カイパーベルトに存在する雪だるま天体の謎を解明、重力崩壊が原因
雪ダルマ型天体、アロコスのイメージ図 Image credit:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research

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 海王星の外側に広がる円盤状の領域「カイパーベルト」には、2つの球体がくっついた雪だるまのような天体が数多く存在する。

 アメリカのミシガン州立大学の研究チームは、この奇妙な形がどのようにして形成されたのかを解き明かした。

 それは、重力崩壊というシンプルなプロセスによって形成されたという。

 最新のコンピューターシミュレーションにより、物質の雲が分裂して誕生した2つの天体が形成され、長い時間をかけてゆっくりと接触し、融合する様子を再現することに成功したのだ。

カイパーベルトに漂う「雪だるま」の正体

 海王星の軌道のさらに外側、太陽から約45億kmから75億km(30~50au)も離れた宇宙の果てには、カイパーベルトと呼ばれる広大な領域が広がっている。

 ここは太陽系が誕生した当時の氷の天体や塵が密集したドーナツ状の領域だ。

 太陽から遠く極低温であるため、45億年前の材料がそのまま冷凍保存されているタイムカプセルのような場所でもある。

 この領域には、惑星の材料となる直径数kmから数十kmの小さな天体である微惑星が無数に存在する。

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 不思議なことに、これらの微惑星のうち約10%が、2つの膨らんだ部分を持つ接触連星という形態をしている。

 接触連星とは、別々に誕生した2つの天体が重力で引き合い、最終的に表面が触れ合って一体化したもののことだ。

 この代表的な例が、2014年に発見された2014 MU69、通称アロコス(Arrokoth)だ。

 40億年以上前の原始的な姿を留めるアロコスは、2019年にNASAの探査機ニュー・ホライズンズによって詳細に観測された。

 その画像には、細い首のような部分でつながった2つの大きな塊が鮮明に映し出されていた。

 なぜこれほど壊れやすい構造が、10個に1個という高い割合で存在するのか。その理由を説明することは、これまでの天文学において大きな課題であった。

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物理法則で再現された雪だるま型の形成

 これまでの理論では、特殊な条件下の衝突によってこれらの形状が作られたと考えられてきた。

しかし、従来のコンピューターモデルでは、衝突する天体を流体として扱っていたため、合体すると1つの球体になってしまい、雪だるまのような形を再現できなかった。

 そこでミシガン州立大学の大学院生ジャクソン・バーンズ氏ら研究チームは、物体の構造的な強度を維持できる現実的な物理法則を組み込んだ新しいシミュレーションを開発した。

 大学の高性能コンピューティング施設(ICER)を活用したこのモデルにより、天体同士が合体しても形が崩れず、互いに寄り添うように固定される様子を初めて再現することに成功したのだ。

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重力崩壊が「双子の天体」を合体させた

 研究チームが導き出したプロセスは、太陽系初期のガスや塵の円盤の中で始まった。

 物質の雲が自らの重さで耐えきれずに中心へ向かって一気に潰れる重力崩壊の際、回転する雲が2つに分裂し、互いの周りを回るペアの天体が誕生することがある。

 この双子の天体は、長い年月をかけて少しずつ距離を縮めていく。

 シミュレーションの結果、これらは最終的に極めてゆっくりとした速度で接触し、それぞれの丸い形状を保ったまま融合することが示された。

 ミシガン州立大学、地球環境科学のセス・ジェイコブソン教授は、重力崩壊という宇宙で普遍的に起こる現象こそが、観測される統計データと見事に一致すると指摘している。

 バーンズ氏のシミュレーションは、この長年の仮説を確かな方法で検証した最初のものである。

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カイパーベルトの特殊な環境が雪だるまの形を保っていた

 一度合体した雪だるま型の天体が、なぜ数十億年もの間バラバラにならずに済んだのか。

 その答えはカイパーベルトの特殊な環境にある。

 この領域は天体の密度が極めて低く、他の物体と衝突する機会がほとんどない。

 太陽系の内側のような激しい破壊の力が働かないため、脆い接合部分を持つ天体でも、誕生した当時の姿をそのまま維持できたのだ。

 実際、アロコスの表面には激しい衝突の跡であるクレーターがほとんど見当たらない。

 単純に、他の天体がそれらを切り裂くほどの力で衝突しなかったのだ。

 今回の研究成果は、3つ以上の天体が関わるさらに複雑なシステムの解明にもつながると期待されている。

 この査読済みの研究成果は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society[https://academic.oup.com/mnras/article/546/4/stag002/8488819]』誌(2026年2月19日付)に掲載された。

References: Academic.oup.com[https://academic.oup.com/mnras/article/546/4/stag002/8488819] / Ras.ac.uk[https://www.ras.ac.uk/news-and-press/research-highlights/why-some-objects-space-look-snowmen]

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