スマートフォン=スマホは既に単なる携帯電話ではない。情報端末として、我々の日常生活に欠かせないアイテムとなっている。
そして位置情報アプリの搭載は、探し物を助けてくれるだけでなく、時として人命救助にもつながるように。
2026年2月、アメリカ・ワシントン州の雪山で雪崩に巻き込まれた男性が、アップル社の「探す」アプリによって命を救われることになった。
だが同時に、妻が受け取った「虫の知らせ」も、彼が無事救出される大きなきっかけとなったようだ。
雪崩に巻き込まれて雪の下へ
2月26日、シアトルの東にある「スティーブンス・パス・スキーリゾート[https://www.stevenspass.com/]」で、新雪を楽しんでいたマイケル・ハリスさんは、突然起こった雪崩に巻き込まれてしまった。
彼は岩の周りを泳ぐようにして回避を試みたが、スキーを履いていたため思うように動けず、雪に埋もれて動けなくなってしまったという。
マイケルさんはこの日、「ビッグ・チーフ・ボウル」と呼ばれる上級者向けのコースを滑っていた。
彼は1人で滑りに行っており、同行者はいなかった。ポケットにはiPhoneが入っており、腕にはアップルウォッチをつけていたが、どちらにも手が届かなかった。
自分がここにいることを家族に知らせる手段も、助けを呼ぶために通報する手段もなく、彼は雪の中で途方に暮れるしかなかった。
セメントに覆われてしまったような感覚でした
マイケルさんは、当時の状況をこのように語っている。
私は信仰深い人間です。だから「神様、私は困っています。誰か私の居場所を知っているかどうかわかりません。
でも、自分の力ではここから抜け出すことはできません」と祈ったんです
その時、アップルウォッチとiPhoneが振動で震え、呼び出し音が鳴った。だがマイケルさんは手を伸ばすことすらできず、電話に出られなかったのだ。
(iPhoneを)胸の上のポケットに入れていたんです。だから妻から電話がかかってきたとき、雪に埋まったままでも、着信しているのがわかりました。
振動も感じたし、着信音も聞こえました。でも、手をそこまで伸ばすことができなかったんです
iPhoneの「探す」で妻が異常を察知
電話をかけたのは、自宅でマイケルさんの帰りを待っていた妻のペニーさんだった。だが、夫からの応答はなく、折り返し電話がかかってくることもなかった。
スキー中にマイケルさんが電話に出ないのはいつものことだったが、この時彼女は「何かがおかしい」という、妙な感覚にとらわれたという。
そこで彼女は、iPhoneの「探す」機能を使って夫の位置を確認した。するとマイケルさんは山の斜面にいたものの、そこから移動する様子がまったくなかった。
何かがおかしいと感じる瞬間ってあるんです。直感に従って彼の位置を確認し、何度もチェックしたたのですが、全く動いていないことがわかりました
後にペニーさんはその時の様子をこう語っている。彼女はすぐにスキー場と連絡を取ろうとしたが、なかなかつながらなかった。
そこで彼女はいてもたってもいられず、自ら現場に向かうことにした。娘のローレンさんがスキー場に電話をかけ続け、スタッフと連絡を取ることに成功。
マイケルさんが遭難したらしいことを伝えると、スキーパトロールがすぐに出動してペニーさんと合流。マイケルさんのiPhoneの位置情報が示す現場へと急行した。
そしてスキーパトロールは、数mの雪の下から無事にマイケルさんを救出することに成功した。彼はすぐに病院に搬送され、一命をとりとめることができたのだ。
無事救出されるも全治3か月の重傷を負う
父は低体温症で、体温は26~28℃でした。さまざまな検査と画像診断の結果、父は肺挫傷、肺炎、腎臓損傷、そして右脛骨を骨折していました
ローレンさんは、後に立ち上げたクラウドファンディング[https://www.gofundme.com/f/help-michael-recover-from-avalanche-injuries]で、救出当時の父親の容態についてこう説明している。
現在マイケルさんはまだ入院中で、骨折した脚の手術を受ける予定だという。医師によると、完全に回復するには、まだ3か月ほどかかる見込みだそうだ。
命を救ってくれるものが、あと数cmのところにあったのに、そこへ手を伸ばすことができませんでした。
でも妻が「探す」アプリを使ってくれたおかげで、私は今ここにいることができています
ローレンさんは、父親の遭難の知らせを受けてからの恐怖と動揺を、「心臓が沈み込むような感覚で、吐き気がした」と話している。
父が命に関わる、あるいは人生を大きく変えてしまうような重傷を負わずに済んだのは、本当に奇跡です。
この出来事以来、私は父がまだ私たちと一緒にいてくれることを神に感謝し続けています
だが、一家にとっての試練はまだ続く。稼ぎ手だったマイケルさんが入院したことで収入が途絶え、治療費の支払いが重くのしかかって来たのだ。
こうした状況の中で、普段は人に助けを求めることはしない私たちですが、今は支援をお願いしています。
父は家族の唯一の収入源であり、回復までどれほど時間がかかるのかまだわかりません。
