南極には「重力穴」がある。3000万年前に急成長した謎を解明
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 南極には、周囲に比べて重力が極端に弱い重力の穴が存在する。本来、極地は地球上で最も重力が強くなる場所だが、なぜ南極にこのような地点があるのかは長年の謎だった。

 フロリダ大学の研究チームが世界各地の地震データを解析したところ、今から約5000万年前に始まり、3000万年前にピークを迎えたマントルの大移動によって、重力の穴が急成長していたことが判明した。

 この地質学的な変動により発生した重力の変化が、南極を厚い氷で覆うきっかけになった可能性もあるという。

南極に存在する重力が弱い地点「重力の穴」の謎

 地球は完璧な球体ではなく、内部の密度が場所によって異なるため、地表にかかる重力の強さにもわずかな差が生じている。

 一般的に、地球の自転による遠心力の影響で、赤道付近の重力は弱くなり、北極や南極といった極地では重力が強くなる。

 しかし、南極大陸のある特定の場所では、周囲と比較して重力が極端に弱くなっている。

 このように重力の値が周囲より大きく落ち込んでいる領域を「重力の穴(グラビティ・ホール)」と呼ぶ。

 面積の広さではインド洋にある重力の穴が世界最大だが、南極の穴は重力の値が低下する度合いがより急激だ。

 南極の重力の穴は、本来重力が強くなるはずの場所で起きている異常事態として、科学者の注目を集めてきた。

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世界各地の地震データから地球内部を調査

 フロリダ大学のアレッサンドロ・フォルテ教授らの研究チームは、この重力の穴が生まれた原因を調べるため、過去数十年にわたって記録された世界中の地震データを分析した。

 地震波が地球内部を伝わる速度は、通り道の温度や岩石の密度によって変わる。

 研究チームはこの性質を利用して、地球内部を立体的に透視するモデルを作り上げた。

 分析の結果、南極の重力の穴がある地点の真下には、周囲よりも温度が高く、密度の低い岩石が大量に存在していることが分かった。

 地下にある物質が軽いために、地表の物体を下に引っ張る力である重力が弱くなっていた。

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3000万年前にピークを迎えたマントルの大移動

 解析モデルを用いて過去の変動を再現すると、南極の重力の穴は7000万年前から存在していたことがわかった。

 ところが、今から約5000万年前に地球内部で始まった変化が、3000万年前にかけてこの穴を急激に成長させていたことが判明した。

 この期間、地球の内部では高温のマントルが南極の地下に向かってゆっくりと移動していた。

 この巨大なマントルの流れが、南極の地下にあった重い岩石を押し退け、より軽くて高温な物質を運び込んだ。

 約3000万年前にマントルの移動がピークを迎えたことで、地表の重力を弱める力が最大になり、重力の穴が急成長を遂げたのだ。

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重力の変化が南極の氷河化を招いた可能性

 重力の穴が急成長した時期は、南極大陸が冷え込み、大陸全体が巨大な氷の層に覆われ始めたタイミングと重なっている。

 重力が弱まると海水の引きつけ方が変わるため、海面の高さや陸地の標高など、地形にも影響が出る。

 研究チームは、重力の穴による地形の変化が、南極の気候を劇的に変えたと考えている。

 地球内部のマントルの動きが重力を変え、結果として南極を氷の王国へと変容させる要因の1つとなったというのだ。

 この発見は、地質活動が数千万年という時間をかけて、地球全体の気候を形作ってきたことを示している。

 この研究成果は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-025-28606-1]』(2025年12月19日付)に掲載された。

References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41598-025-28606-1] / Scitechdaily[https://scitechdaily.com/whats-causing-antarcticas-strange-gravity-hole-scientists-finally-solve-the-mystery/] / Popsci[https://www.popsci.com/environment/gravity-hole-antarctica/]

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