ワタリガラスはオオカミを追わない。狩場を記憶し先回りして獲物の残りにありつく
Image credit ©Bob Landis Max Planck Institute of Animal Behavior

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 ワタリガラスはオオカミを追跡して餌を探すのではなく、オオカミの狩りが多い場所を記憶して先回りし、獲物の食べ残しを得ていることがGPS追跡調査で明らかになった。

 オーストリアやドイツの国際研究チームがアメリカのイエローストーン国立公園で2年半にわたりデータを分析した結果、ワタリガラスはオオカミが獲物を倒しやすい場所を学習し、遠くから直接そこへ向かって効率よく餌を得ていることが確認された。

 この研究成果は『Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz9467]』誌(2026年3月12日付)に掲載された。

参考文献:
Wolves kill—and ravens remember where
https://www.ab.mpg.de/848161/news_publication_26220626_transferred[https://www.ab.mpg.de/848161/news_publication_26220626_transferred]
https://www.eurekalert.org/news-releases/1118990[https://www.eurekalert.org/news-releases/1118990]

ワタリガラスはどうやってオオカミの食べ残しを探すのか?

 オオカミが大型動物を倒すと、その死骸には多くの腐肉食動物が集まる。

 腐肉食動物とはスカベンジャーとも呼ばれ、ほかの動物が捕まえた獲物の残りや死骸を食べて生きる動物である。

 ワタリガラスはカラス科の中でも最大級の鳥で、体長は約60cmほどになる。北半球に広く分布し、非常に知能が高いことで知られている。

 雑食性で昆虫や果実、小動物などを食べるほか、オオカミが食べ残した動物の死骸を食べるスカベンジャーでもある。

 これまで、ワタリガラスはオオカミの群れを追い続けて餌を得ていると考えられてきたが、詳しいことはわかっていなかった。

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GPS追跡でワタリガラスとオオカミの行動を調査

 そこで、オーストリアのウィーン獣医大学野生動物生態学研究所とドイツのマックス・プランク動物行動研究所を中心とする国際研究チームは、アメリカのイエローストーン国立公園で調査を行った。

イエローストーンでは、オオカミの個体数のおよそ4分の1に追跡用の首輪が装着されており、研究者は移動データを継続的に記録している。

 研究チームはさらにワタリガラス69羽に小型GPS装置を取り付け、追跡首輪を装着したオオカミ20頭の行動データと比較した。

 調査は冬を中心に2年半にわたって行われた。冬は餌が少なくなり、ワタリガラスがオオカミの狩りに最も強く関わる季節である。

 分析の結果、ワタリガラスが1km以上の距離でオオカミに付き従った例は、2年半の追跡期間で1回しか確認されなかった。

 それにもかかわらず、ワタリガラスはオオカミが獲物を倒した場所にすばやく到着していた。

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ワタリガラスは狩りが多い場所を記憶していた

 研究チームが移動経路を詳しく調べたところ、ワタリガラスはオオカミの狩りが頻繁に起こる地域を繰り返し訪れていることがわかった。

 オオカミの狩りはどこでも同じように成功するわけではない。

 イエローストーン国立公園では、見通しの良い平坦な谷底などで大型動物を追い詰めやすく、狩りが成功しやすい。

 ワタリガラスは過去に狩りが行われた場所を覚え、その地域へ向かって飛んでいたのだ。

 追跡された個体の中には、1日に最大155km移動し、遠く離れた場所から狩りが多い地域へ直接飛んだ例も確認された。

空間記憶と飛行能力を使った効率的な餌探し

 研究を率いたウィーン獣医大学の行動生態学者マティアス・ロレット博士によると、ワタリガラスは最大6時間連続で飛行することができるという。

 狩りがいつ起きるかを予測することは難しいが、長い時間で見ると餌が得られやすい場所はある程度決まっている。

 近い距離では、ワタリガラスがオオカミの遠吠えや行動を手がかりに死骸の場所を見つけている可能性もある。

 しかしワタリガラスは広い範囲を移動しながら複数の狩場を利用し、状況に応じて餌を探す場所を選んでいた。

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ワタリガラスの知能を示す研究

 この研究に参加したワシントン大学の生態学者ジョン・M・マーズラフ教授は、今回の研究によってワタリガラスが特定のオオカミの群れに依存していないことが明らかになったと説明している。

 今回の研究は、腐肉食動物が偶然に死骸を見つけているわけではないことを示している。

 ワタリガラスは捕食者が作り出す食料の分布を理解し、記憶と行動判断を組み合わせて効率よく食料を確保していたのである。

References: Ab.mpg.de[https://www.ab.mpg.de/848161/news_publication_26220626_transferred] / Eurekalert[https://www.eurekalert.org/news-releases/1118990] / Science[https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz9467]

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