ドイツの古墳から出土した3400年前の青銅器時代の剣に、当時の常識を超える技術が隠されていた。
保存状態が極めて良い青銅製の剣を、ドイツの科学者らが最新の機器で分析したところ、尿を用いた化学反応で装飾を黒く染め上げ、模様を鮮やかに際立たせるという極めて高度な技法で作られていたことがわかった。
古代の職人たちは、美しさを追求するために素材の性質を巧みに利用した匠の技を持っていたのだ。
3400年前の精巧な剣
2023年、ドイツ南部のネルトリンゲン近郊で、バイエルン州歴史遺産保護局の考古学チームが、青銅器時代の古墳から、男女と子供の遺骨とともに、数多くの工芸品を発見した。
その中で特に際立っていたのが、握り(柄)の断面が八角形という、当時の高度な鋳造技術を要する形状の、極めて保存状態の良い青銅製の剣だった。
この剣は3400年以上前のものだが、刃には金属特有の光沢が残り、当時の鋭さが伝わってくるかのような状態を保っていた。
刃にぶつかったような跡がないことから、実戦用ではなく、所有者の地位を示す儀式用のものだった可能性が高いという。
柄にはジグザグの溝模様が刻まれ、柄頭(つかがしら)には「象嵌(ぞうがん)」と呼ばれる、金属の表面を彫って別の素材をはめ込む技法によって、複雑な幾何学模様が施されていた。
最新の3Dスキャンで当時の高度な技術が明らかに
保護局のヨハン・フリードリヒ・トルクスドルフ氏らは、この剣の精巧な作りを解明するため、ヘルムホルツ・センター・ベルリンのニコライ・カルジロフ氏や、連邦材料試験研究所(BAM)のマーティン・ラトケ氏らを中心とする、材料科学のスペシャリストに分析を依頼した。
物体を傷つけずに内部を可視化する、高解像度のコンピューター断層撮影(CT)とX線回折で剣を「透視」した結果、外側からは見えない緻密な作りが明らかになった。
剣の刃は、持ち手(柄)の内部まで深く差し込まれ、特殊な鋲(びょう)によって寸分の狂いもなく固定されていた。
3400年前の職人が、強固に組み上げるために注いだ驚異的な技術の跡が、最新の解析技術で明らかとなった。
尿を利用した色彩の演出
研究チームはさらに、柄頭の象嵌にどのような金属が使われているかを分析した。
HZBにある「シンクロトロン(円形加速器)」という巨大施設から放たれる強力な放射光を照射し、原子レベルでの分析を行ったところ、当初スズだと思われていた装飾の正体は、極めて細い「銅線」であることが判明した。
金色の青銅の上に赤い銅線をはめ込むだけでは、模様は際立たない。
そこで当時の職人は、人間の尿などに含まれるアンモニア成分を用いて、あえて銅を黒く変色させる「パティナ(Patina)加工」を施した可能性があるという。
本来なら長い年月をかけて現れる金属の「くすみ」を、化学反応を使って意図的に作り出したのだ。
こうして下地を黒く染めることで、黄金色の青銅との鮮やかなコントラストを生み出し、幾何学模様を美しく際立たせていた。
素材の性質を理解し、デザインに組み込むという古代の卓越した技法が示されている。
ドイツの名剣の全貌に迫る
この特徴的な八角形の柄を持つ剣は、当時の主要な製作拠点であったドイツ南部の工房で作られたものと推測されている。
研究チームは現在、金属の内部組織をさらに詳しく分析し、古代の職人がどのような手順でこの名剣を仕上げたのか、その詳細な解明を進めている。
ベルリンの研究チームによる分析は、この剣が当時の金属加工において極めて高い技術水準にあったことを裏付けた。
3400年前の鍛冶技術は、現代の科学者が最新設備を駆使してようやくその全貌が見えるほど高度なものだったのだ。
References: Adlershof[https://www.adlershof.de/en/news/fascinating-archaeological-find-becomes-a-source-of-knowledge] / Helmholtz Berlin[https://www.helmholtz-berlin.de/pubbin/news_seite?nid=32626&sprache=en&seitenid=1]











