世界の終わりはどんな風にやって来るのか、想像したことはあるだろうか。巨大隕石の衝突、それとも疫病、あるいはハルマゲドンが起こるのだろうか。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究調査によると、アメリカ人の3人に1人が、「自分の生きている間に世界が終わる」と考えていることが明らかになった。
さらに宗教的な人、環境問題に敏感な人など、宗教的・文化的・社会的背景によって、それぞれが思い描く「終末」像が微妙に違っていることも判明したのだ。
この研究成果は『Journal of Personality and Social Psychology[https://psycnet.apa.org/record/2027-36275-001?doi=1]』誌(2026年)に掲載された。
参考文献:
Apocalyptic beliefs are no longer fringe—and they’re shaping how people respond to global threats
https://news.ubc.ca/2026/03/apocalyptic-beliefs-shaping-response-global-threats/[https://news.ubc.ca/2026/03/apocalyptic-beliefs-shaping-response-global-threats/]
アメリカ人は「この世の終わり」をどうとらえているのか
この世の終わりが来るという終末論的な考え方は、かつては宗教やカルト、悲観主義的な思想と結びついて語られることが多かった。
だが新たな研究によって、実際には現代を生きるアメリカ人の多くが、世界の終わりが近いと考えていることが判明した。
この研究は、当時カナダのブリティッシュコロンビア大学で博士課程に在籍しており、現在カリフォルニア大学アーバイン校に所属する社会心理学者、マシュー・I・ビレット博士の主導で実施された。
研究チームは、人々がどのような終末観を持っているのか、そしてそれが現代のさまざまな危機の見方とどう関係しているのかを分析した。
まず最初に行ったのは、人々がどのような終末観を持っているのかを測るための質問項目を作ることだった。
いきなり大規模な本調査を行うのではなく、まずは複数の予備調査を実施。これには、アメリカとカナダ合わせて2079人が参加した。
予備調査の目的は「世界の終わり」についての考え方を調べる際、どのように質問すれば一貫して同じ傾向を測定できるのかを検証することだった。
この段階で、対象者の宗教的背景の違いによって、回答にどのような差が出るのかも同時に調べられた。分析の対象となった宗教グループは、以下の6つである。
- カトリック
- 主流派プロテスタント
- 福音派プロテスタント
- ユダヤ教徒
- ムスリム
- 無宗教
こうした異なる宗教背景の参加者を含めることで、作成した質問が特定の宗教だけに偏らず、幅広い人々の終末観を測る「心理学的尺度」として機能するかどうかを検証。
そしてこの「心理学的尺度」に基づく質問項目を用いて、アメリカの成人1409人を対象に、本調査を実施した。
本調査では、人類の存亡に関わるリスクとして世界経済フォーラム(WEF)が挙げている以下の分野に沿い、人々がそれらをどう受け止めているかも質問された。
- 経済問題
- 環境問題
- 地政学的な問題
- 社会的な問題
- 新しい技術
さらに本調査で寄せられた回答者の見解を、チームは人々の行動や現実認識に影響を与える以下の5つのカテゴリーに分類した。
- 世界の終わりがどれくらい近いと思うか
- それは我々人間が自ら引き起こすのか
- 神や超自然的な力によって引き起こされるのか
- 個人が終末の訪れに影響を与える余地があると思うか
- 終末を悪いものと見るか、あるいは何らかの意味で良いものと見るか
ここで寄せられた回答をもとに、研究チームは人々が終末をどのように考えているのかを測定。
同時にそれぞれの考え方が、現代におけるさまざまな危機の見方とどのように関係しているのかを分析した。
アメリカ人の3人に1人「生きているうちに世界が終わる」
その結果、本調査の対象者であるアメリカ人1,409人のうち、約3分の1が「自分たちの生きているうちに世界が終わる可能性がある」と考えていることがわかった。
つまり「終末」という発想は、映画や宗教の中だけの特別な考えではなく、実際に現代社会でも広く見られるものだということになる。
終末論は北米全域で驚くほど広く信じられており、人類が直面する最も差し迫った脅威に対する人々の解釈や対応に大きな影響を与えています
