トリケラトプスの巨大な鼻は、熱を逃がして脳を冷やすための大切な役割を担っていた可能性が高いことが、東京大学の研究チームにより突き止められた。
陸上の動物で最大級の頭を持つトリケラトプスにとって、脳が熱くなりすぎるのを防ぎ、水分を保つ仕組みは欠かせないものだったと考えられる。
化石には残らない鼻の中の「柔らかい組織」がどう並んでいたのかを、まるごと予想して組み立てた世界で初めての研究成果だ。
この査読済みの研究成果は『The Anatomical Record[https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ar.70150]』誌(2026年2月7日付)に掲載された。
巨大な頭部を冷やす鼻の仕組み
もし現代にトリケラトプスがいたら、誰もが「なぜあんなに大きな頭をしているの?」と不思議に思うだろう。
東京大学総合研究博物館の多田誠之郎特任助教も、学生のころからトカゲやワニといった爬虫類の頭や鼻の進化を研究する中で、同じ疑問を持っていた。
トリケラトプスなどの角竜類は非常に珍しい鼻の形をしていたが、骨の化石だけでは、その中にどんな臓器が詰まっていたのかわかっていなかった。
そこで研究チームは、最新の検査機械を使い、今は失われてしまった鼻の中の様子を再現することに挑戦した。
鼻を通る独自の神経と血管のルート
研究チームは、トリケラトプスの頭の骨をCTスキャンしたデータと、今生きているワニやトカゲなどの爬虫類の鼻の知識を組み合わせて分析した。
その結果、トリケラトプスの鼻には他の爬虫類には見られない、特別な「配線」があることがわかった。
ふつうの爬虫類は、神経や血管がアゴを通って鼻の先に届くが、トリケラトプスは頭の骨の形が変わっていたためアゴの通り道がふさがっていた。
そのため、神経や血管は鼻の中の枝分かれした道を通る、独自のルートを選んで進化したと考えられる。
多田特任助教は、3Dプリンターで作った骨の破片をパズルのように組み立てる中で、この事実に気づいたという。
脳が熱くなるのを防ぐ仕組み
さらに研究チームは、鼻の中に「呼吸鼻甲介(こきゅうびこうかい)」という作りがあったという考えを発表した。
これは鼻の中にある薄いひだのようなもので、吸い込んだ空気と血液の間で熱をやり取りし、脳の温度をちょうどよく保ったり、水分が逃げないようにしたりするフィルターのようなものだ。
トリケラトプスにこの作りがあったと100%言い切れるわけではないが、恐竜の子孫である鳥の鼻にある「ひだの付け根」とそっくりな盛り上がりが、トリケラトプスの鼻の同じ場所に見つかっている。
また、トリケラトプスに近い仲間の恐竜たちを調べたところ、同じような特徴がいくつも見つかった。
こうした多くの証拠を合わせた結果、巨大な頭にこもる熱を逃がすために、鳥や人間と同じような冷却システムを持っていた可能性が高いと結論づけた。
角竜類の進化の謎を解くヒントに
トリケラトプスは、今から約6800万年前から6600万年前の「白亜紀」という時代の終わりに生きていた、植物恐竜だ。
北アメリカ大陸に生息しており、全長は約9m、体重は重いもので10tを超えていたと考えられている。
その最大の特徴は、顔にある3本の大きな角と、後頭部から盾のように広がる「フリル」と呼ばれる骨の板だ。
今回注目された巨大な鼻も、この不思議な形をした頭部の一部であり、長年その役割については謎とされてきた。
今回の研究によって、角竜類の鼻の中がどうなっていたかという初めての全体図が示された。
これまで角竜類は頭の形があまりに特殊すぎて、他の恐竜と比べることが難しかったが、今回の発見で頭がどう進化したのかという研究が大きく進むと期待されている。
研究チームはこれから、トリケラトプスの特徴であるフリル(えり飾り)など、頭の他の部分がどんな役割をしていたのかも調べていく予定だ。
References: Onlinelibrary.wiley.com[https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ar.70150] / U-tokyo.ac.jp[https://www.um.u-tokyo.ac.jp/research/umutnews/20260216.html] / Scitechdaily[https://scitechdaily.com/scientists-just-solved-the-mystery-of-triceratops-giant-nose/]











