クモや昆虫の9割が調査されていないことが判明。生態系を支える影の功労者が消える恐怖
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 アメリカのクモや昆虫の約90%に、絶滅の危険があるかを判定する調査記録がないことが判明した。

 マサチューセッツ大学の研究チームが約10万種を調査した結果、その大多数が保護の検討すらされない空白の状態にあることがわかった。

 クモや昆虫は花粉を運んで植物を育てたり、害虫を食べたりして生態系を支える大切な存在だが、その実態はほとんど把握されていない。

 こうした貴重な主役たちがいつの間にか消えてしまうことは、人間の暮らしを根底から壊す大きな脅威となる。

 この査読済み研究成果は「PNAS[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2522779123]」誌(2026年1月19日付)に掲載された。
 DOI: 10.1073/pnas.2522779123[https://doi.org/10.1073/pnas.2522779123]

参考文献:
Scared of Spiders? The Real Nightmare Is a World Without Them
https://scitechdaily.com/scared-of-spiders-the-real-nightmare-is-a-world-without-them/[https://scitechdaily.com/scared-of-spiders-the-real-nightmare-is-a-world-without-them/]

クモや昆虫で絶滅リスクの調査が放置されている

 アメリカのクモや昆虫などの調査が放置されている最大の理由は、生き物の見た目の美しさや、人間の経済的な利益に保護活動が偏っているからだ。

 特にクモ、サソリ、ダニ、ザトウムシなどを含む「クモ形類(足が8本のグループ)」は、昆虫と同様に嫌われやすく、生態系への貢献度に対して調査の優先順位が極端に低い。

 一方で、水質の判定に利用されるカゲロウや、見た目が美しいチョウやトンボは、研究予算がつきやすく調査が進んでいる。

 また、石油やガスの採掘が盛んな州ほど、資源開発による経済的な利益を優先するため、開発の妨げになりかねない小さな生き物の調査や保護ルール作りが後回しにされている実態もマサチューセッツ大学の研究で明らかになった。

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クモや昆虫がいなくなると人類にどんな影響があるのか?

 クモや昆虫などの節足動物が失われると、農作物の収穫や環境の維持が不可能になり、人間社会の存続が危うくなる。

 昆虫は授粉(花粉を運んでタネを作ること)を助けて野菜や果物を育て、クモなどのクモ形類は農作物を荒らす害虫を食べることで自然のバランスを保っている。

 世界中でこれら小さな生き物が激減する「昆虫の黙示録」を防ぐには、かつての鳥類保護の成功例に学ぶ必要がある。

 かつてアメリカで鳥類の保護が成功したのは、ハンターや野鳥観察者など立場の異なる人々が協力してデータを集めたことで、多くの種を守ることができたからだ。

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クモや昆虫を守り地球の健康を維持するために必要な対策は?

 クモや昆虫を単なる恐怖の対象として避けるのではなく、人間が生きていくための大切なパートナーとして認識を改めることが不可欠だ。

 研究を主導したウェス・ウォルシュ氏は、彼らの生態学的な重要性を正しく評価し、保全に値する存在だと考えることから始まると述べている。

 まずは実態が不明な種を詳しく調べ、彼らがどれほど世界を支えているかを数値化して示すことが、地球全体の健康を守るための第一歩となる。

 米国科学アカデミー紀要に掲載されたこの研究は、人間が無視してきた小さな命の価値を改めて問い直している。

References: PNAS[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2522779123] / Scitechdaily[https://scitechdaily.com/scared-of-spiders-the-real-nightmare-is-a-world-without-them/]

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