人類が宇宙で持続可能な活動を行うためには、現地で資源を確保する「自給自足」が不可欠だ。
そこで注目されているのが、微生物の力で岩石から金属を取り出すバイオマイニングという技術である。
米コーネル大学と英エディンバラ大学の共同研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)で実験を行い、地球から運んだ微生物が、無重力の環境下でも隕石からパラジウムなどのレアメタルを安定して抽出できることを証明した。
宇宙での資源採掘を微生物が担う、そんな未来が来るのかもしれない。
この査読済みのこの研究成果は『npj Microgravity[https://www.nature.com/articles/s41526-026-00567-3]』誌(2026年1月30日付)に掲載された。
宇宙探査の課題を解決する小さな相棒「微生物」
人類が月や火星など、地球から遠く離れた場所で活動を続けるためには大きな壁がある。
それは、水や食べ物、燃料、そして材料となる金属をどうやって手に入れるかという問題だ。
これらをすべて地球からロケットで運ぶには、天文学的な費用がかかってしまう。
そこで考えられたのが、宇宙にある隕石や小惑星を資源の山として活用し、現地で必要なものを手に入れる自給自足のアイデアだ。
宇宙での採掘作業において、意外な助っ人として期待されているのが微生物だ。
微生物を使って岩石から金属を取り出す技術は、バイオマイニング(生物採掘)と呼ばれている。
これは、一部の微生物が岩石を溶かし、その中に含まれる金属を放出させる性質を利用したものだ。
国際宇宙ステーションで行われた世界初の隕石採掘実験
エディンバラ大学とコーネル大学の研究チームは、岩石を溶かす成分を作り出すのが得意な2種類の微生物を実験に選んだ。
1つはスフィンゴモナス・デシカビリス(Sphingomonas desiccabilis)という細菌、もう1つはペニシリウム・シンプリシシマム(Penicillium simplicissimum)という真菌で、アオカビに近い仲間だ。
これらの微生物は、すでに地球で銅や金などを取り出すのに使用されている。
宇宙でも微生物が働いてくれるかを確かめるため、国際宇宙ステーション(ISS)で特別な実験が行われた。
実際の作業を担当したのは、ISSに滞在していたNASAのマイケル・スコット・ホプキンス宇宙飛行士だ。
ホプキンス宇宙飛行士は、本物の隕石の破片を専用の装置に入れ、無重力の中で微生物がどれだけ金属を掘り出せるかをテストした。
同時に研究チームは地球上でも同じ実験を行い、重力があるときとないときで、結果にどんな違いが出るのかを比べた。
無重力でも安定して金属を回収
重力のない宇宙空間では、微生物を使わずに化学薬品だけで金属を溶かそうとすると、地球よりも効率が悪くなってしまう。
ところが実験の結果、そこに微生物を加えると、無重力であっても地球と同じレベルの効率で金属を抽出できることがわかった。
特に真菌のペニシリウム・シンプリシシマムは、パラジウムや白金といった貴重なレアメタルを回収する能力がとても高いことが証明された。
宇宙モードに切り替えて活動する微生物たち
なぜ微生物は、宇宙という過酷な場所でもしっかり働けたのだろうか。
詳しく調べたところ、宇宙に連れて行かれた微生物は、自分の体の中の化学反応を宇宙モードに切り替えていたことがわかった。
なんと彼らは、無重力で金属が溶けにくいという弱点を補うために、金属を溶かす成分を地上にいるときよりも多く作り出していたのだ。
重力がないという宇宙の不利な条件を、微生物が自らの活動でカバーしていたのである。
地球の未来にも役立つ新しい技術
今回の論文著者である、コーネル大学のローザ・サントマルティーノ助教は、この技術が宇宙だけでなく、地球の環境を守ることにも役立つと考えている。
資源が残り少ない場所や、これまでは効率が悪くて捨てられていた鉱山のゴミから、微生物の力で貴重な金属を回収できるからだ。
宇宙という究極の場所で証明された微生物のパワーは、人類が星々へ進出するための助けになるだけでなく、地球の資源を大切に使うための有望な採掘者になってくれるかもしれない。
References: Nature[https://www.nature.com/articles/s41526-026-00567-3] / Cornell.edu[https://news.cornell.edu/stories/2026/02/microbes-harvest-metals-meteorites-aboard-space-station]











