180年前に絶滅したフロレアナゾウガメの血統を再導入。混血個体から遺伝子を復元する試み
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 南米エクアドル沖に浮かぶガラパゴス諸島。大陸と一度も陸続きになったことがないこの地は、独自の進化を遂げた動植物の宝庫だ。

 この諸島の南端に位置するフロレアナ島では、19世紀半ばに、かつてこの島の主であった「フロレアナゾウガメ」が絶滅し、姿を消してしまった。

 しかし2026年2月、エクアドル政府および関係機関による長期的な繁殖プログラムが実を結び、かつての固有種の遺伝子を色濃く受け継ぐ、若いゾウガメ158頭が、180年ぶりにこの島へ再導入された。

他島に残された「混血個体」から遺伝子を特定

 今回フロレアナ島に放流された158頭は、厳密には純血種ではなく、絶滅種の遺伝子を40%から80%の割合で保持している「混血個体(ハイブリッド)」から選抜された個体群である。

 もともとこの島には、フロレアナゾウガメ(Chelonoidis niger niger)という固有種が生息していた。

 しかし、1850年頃までに人間による乱獲や外来種の影響で絶滅したと考えられてきた。

 ところが、2000年代初頭の調査により、別の島であるイサベラ島のウルフ火山周辺に、このフロレアナゾウガメの血統を持つ個体が生存していることが判明した。

 これは、19世紀に捕鯨船が食料として捕らえたカメを、航海の途中でイサベラ島に放逐したことが原因と推測されている。

 これらの個体が現地の種と交配し、絶滅したはずの遺伝子が他島で混血という形で生き残っていたのだ。

 ガラパゴス国立公園局(GNPD)は、これらの個体をサンタクルス島の繁殖施設「ファウスト・リェレナ」に集め、選択的な交配を繰り返すことで、フロレアナゾウガメの形質をより強く引き継ぐ個体群を育成してきた。  

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険しい地形を越えてゾウガメを運ぶ大規模作戦

 再導入当日には、現地で大規模な運搬作戦が展開された。

 ガラパゴス国立公園のレンジャーや協力組織のスタッフらが、158頭のゾウガメをリリース地点まで運ぶ大役を担った。

 一行は、火山性特有の険しい地形や、人跡未踏に近いアクセスの難しい地域を含む約7kmの道のりを移動。ゾウガメたちを慎重に目的地まで運び届けたという。

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ゾウガメの再導入による生態系機能の回復

 今回の再導入の主目的は、ゾウガメが本来担っていた生態系における役割を復活させることにある。

 ゾウガメは植物を摂取し移動することで、島の環境を維持する機能を果たしている。

 チャールズ・ダーウィン財団のラカン・ザハウィ局長は、フロレアナ島にゾウガメを戻す意義について次のように説明している。

ゾウガメの生息地は、生物多様性の基盤となります。彼らはこのシステムの中核的存在であり、種子を散布し、植生を形作り、泥浴び場のような生息環境を生み出すことで景観の再生に影響を与えます。

ゾウガメの活動を通じて、他の多くの野生生物が依存する生態学的プロセスを再構築する助けとなるのです

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 放流された158頭は8歳から13歳の個体で、施設の責任者フレディ・ビリャルバ氏は、今回放したゾウガメの成長段階について、次のように説明する。

これらの個体はすでに十分な大きさに成長しており、ネズミやネコといった人為的に持ち込まれた動物から自分で身を守ることができます

 また、今回のプロジェクトに先立って、長期にわたる検疫や寄生虫の駆除、計測、マイクロチップの埋め込みなど、個体ごとの準備も進められた。

 ガラパゴス国立公園のディレクター、ロレナ・サンチェス氏はこう語っている。

このプロジェクトは、ガラパゴス国立公園がこれまで取り組んできた中でも、最も大きな挑戦の1つです。

長年にわたる科学に基づいた継続的な取り組み、つまり厳密な調査と忍耐を要する作業を経て、今回ゾウガメが戻ってきたことは、フロレアナ島の生態系が本来持っていた機能を回復させるという、長期的な修復ビジョンの成果を示しています

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プロジェクトはまだ始まったばかり

 フロレアナ島のコミュニティ代表、ベロニカ・モラさんは、島にゾウガメが戻ってくることを「夢がかなった」と喜んでいる。

何世代にもわたって、フロレアナはゾウガメのいない島でした。彼らの帰還は、地域社会が主導し、多くのパートナーが同じ目的のもとに結集したとき、何が可能になるのかを示しています。

この瞬間は、保全と地域コミュニティの暮らしが手を取り合う、未来に向けた重要な一歩となるものです。

なぜなら観光業から農業、漁業に至るまで、私たちの生活は、この島の健全さにかかっているのですから

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 一方で、島に戻ってきたゾウガメが直面する課題も報じられている。

 彼らはブラックベリーやグアバといった外来植物、外来動物とも向き合っていかなければならない。

 人間によって島に持ち込まれた外来種は、島に戻ってきたゾウガメにとって、潜在的な脅威となりうるのだ。

 国立ガラパゴス公園とともにフロレアナ島のゾウガメ再導入を主導してきたガラパゴス・コンサーバンシー[https://www.galapagos.org/]の会長兼CEO、ウーゴ・モゴジョン氏はこう述べている。

今回のゾウガメの再導入は、長年にわたる遺伝学研究と保全分野での協力の集大成です。

ウルフ火山でフロレアナの血統を持つゾウガメを特定し、その子孫を繁殖させることで、私たちはこの種を元の系統を忠実に反映した形で島へと戻しています。

これはフロレアナの生態系を回復し、将来的にほかの在来種を再導入するための、極めて重要な科学的土台となるでしょう

 今回導入された158頭は、このプロジェクトの最初の一歩だという。今後は段階的に導入を進め、最終的には700頭のゾウガメを再導入する計画があるそうだ。

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References: Por primera vez en más de un siglo, Isla Floreana vuelve a tener tortugas gigantes gracias a las políticas de conservación del Gobierno de Daniel Noboa[https://www.ambienteyenergia.gob.ec/por-primera-vez-en-mas-de-un-siglo-isla-floreana-vuelve-a-tener-tortugas-gigantes-gracias-a-las-politicas-de-conservacion-del-gobierno-de-daniel-noboa/]

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