ウィーン工科大学の研究チームが、細菌よりも小さな世界最小のQRコードを開発し、ギネス世界記録を更新した。
面積はわずか1.98平方μmで、髪の毛の断面に数千個も並べられるほど極小だ。
耐久性に優れたセラミックの薄い膜に情報を刻むことで、数千年にわたる長期保存を可能にした。
人類の知識を安全に未来へ残す、次世代の記録技術として期待されている。
大腸菌よりも小さなQRコードが誕生
ウィーン工科大学[https://www.tuwien.at/en/tu-wien/news/news-articles/news/weltrekord-der-kleinste-qr-code-der-welt]の研究チームは、ドイツの企業Cerabyte[https://www.cerabyte.com/]社と協力し、これまでで最も小さなQRコードの作成に成功した。
このQRコードの面積はわずか1.98平方μm(マイクロメートル)で、体内に存在する一般的な細菌である大腸菌(長さ約2μm)の側面よりも小さく、光学顕微鏡ではその姿を確認することすらできないほど極小だ。
この成果はギネス世界記録として正式に認定[https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/626800-smallest-qr-code]された。
これまでの世界記録は、ドイツのミュンスター大学が保持していた5.38平方μmだったが、今回のコードはその37%という驚異的なサイズまで縮小されている。
マイクロメートル単位の構造を作ること自体は、現代の技術では決して不可能ではない。
しかし、これほど小さなサイズでありながら、情報を失わずに長期間維持し、なおかつ正確に読み取れる状態に保つことは高度な技術が必要だ。
数千年の時に耐える「物理的な彫り込み」
この技術は、現在のデジタル保存が抱える寿命の短さという課題を解決するものだ。
現在主流の磁気や電子によるデータ保存媒体は、数年から数十年で情報が失われるリスクがある。
そのため、情報を守るには常にエネルギーを投入して冷却し、定期的に別の装置へデータを移し替え続けなければならない。
一方、今回の技術では、シリコンの土台の上に、非常に安定したセラミックの薄い膜を重ねたものを使用している。
このセラミックは、工業用ドリルの保護に使われるほど硬く、日光や酸素による劣化もほとんどない。
この強固な膜に情報を直接彫り込むことで、保存中のエネルギーを一切使わずに、数千年にわたって情報を維持できる。
書き込みには「集中イオンビーム(FIB)」を使用し、膜の表面を1ピクセルあたりわずか49nm(ナノメートル)という細かさで削り取った。
現代の科学では、物質を作る最小の粒である「原子」を1個ずつ並べて模様を作ることも可能だ。
しかし、それでは粒が動いてしまい、情報の形を保つことができない。
そこで研究チームは、強固なセラミックの膜を物理的に削り取る手法をとった。
砂粒を並べて絵を描くのではなく、硬い岩に文字を刻むような方法を選んだため、データが消えるリスクを回避し、劣化のスピードを極限まで遅らせることに成功したのだ。
未来へ知識を繋ぐ地球に優しい記録技術
この新技術は、増大し続ける世界のデータ保存問題に対する現実的な解決策でもある。
A4用紙1枚ほどの面積があれば、2TB(テラバイト)以上のデータを記録できる圧倒的な保存密度を誇る。
現在、世界中のデータセンターは情報の維持や冷却のために膨大な電力を消費し、多量のCO2を排出している。
しかし、このセラミックの記録法は情報の保存に冷却も、稼働し続けるための電力も必要としない。
地球環境への負荷を最小限に抑えつつ、人類の膨大な知識を安全に守り続けることができる、次世代のクリーンなデータストレージなのだ。
読み取りには電子顕微鏡が必要だが、チームは将来的にこの技術を研究室の外でも利用できるよう、産業用の製造プロセスの開発を目指している。
地球環境に優しく、圧倒的な耐久性を持つこの極小コードは、人類の記録を未来へ届けるための架け橋となるだろう。
References: Tuwien[https://www.tuwien.at/en/tu-wien/news/news-articles/news/weltrekord-der-kleinste-qr-code-der-welt] / Guinnessworldrecords[https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/626800-smallest-qr-code]