人によって違う「世界の終わり」の概念
この研究が明らかにしたのは、「終末」を信じている人の割合だけではない。人々が思い描く世界の終わりは、決して一つの形だけではないという点も判明した。
例えば世界の終わりがごく近い未来に起こると考える人もいれば、いつ起きるかわからないと考える人もいる。
人間の行動が終末をもたらす原因にも、その抑止にもなると考える人もいれば、この世の終わりは「神」だけが関与するものであると考える人もいる。
つまり「この世の終わり」や「終末」といった同じ概念を表す言葉で質問を投げかけても、その意味するところ、受け取り方は人によってかなり違っていたのだ。
ビレット博士は、世界の終わりをめぐる考え方の違いが、人々の社会問題への態度にも影響すると説明する。
信じている終末の物語が違っていれば、社会問題への反応も人によって大きく変わる可能性があります。
たとえば、気候変動によって人類が破滅に向かっていると考える人は、環境政策に対して強く行動を求めるでしょう。
一方で、終末は神の予言によって決まっていると考える人は、同じ問題に対してまったく違う反応を示します。
こうした違いは、文化的背景の異なる集団の間で意見の対立を生み、地球規模のリスクへの対応を協調して進めることを難しくします。国内でも国際社会でも同じです
研究では、こうした違いが現代における世界的な危機の見方と結びついていることも示された。
誰もが同意する点が一つあります。それは、人類が自らの種の運命において重要な役割を担っているということです。
特定の終末論的な物語が正確かどうかは別として、それは人類が具体的なリスクにどのように対処するかという点において、依然として重要な意味を持っています。
もし私たちが気候変動やAIの安全性、パンデミックへの備えといった問題について社会的な合意を築きたいのなら、それぞれのコミュニティが、これらの脅威をどのような文化的な視点で解釈しているのかを理解する必要があるでしょう
この研究結果はSNSやメディアなどで広く取り上げられており、多くの人からコメントが寄せられている。
- こういう考えを持っているのはほとんど終末論的なキリスト教徒で、自分たちの生きている間に世界が終わることを望み、その方向に向かう政策を支持している人たちだという点も影響していると思う
- いや、むしろ神の計画を信じる信仰を示すために、人々が予言に沿った行動を取るのを神が待っている、という考え方なんじゃないかな
- そもそもプロテスタントって、神の計画は既に決まっていて、人間はそれに従っているだけだという決定論的な考え方なんじゃなかったっけ
- 世界が滅びるとは思わないけど、少なくとも「今まで我々が知っていた世界」は終わりつつあるとは思う。気候変動は既に始まってるし
- (アメリカの)人口のかなりの部分がキリスト教徒なんだから、驚くほどのことでもない気がする。
みんな、自分たちの世代こそがイエスの再臨を目撃するんだって信じてるんだ- 問題は、人類が世界を破壊できる技術を持つ段階に近づいているってこと。高度な技術による人類存亡レベルのリスクは現実的になってきた
- いや、それは原爆が発明された時点ですでにそうだったよ
- 政治的暴力は制御不能なほど広がり、世界中で戦争が起き、市民同士が対立し、地球環境を壊す問題が山ほどあって、大量破壊兵器もある。そういう状況を考えれば、多くの人が世界の終わりを意識しても不思議じゃない
- 大きな変化は避けられないと思うし、かなりの数の死者が出る可能性も高い。それが「世界の終わり」に見える人もいるだろうね。人類には実際にそれを引き起こす力もあるわけだし
- 少し大げさな気もするけど、少なくとも気候変動だけでも、私たちの生きている間に大量の犠牲者が出るのはほぼ確実だと思う
- こういった考え方が人を惹きつける理由の1つは、すべてがこれ以上ひどくなる前に終わってしまうというイメージがあるからじゃないかな
- 終末は怖いけど、世界がそのまま続いて、しかも今よりずっと悪い状態になると想像するほうが怖い人もいる。だから終末に「逃げ道」を見てしまう人もいるんだと思う。
References: Apocalyptic beliefs are no longer fringe—and they’re shaping how people respond to global threats[https://news.ubc.ca/2026/03/apocalyptic-beliefs-shaping-response-global-threats/] / Psycnet.apa.org[https://psycnet.apa.org/record/2027-36275-001?doi=1]











