気候変動で極地の氷が融解し海水の分布が変化したことで、地球の自転が遅くなり、1日の長さが過去360万年で最も速いペースで長くなっていることがわかった。
オーストリアのウィーン大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チームは、海底に生息する微小生物の化石を分析し、過去数百万年の海面変動と日長の変化を復元した。
その結果、現地球の自転の減速は2000年以降に特に顕著で、21世紀末には月の重力による影響をも上回る可能性が示されている。
この研究成果は『Journal of Geophysical Research: Solid Earth[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025JB032161]』(2026年3月10日付)に掲載された。
参考文献:Climate change slows Earth’s spin: Day lengthening unprecedented in 3.6 million years
https://www.univie.ac.at/en/news/press-room/press-releases/detail/climate-change-slows-earths-spin-day-lengthening-unprecedented-in-36-million-years[https://www.univie.ac.at/en/news/press-room/press-releases/detail/climate-change-slows-earths-spin-day-lengthening-unprecedented-in-36-million-years]
気候変動が地球の自転を遅くしている
地球の自転は常に一定ではない。月の引力や地球内部の動きなどの影響で、1日の長さはわずかに変化している。
そこに新しく加わった要因が、気候変動による氷の融解だ。
グリーンランドや南極の巨大な氷床が溶けると、水は海へ流れ出る。すると地球全体の重さの分布が変わり、自転が少し遅くなる。
スイスのチューリッヒ工科大学のベネディクト・ソジ教授は、この現象をフィギュアスケートの回転で説明する。
スケーターが腕を広げると回転が遅くなるように、水が地球全体に広がると回転の勢いが弱まり、1日の長さがミリ秒単位で延びるのだ。
2000年以降の変化は過去360万年で最速
研究チームは、海底に住む単細胞生物「底生有孔虫」の化石を分析した。殻の成分には当時の海水の状態が記録されているため、過去の海面の高さを推定できる。
海面の変化が分かれば、地球の質量分布の変化を計算できる。そこから地球の自転速度と1日の長さの変化も推定できる。
解析の結果、2000年から2020年に観測された自転の減速は、少なくとも過去360万年の記録の中で最も速い変化に近いことが分かった。
現在の日長の増加は100年あたり約1.33ミリ秒と推定されている。
2024年の研究が示した予測を裏付ける結果
スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チームは、2024年にも「気候変動が地球の自転を遅くしている」という研究結果を発表している。
その研究では観測データと物理モデルを使い、氷の融解によって地球の回転が遅くなる可能性が示されていた。
今回の研究は、海底の化石記録から過去数百万年の変化を調べることで、現在の自転減速が地質学的にも異例の速さであることを示したものだ。
2024年の予測を、地球の長い歴史の中で裏付けた形になる。
自転の変化はGPSや宇宙探査にも関係する
1日の長さの変化はミリ秒単位で、人間が体感することはない。だが、人工衛星の軌道計算や宇宙探査では、地球の自転速度を非常に正確に把握する必要がある。
自転のわずかな変化でも、長期的にはGPSの位置計算や時間の同期に影響を与える可能性がある。
研究チームは、気候変動による地球温暖化が続けば21世紀末には氷の融解が地球の自転を遅らせる最大の要因になる可能性もあると指摘している。
これまで数十億年にわたって地球の自転を遅らせてきたのは、月の重力が海水を引っ張る力(潮汐摩擦)だった。
しかし、気候の影響が、宇宙規模の物理現象である月の力さえも上回ろうとしている。
References: Univie.ac.at[https://www.univie.ac.at/en/news/press-room/press-releases/detail/climate-change-slows-earths-spin-day-lengthening-unprecedented-in-36-million-years] / Onlinelibrary.wiley.com[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2025JB032161]











