象徴する実例として広く知られるようになった。
望めばペットと家族が同じ墓地に入ることができる法案
そんな経緯もあり、今回の「ペットを家族墓に埋葬できる法律」が州法として正式に承認された。
ボブの名にちなんで、「ボブ・コヴェイロ法」とも呼ばれている。
この新しい法律は「飼い主とペットとの間にある情緒的な絆を認めるものだ」と、サンパウロ州政府の発表は説明している。
フレイタス知事自身も、家族とともに複数の犬を飼っており、その様子をたびたびSNSで公開している愛犬家だ。
人口2億1,200万人、ペット数1億6,000万匹を抱えるサンパウロ州は、こうした埋葬を認める世界でも数少ない地域の仲間入りを果たすこととなった。
飼い主にもやさしいサンパウロのペット事情
ブラジルでは、24時間営業のペット用品店から五つ星ホテル並みの設備を整えた高級ペットホテルまで、さまざまな高級サービスが存在する。
その一方で、低所得者向けのサポートも手厚い。特にサンパウロ州では、飼い主が無料で受けられるさまざまなサービスが用意されている。
例えばサンパウロ市には「Meu Pet」と呼ばれる公立の動物病院ネットワークがあり、4か所の病院で低所得層の住民向けにペットの診療や手術、検査、入院などの無料サービスを提供している。
これらの動物病院では、眼科、腫瘍、外科手術、X線検査まで、幅広い医療が提供されているのだそうだ。
さらにサンパウロ州政府は、鎖による拘束を禁止する「鎖廃止法」や、無料のコンテナ型の公的獣医医療施設「ペット・コンテナ」の拡充を進めている。
ペットと一緒の埋葬には賛否両論も
実はサンパウロ州は、ブラジルで初めてこの制度を導入したというわけではない。
すでにリオデジャネイロ州やサンタカタリーナ州では、飼い主とペットを同じ墓に埋葬することが認められている。
パラナ州のアプカラーナ市では、2024年に同種の条例案が審議され、「墓地は聖なる土地であり不適切だ」とする宗教的・文化的反対論が強く出たものの、最終的には可決された。
また、連邦レベルでも同様の内容を定める法案が、2023年から国会下院で審議待ちの状態に置かれている。
とはいえ、宗教観や衛生面への懸念から、地域によっては強い反対も根強く、連邦レベルの法整備はまだ実現していない。
ネットではこのニュースを知った人たちから、さまざまな意見が寄せられている。
- 自分が死んだら、遺灰をペットの遺灰と混ぜてほしいな
- 心が温かくなる法律だね。ペットは家族だし、その愛情をちゃんと尊重してくれてる
- 納得できる。ペットは家族だし、自分が死んだらペットの遺灰と一緒に埋葬してほしいもん
- もし僕がペットより先に死んだら、彼らに僕の遺体を見せてほしい。そうすれば、置き去りにされたわけじゃないことを理解してくれるはずだから。彼らの愛情を裏切るなんて想像もできない。
彼らが僕に見捨てられたと思って苦しむ姿には耐えられないんだ
- わかる。自分が死んだら、うちの犬にその姿を見せたい。自分がもういないのだと、ちゃんとわかってほしい
- よくわからないんだけど、これまで禁止だったってこと? 家族の墓に誰を入れるかまで、他人が決められるの?
- 人間以外の動物を埋葬することが禁止だったんだよ。ブラジルは人間を埋葬するだけでも、かなり手続きが面倒らしい
- 動物って普通は解剖が行われないから、死因がわからない。もし病気で死んでいたら、墓地が不衛生になる恐れがあるからね
- 多分、宗教の問題だと思う。私はカトリックじゃないけど、動物に魂があるとは考えない立場の人もいるから、教会的には聖なる土地に動物を埋めるのが問題だとされてきたのかもしれないね
- 人間はそのまま埋めないでしょ? 血液を抜いて薬品に置き換えたり、消毒剤で洗ったりする。ペットに同じことをするとは思えないんだけど
- 獣医師だけど、原因不明の病気で死んだ場合、火葬を勧めるよ。よく「前にいた犬も同じ症状で死んだ」って言われることがある。家の消毒や前のペットの処置が適切に行われないと、病原体が残ってしまったんだ
- 人間と一緒に動物を埋めることで、いったい誰が危険にさらされるの?人間も動物で、どっちも死んでるのに
- 墓掘り人や墓参りに来た人、墓地の管理人とかだよ
- とはいえ一般的には、衛生面の問題で、動物を人間と一緒に埋葬しないことが多いよね
なお、ブラジル以外の世界を見てみると、ニューヨークでは、すでに10年前からペットと飼い主を同じ墓に埋葬することが認められているそうだ。
その他ドイツのハンブルク、カナダやイギリスのいくつかの自治体、そしてイタリアのミラノなどでも、ペットの遺灰を人間と一緒に埋葬できるという。
ちなみに日本はどうかというと、法律上はペットと人間を一緒に埋葬することを禁じる規定はないとのこと。
ただし、墓地や納骨堂の管理規約で禁じているケースもあるようなので、希望する人は事前に問い合わせておくことをおすすめする。
もちろん火葬した後の遺骨や遺灰ということになると思う。











