イタリアの歴史学者が、16世紀の天文学書の中にガリレオ・ガリレイ自筆の手書きのメモ(注釈)を発見した。
天動説のバイブルとも言える『アルマゲスト』に記されていた注釈は、ガリレオが古代の天動説を深く学び、その数学的な矛盾を突き止める過程で地動説への確信を深めたことを示している。
これは、ガリレオが従来の理論に疑問を抱き、新しい宇宙の仕組みへ辿り着くまでの経緯を裏付ける直接的な証拠となる。
天動説の専門書「アルマゲスト」にガリレオ自筆の書き込み
イタリアのミラノ大学に所属する歴史学者イヴァン・マラーラ博士は、フィレンツェ国立中央図書館で16世紀に出版された古い天文学書『アルマゲスト』を調査していた。
アルマゲストは、2世紀に古代ローマの学者、クラウディウス・プトレマイオス(83年頃 – 168年頃)が執筆した書で、地球を中心に太陽や惑星が回るという天動説と円運動に基づく天体の運行をまとめたもので、西洋では1400年もの間、天文学の絶対的な教科書とされていた。
マラーラ博士が数冊の『アルマゲスト』を調べていたところ、本来は空白であるはずのページに旧約聖書の「詩編145番」が書き写されているのを見つけた。
その筆跡を分析した結果、トスカーナ州出身の天文学者で、近代科学の父とも称されるガリレオ・ガリレイ(1564年 – 1642年)本人のものであることが判明した。
さらに本の余白には、ガリレオによる膨大な数の手書きの注釈が書き込まれていた。
天動説の矛盾に気が付き地動説の正しさを確信
今回見つかった注釈は、ガリレオが望遠鏡で月や木星を観測する約20年前の1590年頃に書かれたと推測されている。
ガリレオは、ご存じの通り、17世紀初頭に自作の望遠鏡を用いた天体観測によって、当時主流だった「天動説」に代わる「地動説)」を裏付ける画期的な証拠を次々と発見した科学者だ。
だがガリレオは、はじめから天動説を否定していたわけではなかった。
注釈の内容からは、彼が『アルマゲスト』に記された複雑な計算を一つひとつ確認し、伝統的な理論を深く学ぶ中で、その数値が現実の星の動きと一致しないことに疑問を抱いていく過程が読み取れる。
マラーラ博士は、ガリレオが天動説の矛盾を確信し、地動説へと転換したのは、天動説の理論を数学的に突き詰めた結果だと考えている。
ガリレオは、教科書に書かれた計算の仕組みを自分なりに整理しようと試みた。
その過程で、太陽を宇宙の中心に置くシステムのほうが数学的に正しく、矛盾がないと判断したのだ。
これは、ガリレオが直感や政治的な理由からではなく、あくまで緻密な計算の末に新しい理論へ進んだことを示している。
研究を始める前に神へ捧げていた祈りの跡
今回の発見でもう一つ注目されているのが、書き写された旧約聖書の「詩編145番」である。
この詩編は神の偉大さをたたえる詩であり、ガリレオが研究と信仰を矛盾するものと考えていなかったことを示している。
後年の異端審問のイメージから、ガリレオは「宗教的権威と戦った科学者」として語られることが多いが、今回の発見はそんな彼が抱いていた敬虔な内面を伝えている。
当時の記録によれば、ガリレオは天文学の研究に取り組む前に必ず神に祈りを捧げていたという。
彼にとって数学的な分析に没頭することは、神が設計した宇宙の真実を解き明かすための、誠実な信仰の形でもあった。
この注釈は、一人の研究者が伝統的な教えの矛盾を克服し、新しい科学の扉を開くまでの真摯な歩みを今に伝えている。
マラーラ博士はこの研究成果を、数ヶ月以内に『Journal for the History of Astronomy[https://journals.sagepub.com/home/jha]』誌で発表する予定だ。
References: Smithsonianmag[https://www.smithsonianmag.com/smart-news/scholar-recognized-the-inscriptions-in-the-margins-of-this-manuscript-the-scribbles-turned-out-to-be-galileos-handwritten-notes-180988269/] / Science[https://www.science.org/content/article/galileo-s-handwritten-notes-found-ancient-astronomy-text]











