2026年2月、イギリスの保全団体Fauna & Flora[https://www.fauna-flora.org/]は、東南アジアのアンナン山脈で絶滅が危惧されている希少なアンナンシマウサギの姿を確認したことを発表した。
これは、2025年に実施した大規模なカメラトラップ調査の結果である。
ラオスとベトナムの国境沿いに広がるアンナン山脈は、カンボジア北東部にも連なる全長約1100kmの山地帯である。
熱帯から亜熱帯にかけての森林が広がり、多様な野生生物が生息する地域として知られ、「アジアのアマゾン」とも呼ばれている。
カメラにとらえられたアンナン山脈の生物多様性
この調査は同団体が、英国国際開発省(DFID)とバイオダイバース・ランドスケープス基金の資金援助を受けて実施したものだ。
ラオス、ベトナム、カンボジア北東部の複数地点にカメラを設置し、カメラトラップという調査手法で行われた。
カメラトラップとは、野生動物調査のためにカメラを設置し、動物が通ると自動で撮影する仕組み(赤外線センサーなど)を使った調査手法だ。
Fauna & Floraのアジア太平洋地域担当シニアテクニカルアドバイザー、ガレス・ゴールドソープ氏は、この映像について次のように語っている。
これらの映像は、これらの場所の生物多様性の豊かさを私たちに確認させてくれました。非常に興味深い種がいくつか存在することも確認できました
希少なアンナンシマウサギの姿を確認
その「非常に興味深い種」の一つとして、今回カメラがとらえた中には、希少な「アンナンシマウサギ」のものも含まれていた。
アンナンシマウサギ(Nesolagus timminsi)は、アンナン山脈周辺に分布する固有種で、茶色に黒い縞模様の毛並みと白い腹部が特徴のウサギである。
1996年にラオスで採取された標本によって科学的に知られるようになり、2000年に新種として記載された。
このウサギは夜行性で、主に単独で行動することが知られている。野外で直接観察される機会は少なく、記録の多くはカメラトラップによるものだという。
今回Fauna & Floraが公開した資料でも、同種の姿が記録された回数は限られているとされている。
アンナンシマウサギは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に分類されており、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い。
彼らにとっての主な脅威としては、生息地の減少や分断、そしてワイヤートラップなどによる捕獲が挙げられているという。
下は2018年にベトナムで撮影された、アンナンシマウサギの貴重な映像である。
珍しい生き物たちの野生での姿が記録されていた
今回公表された映像の中には、他にも現地で生きる野生動物たちの姿が生き生きととらえられている。
例えばレスリングに興じるマレーグマ。クマの中では比較的穏やかな性格をしているが、こんなふうにケンカのように遊んでいる場面も見られるという。
また、母親と子供たちで構成されるイノシシの家族の姿もとらえられていた。
下は珍しい、地上を歩くオオサイチョウの姿。通常はジャングルの樹冠に近い高いところにいる、樹上性の鳥である。
この鳥も、現地ではクチバシや羽などを目当てに人間に狩られ続け、今や絶滅の危機に瀕している。
その存在が健全な森の指標となることから、「生物多様性のバロメーター」と呼ばれることもあるそうだ。
こちらはカモシカの仲間である。岩の多い森林の丘陵地帯を好む中型の哺乳類で、黒っぽい体色にたてがみとあごひげ、そして一対の短い角を持つ。
めったに姿を見せないため、「森の幻影」とも呼ばれているそうだ。
今回公表された映像には、コクジャクやマーブルキャット、センザンコウ、世界最大の野生の牛とされるガウルやウンピョウなど、さまざまな生き物の姿があった。
希少な生き物たちの宝庫・アンナン山脈
今回の調査は、特定の1種の確認にとどまらず、アンナン山脈における広域的な生物多様性の現状を示すものとなっている。
複数の希少種が同一地域で記録されたことは、この山地が依然として、彼らの重要な生息地であることを示している。
Fauna & Flora は、この地域が豊かな生物相を持つ一方で、森林伐採や生息地の分断といった圧力にさらされていると指摘している。
こうした保護区のほとんどには、その周辺、あるいは内部にも人々が暮らしています。
人が多く存在する場所では、他の生物の数は少なくなってしまう傾向があります。
地域の人々と協力していく必要があります。彼らの生計を支えることで、今後これらの種に与える影響を減らしていくことが重要です
今回のカメラトラップ調査は、その環境の中で生きる動物たちの記録を蓄積する取り組みの一環である。
しかし残念ながら2025年の調査終了後、このプロジェクトはイギリス政府の予算削減の影響を受け、資金を失うことになった。
それでも、保全活動に携わる人々があきらめたわけではない。ゴールドソープ氏はこのように語っている。
まだ希望はあります。守るべき種はまだ数多く存在しており、その保護のためにリソースを投入するだけの価値があるのです
References: Inside Asia’s Amazon – Camera traps reveal the secrets of the Annamite Mountains











