塩粒ほどのマイクロロボットの大群が、渦を利用して自重の4万5千倍の物体を動かすことに成功
Image credit:<a href="https://is.mpg.de/news/magnetic-microrobot-swarms-enable-contactless-manipulation-of-objects-through-fluidic-torque" target="_blank" rel="noreferrer noopener">MPI-IS</a>

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 塩の粒ほどの小さなロボット集団が、液体の中で、自重の4万5000倍も重い物体を、一切触れずに動かすことに成功した。

 ドイツを中心とする国際研究チームは、磁場で回転するマイクロロボットが液中に作り出す「渦」の力を利用し、非接触で物体を自在に操る新技術を開発した。

 この技術は、直接触れると壊れてしまうほど繊細な部品の組み立てや、血管内の詰まりを取り除く手術、患部へのピンポイントな投薬など、次世代の医療や精密製造分野に革命をもたらすと期待されている。

 この査読済み研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aea9947]』誌(2026年2月25日付)に掲載された。

磁力で回転する塩粒サイズの極小ロボット

 ドイツのマックス・プランク知能システム研究所、アメリカのミシガン大学、コーネル大学の国際研究チームは、磁石に反応する性質(磁性)を持つ小さなロボットを使い、物理的な接触を一切行わずに物体を操作する技術を発表した。

 このマイクロロボットは幅が0.3mmほどで、塩粒と同じくらいの大きさしかない。

 個々のロボットは小さな円筒形をしており、外部から磁場をかけると一斉に回転を始める仕組みだ。

 研究チームが磁場を通じて命令を送ると、ロボットたちは集団で動き、自分たちよりもはるかに大きな物体を回転させたり、構造物を組み立てたりすることができる。

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液体の中に渦を作り出し非接触で物体を操る

 この技術の最大の特徴は、ロボットが対象物に直接触れないことにある。

 水などの液体の中にあるロボットが回転すると、周囲の液体には微小な渦が発生する。

 ロボットが「集団」となって一斉に動くことで、個々の小さな流れが合わさり、流体トルク(流体を介して物体を回転させる力)と呼ばれる強力な力へと変化する。

 ミシガン大学のスティーブン・セロン氏は、これまでマイクロロボットの制御に用いられてきた「流体抗力(液体の流れが物体を押し流す力)」を応用し、離れた場所から物体をコントロールする仕組みを構築した。

 磁場の調整によってロボットの数や回転速度、配置を変えるだけで、対象物を動かす方向やスピードを精密に制御できる。

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自重の4万5000倍の重さを動かす検証実験

 研究チームが行った実験では、このマイクロロボット集団が驚異的な力を発揮することが証明された。

 わずか1体のロボットの質量と比較して、4万5000倍を超える重さがある3D物体を回転させることに成功した。

 非接触のメカニズムにより、ロボットたちは液中のギアを回したり、複雑な構造を組み立てたり、材料を運搬したりといった高精度な作業をこなす。

 さらに、ロボット集団はその場で回転するだけでなく、表面を這うように移動する状態へと切り替えるなど、環境や目的に応じて自律的に行動パターンを変化させる適応能力も備えている。

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血管内の治療や精密機器の組み立てへの応用

 この新技術は、特に医療やマイクロ製造業の分野で大きな進歩をもたらすと考えられている。

 将来的にマイクロロボット集団は、人間の血管内を自律的に移動し、動脈の詰まりを取り除いたり、体内で直接医療用インプラント(体内に埋め込む器具)を組み立てたりする役割を担う可能性がある。

 また、周囲の健康な細胞を傷つけることなく、デリケートな薬剤を特定の臓器へピンポイントに送り届けることも可能になる。

 物理的な接触を必要としないため、壊れやすい微細な電子部品の組み立てにも最適だ。ミクロの渦を利用したこの制御技術は、非侵襲的(手術のように体を傷つけない)な医療処置の実現に向けた重要な一歩となるだろう。

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References: Is.mpg.de[https://is.mpg.de/news/magnetic-microrobot-swarms-enable-contactless-manipulation-of-objects-through-fluidic-torque] / Science[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aea9947]

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