イギリスのブリストル大学の研究チームが、約2億1500万年前の新属新種のワニ形類を特定した。
このワニは現代のワニのように泳ぐのではなく、細長い脚で陸上を素早く走ることに特化した、三畳紀後期の乾燥した高地に適応した陸生ハンターだ。
古代のワニの祖先が現代からは想像できないほど多様に進化していたことを示しており、大量絶滅が起きる前の生態系を知る上で非常に重要な発見となった。
この査読済みの研究成果は『The Anatomical Record[https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ar.70162]』(2026年2月12日付)に掲載された。
現代のワニとは異なる「ワニ形類」の世界
今回発見されたのは、ワニ形類(ワニ形上目)というグループに属する新属新種だ。
これは現代のワニだけでなく、すでに絶滅してしまったその親戚たちをすべて含む大きな分類を指している。
現代のワニは水辺で待ち伏せをする姿が一般的だが、2億年以上前のワニ形類には、恐竜のように二本脚で立つものや、今回のように陸を全力で走るものなど、驚くほど多様な姿をした種が存在していた。
現代のワニは長い進化の歴史の中で生き残った一つの形に過ぎず、かつては全く別の姿をしたワニの親戚たちが陸上を支配していた時代があったのだ。
半世紀以上別の属だと思われていた化石
今回の新属新種が特定されるまでには、半世紀以上の年月が必要だった。
もととなる化石は1969年にイングランド南西部の採石場で発見されたが、当時はテレストリスクス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%B9]という別のワニ形類の属に含まれると考えられていた。
テレストリスクスも細長い脚を持つ陸生の種だったため、一見しただけでは区別がつかず、疑われることなくブリストル市立博物館のコレクションとして保管され続けていた。[https://www.nhm.ac.uk/]
一度名前が付けられた標本が詳細に調べ直される機会は滅多にないが、ブリストル大学の博士課程でワニ形類の進化を研究していたイーワン・ボーデンハム氏の執念が、この化石の運命を変えた。
最新技術で見抜いた13箇所の決定的な違い
ボーデンハム氏は、自身の研究テーマであるワニ形類の系譜を正確に把握するため、既存の標本を一つひとつ詳細に見直していた。
その過程で、ある一つの化石だけが、他のテレストリスクスとは手首の骨の形や前肢の比率がわずかに異なっていることに気づいた。
ボーデンハム氏はこの違和感の正体を突き止めるため、最新のCTスキャン技術を導入し、岩石に埋まった骨の内部まで精密な解析を行った。
その結果、既知の種とは明らかに異なる13箇所の相違点が見つかり、既存のどの属にも当てはまらない新属新種であることが証明された。
研究チームはこの個体をサルトポスクス科の新属新種、ガラハドスクス・ジョーンズイ(Galahadosuchus jonesi)と命名した。
「爬虫類のグレイハウンド」と称される疾走能力
ガラハドスクス・ジョーンズイは、全長約1mと小柄な体格で、その最大の特徴は現代のワニとは根本的に異なる「直立姿勢」にある。
現代のワニは四肢を体の真横に突き出し、腹を地面につけて這うように移動するが、ガラハドスクス・ジョーンズイは脚を体の真下へと垂直に伸ばす骨格を持っていた。
この骨格は、細身で引き締まった体つきと相まって、研究者から「爬虫類のグレイハウンド(足の速い狩猟犬の一種)」と称されるほどの高い走行能力を可能にしていた。
手首や足首の関節も、泳ぐための柔軟性ではなく、走行時の衝撃に耐え、力強く地面を蹴るための頑丈な構造に進化していた。
乾燥した高地の硬い地面を敏捷に駆け回る、陸上移動に特化した進化がこの骨格に現れている。
名前の由来
新しく命名された属名のガラハド(Galahadosuchus)は、アーサー王伝説に登場する高潔な騎士ガラハドに由来する。
腹ばいにならずに背筋を伸ばして直立し、堂々と歩くこのワニ形類の姿勢が、背筋を伸ばして立つ騎士の姿を連想させたという。
また、種小名のジョーンズイ(jonesi)は、ボーデンハム氏の恩師で物理教師のデビッド・リース・ジョーンズ氏への敬意を表したものだ。
ジョーンズ氏が科学の面白さを説き、ボーデンハム氏の探究心を育てたことが、55年の時を経て新属新種を発見するという学術的な成果へと結びついた。
大量絶滅前に栄えた多様な生態系
ガラハドスクス・ジョーンズイが生きた時代は、三畳紀・ジュラ紀大量絶滅という地球規模の環境激変が起きる直前にあたる。
当時の地層からは、初期の恐竜であるテコドントサウルス[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9]や最古のトカゲの一種とされるクリプトバラノイデス(Cryptovaranoides[https://en.wikipedia.org/wiki/Cryptovaranoides])など、多種多様な生物の化石が見つかっている。
これら遺骸は、雨水によって地面の割れ目である裂け目堆積物に流れ込み、迅速に土砂に覆われることで三次元的な構造を保った状態で保存された。
今回の発見は、ワニ形類が過酷な時代を前に、現代の姿からは想像もつかないほど多様な姿勢や生態を持って陸上の生態系を築いていた事実を明らかにしている。
References: Nhm.ac.uk[https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2026/february/new-species-ancient-crocodile-named-after-welsh-school-teacher.html] / Onlinelibrary.wiley.com[https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ar.70162]