そのため、医療費や生活費の負担を少しでも軽くするためクラウドファンディングを立ち上げました。ほんの少しでも助けになります
「虫の知らせ」とテクノロジーが命を救う
このニュースを知った人たちからは、応援のメッセージや自身の体験談などがたくさん寄せられていた。
- 夫婦が一つだっていうのはこういうことなんだろうね。奥さんはすぐに何かおかしいと感じたんだから。彼が無事で本当によかった
- 直感ってすばらしいものだ。耳を傾けて、それに従うことができればね
- ただ、iPhoneが認定された雪崩トレーニングや専門装備の代わりになるかのような言い方には注意したほうがいい。雪崩ビーコン(※)なら、持ってる人が誰でも探知できる共通信号を送るものなんだ
- 彼は雪崩ビーコンもポケットに入れていました。スキーパトロールは「探す」で示されたおおよその場所を捜索したときにビーコンを受信して、救助犬が掘り始める場所を見つけたんです(マイケルさんの姉コメ)
- ビーコンより大事なのは、一緒に滑る仲間を持つことだと思う。
あと、 予定を誰かに伝えておくこと。今回は奥さんが異変に気づいたのが本当に幸運だった- あなたを救ったのはテクノロジーじゃなくて神様だよ。奥さんが嫌な予感を感じ取ってたし、普通なら4時間も埋まっていたら亡くなってる。これは奇跡だ。リンゴのマークじゃなくて、主に感謝すべきだ
- テクノロジーなんてなくても、神様は彼を見つけさせることができた。iPhoneがなくても、きっと別の方法で見つかったよ。重要なのは祈りなんだ
- いつも神にだけ感謝するね。被害者は治療費を払うために募金まで始めたのに、その神様は国民皆保険を導入するよう啓示を与えてもくれなかったらしい。世俗的な国では何十年も前からある制度なのに
- 彼やエクストリームスポーツをする人たちは、救助隊を危険にさらしている。救助隊にも家族がいるんだよ
- どうしてコース内の雪崩が4時間も気づかれずにいたんだ?
- 雪崩といっても巨大なものばかりじゃない。今回は滑っていた人が雪の穴のような場所に流れ込んで、その上に雪の塊が積み重なって完全に埋まったのが原因らしい
- 彼は友人の友人なんだけど、本人もどうやって生き延びたのかわからない、本当に奇跡だと言っていた。2時間くらいは意識があったけど、その後は気を失って、救急車の中で目を覚ましたらしいよ
- テレパシーって本当にあるのかも。
以前、夜中に突然目が覚めて、恋人のことが気になって仕方なくなったことがある。携帯を見たら5分前に彼から何件も着信があって、突然体調が悪くなったって。私の携帯はいつもサイレントモードなのに、なぜか目が覚めたのよね
- うちの叔母も似たようなことがあったよ。叔母はスパにいたんだけど、突然「息子がケガをして病院に向かっている」と感じたんだって。1分後に電話が来て、それが本当だって知らされた
- でもクラファンって何のために始めたの?
- 彼は今ちょうど仕事の合間で、保険には入っているけど保険でカバーされない費用がかなり出る見込みなんだ。それで娘さんがクラファンを立ち上げた。本人はあまりやりたがっていなかったけどね。いい人なんだ
(※)雪崩ビーコン(アバランチ・トランシーバー)とは、信号を発信/受診することで、雪に埋まった遭難者を捜索できるトランシーバーのこと
今は自由に吸える酸素の豊かさに驚いています。10日前、あの山の上ではそれが貴重で限られた資源で、もうすぐ尽きるところでした。
私たちは皆、それがないと生きていけません。でも普段はそこにあるのが当たり前で、つい忘れてしまう。今朝は一つ一つの呼吸がとても大切で、味わうべきものだと感じています
4時間近く雪の下で窒息しかけた経験を経て、マイケルさんは今、呼吸できることのありがたさを強く感じているという。
雪の中にいたあの瞬間、僕が望んだのはただ妻と子供たちにもう一度会うことだけでした。
それが今回の出来事での大きな気づきでした。彼らは僕にとってもともと大切な存在でしたが、今はさらに大切な存在になりました
Apple社の「探す」アプリや、Google社の「Find Hub」アプリなど、デバイスの位置情報を確認できるアプリは、誤作動や誤情報で思わぬ騒動を引き起こすケースもあったりする。
だが今回のように大切な命を救ったり、犯罪捜査に役立ったりと、ポジティブな使われ方の報告も多い。
私みたいによく物を置き忘れる人間にとって、「探す」は神機能なわけなんだが、結局テクノロジーは使う側の人間次第。正しく使うことが大切なんだな。
References: Wife Used ‘Find My iPhone’ to Locate Husband Buried in an Avalanche for Over 4 Hours[https://www.goodnewsnetwork.org/wife-used-find-my-iphone-to-locate-husband-buried-in-an-avalanche-for-over-4-hours/]











