走る、伸びる、吊り上げる。全てが規格外の怪物現る。
超大型移動式クレーン LTM11200‑9.1 、通称「ヘラクレス」は、ドイツの重機メーカーから誕生したモンスター。世界最長クラスの伸縮ブーム(腕の役割を果たす主要構造部)と9軸の車軸が自慢だ。
山の悪路も走行し、現場では怪力を発揮。100mのロングブームで重いパーツを吊り上げ、繊細な作業もこなす。
空へと伸びるブームはもちろん、熟練オペレーターの神業で、50トン超の巨大パーツをミリ単位で動かすシーンも圧巻。ヘラクレスの名も納得のヤバい重機を見ていこう。
巨大な風車の建設を担う世界最大級クレーン「ヘラクレス」
山奥に高さ100m超える巨大な風車を建てるとしたら、まずパーツも当然巨大だし、組み立て作業の光景もスケール感がバグりそう。
まるで巨人のブロック遊び。とはいえ現実には大変な労力と繊細な作業、そして失敗できない緊張が伴う。
そんな無茶ぶりに応じるのがドイツの重機メーカー、リープヘル社の「LTM 11200‑9.1」。
世界最大級と評されるこのクレーンは、そのけた外れな能力から「ヘラクレス」の名で親しまれている。
世界最長クラスのロングブームを操る怪力の持ち主。風力発電の要(かなめ)を担う、まさに現代のヘラクレスだ。
ブームとは、クレーンの上部本体に取り付けられている、長い棒状の腕の役割を果たす部分で、重量物を吊り上げて移動させる。
100mの伸縮ブームで最大1,200トン吊る”怪物”
風車といえば、広大な丘陵地や森の中など、ぽつんとしたへき地に建つのが普通だが、その現場の多くは建設機械にとって難所になる。
全地形対応型の9本の車軸を持つヘラクレスは、そんな難所で頼りになる。未舗装の悪路や急斜面をものともせず、山道にもひるまない。
しかも最高速度は 75キロ。巨体なうえに“走れてしまう怪物”なのだ。
また吊り上げ高さも必要に応じてさらに延長できる。自慢のロングブームで足りない時は、25 mのラティス(軽量で強い鉄骨でできた延長パーツ)を追加。そうすることで限界を超える吊り上げ高さが実現する。
その負荷を支えるのが補強用のワイヤーだ。Y字型のワイヤーがブームのたわみを抑え、吊り上げ能力を大幅に強化する。
こうした工夫により、最大吊り上げ能力1,200トンという驚異のスペックを実現。
実際の風車現場では、50~70トンの部材を100 m超まで吊り上げる運用が中心。なお作業時にひっくり返らないよう、安定のために背負う重り(カウンターウェイト)は 200トンほどになるそう。
不整地で強風と抗い巨大なパネルを積み上げる神経戦
風車の支柱は、筒を縦に割ったような型の巨大なコンクリートパネルを積み上げて作られる。
地面は平坦ではなく、風も強い。オペレーターの指先1ミリの動きが、先端では20~30センチの揺れになるため、作業はまさに神経戦。
わずかでもずれれば即やり直しだが、焦れば事故につながる。静かに見える光景も、実際には緊張感で張りつめる。
世界一高い陸上風力タービンの建設にもヘラクレスが
2025年6月公開のこちらの動画では、ドイツでLTM11200‑9.1が、世界最大級の風車の支柱(風車の中心までの高さ178m)を組み上げる様子がとらえられている。
この風車は、完成すれば総高さ約246.5mの「世界一高い陸上風力タービン」となる。
支柱を構成する巨大な高強度コンクリートパネルを1段ずつ組み合わせる緊張の瞬間、風の揺れを計算に入れながら指先でミリ単位で制御するオペレーターもすごい。
だが今回は風車がさすがに高すぎて、工事が進むにつれヘラクレスでさえ届かなくなる瞬間が訪れた。
そこで自昇式タワークレーン”にバトンタッチ。
このタワーは数週間後に完成、それから数カ月以内に風車全体が稼働する。
作業員たちは、巨大構造物を組み上げる達成感を語り、このプロジェクトによって新たな世界記録が樹立された。
にしてもスケールの大きさよ。こんな巨大クレーンの出番があること自体に目を疑うが、それより大きな風車があることにもびっくりだ。
ヘラクレスといえば、ギリシャ神話でゼウス(最高神)と人間の間に生まれた半神の英雄だけど、よく考えると、この現場では、巨大風車を建てるヘラクレスを指先で操るオペレーターが最高神ってことになるのかな。
References: Liebherr[https://www.liebherr.com/en-us/mobile-and-crawler-cranes/mobile-cranes/ltm-mobile-cranes/ltm-11200-9-1-4407347]











