極限微生物は惑星の衝突を生き延び、破片に乗って惑星間を移動している可能性
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 小惑星衝突の残骸に隠れた微小生命体が、地球を含む他の惑星に飛び移り、生き残る可能性があるという。

 米ジョンズ・ホプキンス大学による最新の実験では、特定の極限微生物が深海の10倍を超える凄まじい圧力にさらされても、驚異的な確率で生存することが確認された。

 この結果は、生命が天体間を旅して広がるという説を裏付けるものであり、地球の生命の起源や宇宙探査の安全ルールに大きな影響を与える発見だ。

 この査読済み研究成果は『PNAS Nexus[https://academic.oup.com/pnasnexus/article/5/3/pgag018/8503064]』誌(2026年3月3日付)に掲載された。

小惑星衝突の衝撃が岩石を宇宙へ弾き飛ばすメカニズム

 人間が地球を離れるには、強力なロケットや生命を維持する精密な宇宙船が欠かせない。

 しかし、極限微生物なら話は別だ。小惑星が惑星に衝突する際の凄まじいエネルギーが、ロケットの代わりを果たしてくれるからだ。

 極限微生物とは、人間の基準では死んでしまうような、極度の低温や乾燥、強烈な放射線、そして凄まじい圧力がかかる環境下でも平然と生きることができる生物の総称だ。

 太陽系の天体表面にある無数のクレーターは、その激しい衝突の歴史を物語っている。

 巨大な小惑星が惑星に激突すると、その衝撃で地表の岩石は猛烈な加速を受け、惑星の重力を振り切って宇宙空間へと弾き飛ばされる。

 このとき、岩石の隙間に潜り込んでいる極限微生物は、その驚異的な生命力で衝撃に耐え、「天然の宇宙船」に乗った宇宙飛行士として、別の惑星へと運ばれることになる。

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ガス銃による衝突実験で惑星放出時の過酷な圧力を再現

 アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学のリリー・ジャオ氏ら研究チームは、小惑星の衝突時に微生物が受ける瞬発的な高圧を再現するため、ガス銃を用いた実験を行った。

 実験対象には、極限微生物の一種である細菌、チリの乾燥した高地に生息する最強の耐性菌、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)が選ばれた。

 この極限微生物は、低温、乾燥、強烈な放射線という火星のような過酷な環境でも生き抜くことができ、傷ついた遺伝子を自ら修復する驚異的な能力を持っている。

 研究チームはこの細菌に時速約480kmで弾丸を撃ち込み、火星などの惑星から岩石が放り出される際にかかる1から3GPa(ギガパスカル)という極限の圧力を物理的に再現した。

 GPaとは、非常に大きな圧力を表す単位だ。

 1GPaは、身近な例で言えば「指先(約1平方cm)の上に、大型トラック1台分(約10トン)の重さがまるごとかかる」ほどの凄まじい圧力に相当する。

 今回の実験では、その数倍もの衝撃を細菌に直接与えたことになる。

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深海の10倍を超える凄まじい圧力下でも細菌は生存

 実験の結果、デイノコッカス・ラディオデュランスはこれまでの学術的な予想をはるかに上回る生存能力を見せた。

 地球で最も深いマリアナ海溝の底にかかる圧力は約0.1GPaだが、今回の細菌はその10倍以上に相当する1.4GPaの圧力下でも、ほぼすべての個体が細胞に損傷を受けることなく生き残ったのである。

 さらに過酷な2.4GPaの実験でも、約60%の個体が生存していた。

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 あまりに細菌が頑丈だったため、細菌が死ぬ前に実験器具のスチール製部品が先に壊れてしまうほどだったという。

 この結果は、小惑星が衝突した際に発生する凄まじい物理的ストレスを、特定の生物が十分に耐え抜けることを実証している。

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天体間を移動する生命の存在

 この発見により、生命が地球から太陽系の外へ、あるいは他の天体から地球へと旅をしてきた可能性が現実味を帯びてきた。

 研究全体を統括した責任著者のK.T.ラメシュ教授は、生命が私たちが考えていたよりもはるかに回復力があり、自然がいかに過酷な条件に適応してきたかは驚異的であると語っている。

 天体間で生命が広がる可能性は、現在の宇宙探査における安全基準、いわゆる「惑星保護」のルールに大きな再考を迫るものだ。

 例えば火星の衛星フォボスなどは、火星からの噴出物が届きやすいため、すでに地球や火星の微生物が到達している可能性があるかもしれない。

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