インドネシアのアチェ州で、巨大な陥没穴が開き、深刻な事態を招いている。
この地域はもともと地盤が不安定だったが、2025年11月に発生した大洪水によって土砂の崩落が急速に進行し、2026年2月現在の面積は約3万平方mに達した。
地質調査の結果、地下水が土壌を削り取る地下浸食が原因であると判明した。
現在も崩壊の範囲は広がっており、周辺の公共施設や集落に甚大な被害を及ぼしている。
2000年代初頭から確認されていた地盤の変動
アチェ州中央アチェ県ケトル地区ポンドック・バレク村の陥没穴は、短期間で形成されたわけではない。
地元住民の証言によれば、地面の亀裂やわずかな沈下といった地盤の変動は、2000年代初頭からすでに始まっていたという。
地表に大きな穴が開く前から、地下では目に見えない土砂の流出が長期間続いていた。
アチェ州エネルギー鉱物資源局は、この陥没穴そのものの面積に加え、周囲で発生した地割れや地盤沈下によって安全に住むことが不可能になった範囲を「被害面積」として継続的に観測してきた。
2011年時点で約7000平方mだったこの範囲は、2021年に20199平方m、2022年に28000平方mと、十数年かけて段階的に拡大している。
大洪水が引き金となり巨大陥没穴に
長年かけて地下に生じていた空洞が、決定的な崩壊に至ったのは2025年11月の記録的な大洪水によるものだ。
大量の雨水が地中に浸透し、土壌の保持力が限界を超えた。
この洪水をきっかけに、それまで点在していた複数の陥没箇所や地割れが、周囲の地盤を巻き込みながら一気に連結した。
2026年初頭の調査では、被害面積は30172平方mを記録した。
この陥没穴は一般的な形状とは異なり、崩れた崖の側面がさらなる地滑りを誘発したことで、幅が広く長く伸びた峡谷のような姿になっている。
崖の深さは40mから50mに達し、今もなお南東方向へ拡大を続けている。
地下浸食を引き起こすパイピング現象の仕組み
アチェ州地質・地下水部門長のイクラス氏は、この現象の正体がパイピング現象と呼ばれる地下浸食であることを指摘している。
パイピング現象とは、地中の地下水が土の中にパイプ状の水の通り道を作り、内側から土壌を削り取っていく現象を指す。
外からは見えない場所で地下の空洞化が進み、そこへ洪水などの外部要因が加わることで、地表が一気に崩落する。
今回の巨大な裂け目は、この長期的な地下浸食と、大洪水による急激な負荷が重なったことで発生した。
火山灰の地層と人為的な漏水の影響
被害を拡大させている要因の一つに、この地域特有の脆弱な地質がある。
一帯の土壌は、グルドン(Gereudong)火山の過去の活動によって堆積した火山灰や砂で構成されている。
この堆積物は隙間が多く、水分を含むと極めて脆くなる性質を持つ。
さらに、人為的な要因も無視できない。
現場付近の農業用灌漑水路が防水処理されておらず、そこから常に地中へ水が漏れ出しており、この継続的な漏水が、脆い土壌を内側から破壊し続ける一因となっている。
住民の生活を脅かす深刻な被害
拡大を続ける陥没穴は、すでに周辺の道路や公共施設、多くの民家を飲み込もうとしている。
アチェ州政府はさらなる崩落の危険があるとして、対象地域の住民に対して緊急の避難を呼びかけている。
一度バランスを崩した地質構造を元に戻すのは極めて困難であり、監視体制の強化とともに、これ以上の浸食を防ぐための抜本的な排水対策が急務となっている。
この報告は、アチェ州エネルギー鉱物資源局および現地の地質調査報告(2026年2月付)[https://studylib.net/doc/28253903/laporan-kajian-geologi-untuk-gerakan-tanah-di-desa-pondok...]の内容に基づいている。
References: Kompas[https://www.kompas.id/artikel/en-lubang-raksasa-di-aceh-tengah-pergerakan-tanah-yang-terus-mengancam]











